神戸市の先駆的取組
2021年4月29日付けの日経電子版の記事によると「神戸市は2021年度、税優遇を取り消す空き家を60件指定する方針を決めた。」とあります。空き家への2020年度の税優遇取消は19件でしたので1年で3倍超に増えました。空き家への不合理な税優遇は以前から問題とされてきましたので神戸市のこの動きはこの問題に切り込む動きと言えます。
地方税法は空き家を壊してさら地にすると、建物が建っていた時よりも固定資産税が重くなるため、放置空き家を生むとの指摘がある。住宅とはみなせない物件の税優遇をなくし、空き家の適切な管理を促す。
空き家放置、税優遇取り消し3倍超に 神戸市21年度: 日本経済新聞
限りなく使われていない空き家にもかかわらず税優遇(住宅用地に対する特例措置)が適用され続けているのはおかしいよね、ということです。
空き家への不合理な税優遇取消を強化
2015年2月に施行された空き家対策特別措置法(以下、空き家法)では適正管理がなされていない空き家の所有者に対し区市町村が空き家の「立入調査」や「助言・指導」「勧告」といった行政指導、「命令」「代執行」といった行政処分*1をすることができるようになりました。そして最終手段である「代執行」の一つ手前の「勧告」まで行くと空き家*2への税優遇が取り消されるのでした。
神戸市の今回の動きは空き家法の通常の運用から一歩進み、「勧告」よりも前段階の「助言・指導」した空き家に対しても対象を広げ空き家への不合理な税優遇取消を強化したことが先駆的です。
実質的な増税を通じて空き家の放置を防ごうとする取り組みを、神戸市は20年度の徴収分から始めた。20年度の取り消しは19件。空き家対策特別措置法に基づき、物件管理の改善を求める勧告に踏み切った事案を中心に、市が取り消しを判断した。21年度は勧告よりも弱い助言・指導した物件にまで対象を広げ、選定した。
空き家放置、税優遇取り消し3倍超に 神戸市21年度: 日本経済新聞
税優遇取消の対象となる空き家は、
- 構造上住宅と認められない状況にある場合
- 使用の見込みはなく取壊しを予定している場合
- 居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合
の3点です。
「取り壊しを予定している」は所有者へ連絡が取れないまたは意思がはっきりしない場合はどうするのか。「必要な管理を怠っている」はどのくらいの程度を言うのか。「今後人の居住の用に供される見込みがない」はどのくらいの期間のことなのか。などなど細かい基準が気になります。
背景に総務省からの通知
神戸市の今回の動きの背景には「管理が不十分で今後の使用の見込みがない物件を住宅とみなさない」といった総務省からの通知があります。この総務省からの通知を神戸市独自でカスタマイズして実践しているということで、他自治体の参考にもなります。
総務省はさらに、管理が不十分で、今後の使用の見込みがない物件を住宅とみなさないといった通知を自治体向けに出しており、神戸市はこの通知をもとに税優遇の取り消し対象を独自に広げた。市によると、標準的な戸建て住宅で、建物の有無による実際の税額の差は約4倍になるという。
空き家放置、税優遇取り消し3倍超に 神戸市21年度: 日本経済新聞