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空き家を活用して新しい価値をつくる

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空き家の定義とは何か

空き家というバズワード

 年々、空き家に関する注目度が上がってきています。最近のニュースをざっと眺めてみても、所有者が亡くなって住宅や土地の所有権が相続されても適切に管理されずに老朽化し、次第に近隣の地域へ悪影響を及ぼすようになってしまった空き家を役所が代執行により解体するといったマイナスをゼロに近づける動きや、空き家を改修して高齢者や障害者、生活困窮者向けの住宅を確保するプロジェクトがスタートしている、といったゼロをプラスにするような取組など空き家を巡るニュースに事欠かなくなって久しいです。
 しかし、改めて「空き家ってなに?」と聞かれると人それぞれ捉え方が違っていたりしがちです。賃貸用の住宅として市場に出ていても空室なら空き家なのか?一人暮らしの高齢者が施設に入っている場合でも空き家なのか?マンションやアパートなど共同住宅で空室となっていれば空き家なのか?……。わかるようでわからない空き家の定義について確認していきます。

空き家の定義と判断基準

 2015年に施行された空き家対策特別措置法(以下、空き家法)第2条1項では「居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」を空き家の主要要件としています。そして、居住その他の使用がなされていないことが常態であることの細かい判断基準については「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」に示されています。すなわち、人の出入りの有無や電気・ガス・水道の使用状況、不動産登記の記録、住民票の内容、適切な管理がなされているか否かなどから客観的に判断することや、概ね1年間を通して使用実績がないことが基準となる、としています。

住宅・土地統計調査の場合

 2019年1月に公開された総務省による報道資料「空き家対策に関する実態調査 <結果に基づく通知>」P.29がズバリわかりやすいです。空き家法と5年に1度実施される住宅・土地統計調査(以下、住調)それぞれから捉える空き家の定義の違いがまとめられています。

空き家の定義

出典:空き家対策に関する実態調査 <結果に基づく通知>P.29

  住調では空き家を賃貸用の住宅、売却用の住宅、別荘等の二次的住宅、その他の住宅*1の4つに分類しています。この中で、その他の住宅とは平たく言えば、不動産市場に出ていない個人住宅のことです。空き家全体の約半数が賃貸用の住宅、約4割がその他の住宅に当たります(詳細はこちら)。
 空き家法による空き家の定義が使用実績が無い期間を1年間としているのに対し、住調では3ヶ月とかなり短いです。また、空き家法ではマンションやアパートなどの共同住宅のお部屋全てが空室になっていないと空き家と判定しないのに対し、住調では1戸からでもカウントします。

住調と「空家等対策の推進に関する特別措置法」における「空き家」の相関図

出典:平成30年住宅・土地統計調査に関する研究会(第3回)資料1-3

地方自治体は独自の空き家実態調査を実施

 多くの地方自治体では独自に空き家の実態調査を行なっています。例えば東京都三鷹市の場合、2018年実施住調の結果では10.6%なのに対し、独自に行なった2017年度調査では2.08%となっています。空き家法と住調とで空き家の定義や判断基準が異なっているため、このように数字が乖離してきます。

三鷹市空き家実態調査による空き家率

出典:三鷹市 空き家等調査業務 調査結果報告書

空き家かどうかは問題じゃない

 行政としては空き家の所有者に対して適正管理を働きかけ、場合によっては代執行(強制撤去)も選択肢として持っているわけで、空き家の定義が複雑になるのは致し方がありません。しかし、もう少し広く自由な視野で見てみると、使われていなさそうな建物、空き家っぽい建物、何か出来そうな建物はまちなかに点在していることと思います。明確な意味での空き家かどうかは、一個人としてまちや地域に新しい価値をつくっていく上では問題になりません。

*1:「その他の住宅」とは、「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「二次的住宅」以外の空き家で、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅のほか、空き家の区分の判断が困難な住宅などを含む。