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日本の土地制度は再構築が必要

2021年6月16日未明に土地規制法が成立した。国会で参考人として質疑を行なった吉原祥子さんの音声がTBSラジオ「荻上チキSession」で紹介されていた

日本の土地制度の課題という重要論点

吉原祥子さんは民間のシンクタンクである東京財団政策研究所で日本の土地制度について研究をされている。今回成立した土地規制法の中身については課題がある。しかし、日本の土地制度が抱える課題については広く共有されるべき重要な論点だ。

国会の質疑の中では以前読んだ吉原祥子さんの著書「人口減少時代の土地問題」の要約とも言える内容が話されていた。以下、荻上チキSessionの音声をもとに吉原祥子さんの質疑の内容をまとめる。

土地の所有・利用を行政が正確に把握しきれていない

東京財団が土地問題に着目するきっかけになったのは「外資の森林買収」だ。実態調査のための研究プロジェクトが始まり、そこから見えてきたのはそもそも日本では土地の所有・利用を行政が正確に把握しきれていないという土地制度そのものの課題だ。それはつまり、人口減少や高齢化といった急速な社会の変化とそれに伴う空き家や空き地の増加に既存の制度が対応しきれていない部分があるということだ。一方で経済活動はグローバル化し、不動産は国際的な投資対象となっているのである。

土地所有者の探索が困難

土地所有者の探索においては住民票や戸籍が大きな情報源になるが、土地が所在する自治体に住民票を置いていない不在地主や国外に在住する不居住者は住民票や戸籍といった基礎情報がないため不動産登記が行われていなければ所有者探索は極めて困難になる。

所有権が極めて強い

日本は個人の所有権が諸外国に比べて極めて強いという特徴がある。例えば土地の売買について農地以外は売買規制はない。たとえその土地が安全保障上重要な国境離島や防衛施設の隣接地であっても売主と買主の合意だけで取引は成立するのである。

売買の不動産登記は任意であり登記をしないことも自由だ。土地の利用規制については農地法や森林法など個別の法律で一定のルールは定められている。しかし、農地の違反転用や森林の再造林放棄が事実上現状追認されているケースが少なくないなど、実質的な効力については課題も多いといわれている。

表面化している所有者不明土地問題

こうした現在の土地制度が抱える課題が具体的な事象となって表面化したのが近年、社会的な関心の高まった所有者不明土地問題*1であり、また安全保障上の懸念*2である。

土地は公共的な性質を持つ

土地は個人の財産であるとともに我々の暮らしの土台であり、経済活動の基盤であり、そして国土だ。土地は我々自身がつくり出せるものではなく次の利用者や次の世代に適切に引き継いでいく必要がある財だ。土地が持つそうした公共的な性質に鑑みると社会の変化に応じて制度の見直しを行うことは必要である。

持続可能な土地制度はつくれるか?

相続登記の義務化などの新制度を盛り込んだ所有者不明土地関連法が2021年4月に成立するなど土地制度の更新は少しずつ進んでいる。しかし、公共的な性格を持つ土地すなわち国土を行政が正確に把握できていないという根本的な課題の解決策となっているかは疑問が残る。

まずは日本の土地制度が抱える課題を多くの人が共有することが重要だ。持続可能な土地制度づくりはそこからはじまる。

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*1:不動産登記簿などの台帳を見ても現在の所有者が直ちにはわからないという問題。

*2:土地利用の実態を把握するための法的根拠が十分でなく万一の際に対応できる備えがないという問題。