渋谷区が高齢者へスマホを無償貸与
全国の自治体ではこの時期、来年度(2021年度)予算案が続々と発表されています。その中で注目の取組の一つが渋谷区による高齢者デジタルデバイド解消事業です。
スマホを保有していない65歳以上の区民を対象に、最大3,000台を無償貸与し、通信料や通話料も区が負担します。2021年9月から2023年8月までの2年間とのことですが、全国の自治体の中でもあまり例のない先進的な事業です。
新型コロナウイルスの流行により社会のデジタル化が進む中、東京都渋谷区は高齢者にスマートフォン(スマホ)3000台を無償で貸与する実証実験を始める。健康づくりや防災情報の伝達に役立ててもらい、情報格差解消につなげる考え。
東京・渋谷区が高齢者にスマホ貸与へ「生活の質向上に」 3000台で実証実験 - 毎日新聞
あらかじめアプリをインストール、操作方法を学ぶ講座の開催や、個別相談も
区の防災アプリや健康づくりに役立つアプリをあらかじめインストールしたり、スマホの操作方法を学ぶ講座の開催や、個別相談も実施することで、貸与しっぱなしにするのではなく、スマホに不慣れなシニアへのサポートをしていくようです。
区はスマホの操作方法を学ぶ講座を開催したり、個別相談を実施したりして参加者を継続的に支援する。さらにスマホの操作にくわしい区民を「デジタル活用支援員」として登録し、参加者を援助してもらう。
東京・渋谷区が高齢者にスマホ貸与へ「生活の質向上に」 3000台で実証実験 - 毎日新聞
デジタル機器が生活の質(QOL)を向上させる
渋谷区によると今回の事業の狙いは高齢者の生活の質(QOL)の向上です。コロナ渦において人との対面や接触が制限される中、デジタル機器を活用できるようになること、デジタルサービスの恩恵を享受できるようになることが重要です。
(出典:【報道資料】令和3年度渋谷区当初予算案の概要 P14)赤下線は筆者による。
3,000人では足りない…
今回の事業はとても前向きで素晴らしいのですが、スマホ未保有者への無償貸与は3,000人で果たして足りるのか、ということは一点押さえておく必要があります。渋谷区に住む65歳以上は約4万3000人。2019年におけるスマホの保有状況*1は60〜69歳が64.7%、70〜79歳が33.8%、80歳以上が11.0%ですので、スマホ未保有の渋谷区在住の65歳以上全員をカバーできるわけではありません。
ただ、スマホの通信料や通話料をも渋谷区が負担する方針であることから、持続可能な財政運営を実現する上で3,000人が上限と結論付けたのだと思います(高齢者デジタルデバイド解消事業の予算額は3億6,500万円)。
区の担当課によると、渋谷区に住む65歳以上の高齢者は約4万3000人。このうちスマートフォンなど情報機器を持たない人は、災害時の情報収集やコロナ堝の「新しい生活様式」で求められる新しい行政サービスの活用に支障が出るおそれがあるという。
高齢者にスマホ3000台を無償貸与、渋谷区が9月開始へ オンライン健康相談にも - ITmedia NEWS
(出典:令和元年通信利用動向調査の結果(概要)P7)赤下線、赤丸は筆者による。