2021年6月15日に令和3年版土地白書が公開された。不動産業界にもDXの潮流が到達し始めたり、コロナ渦でテレワークが広がったり、昨今の自然災害の甚大化や頻発により都市計画と防災の連携強化の見直しがなされたりしている。
- 増えている空き家は不動産市場に出ていない個人住宅
- 空き家が増え続けてもなお新築住宅は作り続けるという矛盾
- 厳選される土地の資産価値
- ハザードマップを見る習慣はだんだんと出来つつある
- テレワークの社会的な浸透
- アナログな空き家調査
- 不動産取引の取引費用を不動産テックで下げる
- オンライン化と電子化は着実に進む
- 都市計画と防災の連携強化
- 不動産取引と防災の観点
増えている空き家は不動産市場に出ていない個人住宅
不動産市場に出ている賃貸住宅ならば管理は行き届いているため近隣に悪影響を及ぼすことは基本的には無い。しかし、不動産市場に出ていない個人住宅の場合は管理が滞りがちだ。室内に物が大量に残っていたり、庭木が繁茂していたりする場合はまず片付けや掃除が必要となる。多くのメディアで言われている空き家問題とは細かく見れば不動産市場に出ていない個人住宅の空き家をどうするか問題だ。
令和3年版土地白書P.25より。その他の住宅、つまり個人住宅の空き家の割合がだんだんと高まっているのがわかる。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/dqw8JwSJOk
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月19日
空き家が増え続けてもなお新築住宅は作り続けるという矛盾
平成の30年間で中古住宅市場は全くと言っていいほど育ってこなかった。多額の住宅ローンを組んで購入したマイホームはやがて空き家になり活用もされずまちの魅力や地域経済を阻害する要因になりうる。それでも新築住宅は相変わらずのペースで作り続けられるのである。
令和3年版土地白書P.31より。既存住宅、つまり中古住宅の取引戸数はこの30年全くと言っていいほど変化なし。空き家が増えてもなお新築住宅を作り続けるという矛盾を抱えた日本の土地・住宅制度。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/WZH1sopUi1
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月19日
厳選される土地の資産価値
土地=資産と思う人はもはや約2割に過ぎない。裏を返せば都市部など厳選された土地の資産価値はいまだにある。
令和3年版土地白書P.38より。土地に対する意識もだんだんと変化している。人口減少や高齢化など社会状況の変化と個人の意識の変化。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/YUL0O5vgJY
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月19日
ハザードマップを見る習慣はだんだんと出来つつある
台風や大雨など特に風水害の際にハザードマップを見ることを促す発信が行政やメディアからよく聞かれるようになってきた。情報が公開されそれを自ら取りにいくという情報取得の形は今後定着させることが重要だ。
令和3年版土地白書P.43より。昨今の台風、豪雨、地震などの自然災害への危機管理意識は高まっている模様。浸水エリアかどうか、地盤が安定しているかどうかなど自ら確認することが割と当たり前になってきたことは大きな前進。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/zyJh7UY90n
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月19日
テレワークの社会的な浸透
コロナ渦においてテレワークという言葉がこれだけ社会的に浸透したことは大きい。テレワークを普及させる上で課題が浮き彫りになってきたことも前進だ。働き方と働き場所の多様化と模索が続く。
令和3年版土地白書P.52より。東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)で相対的にテレワーク利用率は高い。コロナ渦収束後のテレワーク希望も8割近く。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/B9gO433SCb
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月19日
アナログな空き家調査
いくら現場に行っても外観から空き家かどうかを判断するのは難しいしコストがかかり過ぎる(定期的に通ったり)。水道やガス、電気などライフラインの使用履歴から空き家かどうかを判断するのがベターではないか。その場合は個人情報の保護と利用の制度設計を詰める必要がある。
令和3年版土地白書P.56より。学生による空き家実地調査。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/E8njmtf9R6
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月19日
不動産取引の取引費用を不動産テックで下げる
猫も杓子もDX感がある昨今、せめて標準的なICT化の実現は不動産業界の長年の課題だ。スマホとスマートロックがあればセルフ内見が可能だ。ビデオ会話ツールを使えば重要事項説明も非対面でできる。不動産取引の取引費用を下げることが今後なによりも重要だ(参考:中古住宅と賃貸住宅の取引費用)。
令和3年版土地白書P.63より。不動産業界にもDXの潮流は到達し出している。不動産の物件情報や内見、web会議システムや顧客管理システムを活用した接客対応、オンラインによる重要事項説明(IT重説)など。セルフ内見は利用者・管理会社双方にメリットが多い。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/0i7AqKVqbo
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月19日
オンライン化と電子化は着実に進む
オンラインによる重要事項説明は売買でもスタートした。脱ハンコの流れもあり電子書面の交付が次なる課題。
令和3年版土地白書P.63-64より。オンラインによる重要事項説明の本格運用は賃貸は既になされ売買も2021年4月からスタートした。電子書面の交付が次のハードル。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/xrlTcpjl40
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月20日
都市計画と防災の連携強化
コンパクトシティよろしく、拡散した市街地を集約しようと立地適正化計画が各自治体で策定され実行に移されてきている。しかし、居住地として誘導してきた土地が実は浸水リスクの高い土地だったことがわかるなど都市計画と防災の連携不足が露呈した。
令和3年版土地白書P.76より。昨今の自然災害の頻発・激甚化により都市計画と防災の連携不足が露呈し、見直された。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/gu6GjBZMPT
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月20日
不動産取引と防災の観点
そして不動産取引における重要事項説明にも水害リスクに関する説明が義務付けられるようになった。災害情報はハザードマップなど自らスマホで調べられるようになってきた。不動産のこと、建物のこと、まちのこと、土地のことなど自律的に情報取得することが重要だ。
令和3年版土地白書P.77より。これまでは不動産取引における重要事項説明に水害リスクについて説明する義務がなかったが見直された。https://t.co/HRZxw1J4gZ pic.twitter.com/4ArKCppZNl
— マチノヨハク (@cbwinwin) 2021年6月20日