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「空き家問題」とは何か

空き家の何が問題か

 「空き家問題」という言葉がよく聞かれるようになってきました。古い建材の飛散や建物の倒壊の恐れといった近隣に余程の悪影響を及ぼしている(または今後及ぼす可能性が高い)空き家に関しては、いわゆる特定空き家として自治体から指導・助言の対象となり改善がなされなければ勧告、命令と続き、それでも改善がなされない場合は代執行(自治体による強制撤去)されることになります*1。確かにこうなってしまった空き家は問題です。

需要と供給のミスマッチ

 一方で空き家の使われ方別で見ると賃貸住宅が約5割、個人住宅が約4割*2です。賃貸住宅の空き家は住宅市場の中で需要と供給にミスマッチが生じているという問題です。相続税対策を考える土地所有者(賃貸住宅経営の経験なし、高齢)と賃貸アパートを建設して欲しい住宅メーカーや不動産会社とで相次いで起こったサブリースを巡るトラブルなどは、まさに問題です。

相続の滞り

 個人住宅の空き家は持ち家ですので以前は誰かが住んでいました。夫婦と子ども世帯から子どもの独立により夫婦のみ世帯へ、夫婦のどちらかが亡くなり単身世帯へ、最終的には住む人がいなくなり土地や建物を子どもが相続します。
 自ら居住すれば空き家にはなりませんが兄弟姉妹がたくさんいたり、相続登記がなされなかったことで孫の世代にまで所有権が及んでいると利害関係者が多すぎて売却や賃貸、または解体するといった意思決定をまとめるのは非常に骨の折れる作業となってきます*3

 親族間における相続が滞ることによる空き家の発生という現象だけにスポットを当てて考えてみると、「事前に家族で家の将来のことを話し合っておこうね」ということになります。いわゆる「終活」に関するリテラシーを地道に向上させていく、啓蒙していくというアプローチはもちろん重要ですが時間や労力が相当かかります*4
 そうは言っても先送り、後回しにしてしまいがちだし、そもそも売るに売れない、貸すに貸せない、壊すに壊せない実情が多くあるのもまた問題です。

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売却、賃貸、解体が困難

 日本の住宅市場における既存住宅の流通シェアは約14.5%(2018年)*5と圧倒的に新築住宅の流通に偏っています。売主である所有者、買主、仲介業者それぞれにとって既存住宅が流通しづらい原因や課題*6があります。
 個人住宅の空き家を賃貸すると言っても、まずは片付けや掃除、修繕*7などが必要になったりして手間や時間が相当かかる上、一から賃貸住宅経営を学び実践していくことはそんなに簡単ではありません。 
 空き家の解体に関しても、解体費用はもちろん解体後の土地をどのようにするかが問題となります。解体後の土地を解体費用以上の価格で購入してくれる不動産会社などがいれば良いですが、ただ解体するだけでは「住宅用地の特例」という税制優遇措置が無効となり固定資産税と都市計画税の負担が上がってしまうことになります。

空き家を生み出す社会構造こそが問題

 いわゆる「空き家問題」の根っことは何かを考えてみると、空き家を生み出す社会構造こそが問題です。令和元年空き家所有者実態調査によると空き家の取得経緯の半分以上は相続です。子どもが30〜40代の子育て真っ最中の時期に空き家(実家)を相続できれば自己居住することで空き家化は防げます。しかし、長寿命化を背景に親が亡くなる頃には子どもも定年間近なんていうことが現実に起きています。
 空き家の増加はそれはそれで問題ですが、あくまでも川下の議論に過ぎません。現象面だけにとらわれず、その源流にある住宅政策と住宅市場の欠陥を見据えることが重要です。戦後は420万戸の住宅不足に直面していましたので住宅の量を確保することが急務でした。しかし全国の住宅数は1968年に世帯数を超え、1973年には全ての都道府県で住宅数が世帯数より多くなりました。同年オイルショックにより高度成長から低成長時代に入ると、景気対策としての住宅政策という側面が色濃くなっていきます。1972年には住宅取得控除制度が創設され持ち家取得政策が促進されていきました。
 1985年のプラザ合意からの円高不況、持ち家取得の金融化のサイクルの果てに住宅バブルが発生します。バブル崩壊後の住宅政策は住宅市場を下支えする役割を果たすようになってきます。人口減少、高齢化、未婚・晩婚化、終身雇用の崩壊、長期低迷する経済、住宅需要の減退など、社会経済条件が高度成長期とは真逆となっている昨今、住宅政策も住宅市場もアップデートする必要がある。結論はこの一言に尽きます。

*1:代執行にかかる費用は全額空き家の所有者に請求されることになりますが、所有者に資力がなかったり所有権者を確定させることが困難だったりで、費用回収できたのはたったの1割という総務省による調査結果も。

*2:2018年住宅・土地統計調査によると全国の空き家数は848万9千戸。その内賃貸住宅は432万7千戸、個人住宅は348万7千戸。

*3:一人でも「売りたくない」と主張すれば売却は困難。そもそも面識のない親族もいて連絡すらままならない場合も。

*4:住まいや不動産、お金の教育を否定するものではありません。若い世代はこれから絶対に必要だし、中高年世代も今からでも必要な知識であることに変わりはない。

*5:アメリカは81.0%、イギリスは85.9%、フランスは69.8%。

*6:既存住宅市場の活性化について(令和2年5月7日国土交通省)が詳しい。

*7:相場よりも家賃を下げるけれど現状有姿のままで貸し出す、など柔軟な賃貸契約形式である「DIY型賃貸借契約」も最近は出てきている。