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空き家を活用して新しい価値をつくる

空き家実態調査の結果を細かく見てみた(三鷹市空き家等調査報告書)

全国の多くの自治体で「空き家実態調査」を行っています。ネットで検索可能で比較的新しいものについて紹介していきたいと思います。第1弾は東京都三鷹市。

 

どの地域にどれくらいの空き家が眠っているのか、空き家になった理由は何か、活用について空き家オーナーはどのように考えているのか、などを調査結果から見ていきたいと思います。

 

市内全域の一戸建てを中心に調査

 

三鷹市では平成24年12月から平成25年2月にかけて、市内全域を対象に一戸建てを中心とした空き家の実態調査と所有者などへのアンケート調査を行いました。

 

三鷹市内にある空き家のうち、腐朽・破損などがあり管理水準の低下した空き家があるものの、地域ごとの実情や実態等は分析されていないため、空き家の実態について正確なデータを把握することが必要となっています。そこで、市内全域を対象に一戸建てを中心とした空き家等の実態調査を行い、現状把握・分析、所有者等へのアンケートを実施しました。

三鷹市 |三鷹市空き家等調査報告書

 

三鷹市の空き家数と空き家率

 

総務省の「平成20年住宅・土地統計調査」によると三鷹市内の住宅総数96,100戸のうち空き家数は11,920戸。空き家率は12.4%です(全国は13.1%、東京都は11.1%)。ただし、今回の調査は一戸建てが中心のため賃貸用や売却用の空き家は対象外なので、賃貸用と売却用(と二次的住宅)を除いた4,510戸が不動産市場にも出ておらず住宅として利活用されていない空き家になります。

 

さらに細かくいうと、4,510戸のうち腐朽・破損のない空き家が3,600戸。そのうち一戸建てが710戸、アパートやマンションが2,650戸です。

 

賃貸用や売却用の空き家・空き室は基本的には売りに出されているので、NPOや何の後ろ盾もない個人が空き家活用を進めるには上記の3,600戸の”個人住宅の空き家”に対して働きかけていくことが重要です。

 

現地調査の結果、空き家と思われる一戸建ては675戸

 

モデル地区での事前調査、外観目視調査する際の空き家判定基準をもとに住宅地図を使用して約2ヶ月間、一戸建てを中心に(マンションやアパートは除く)現地調査がなされました。その結果675戸が空き家の可能性が高い建物でした。

 

これは”外観において人の住んでいる気配が感じられない”、”電気メーターが動いていない”、郵便受けに大量の郵便物がたまっている”、”樹木等の管理がなされていない”などの状況を確認したうえで空き家と判断されました(ただし、あくまでも外観上なので住宅オーナーさんの認識とはズレがあります。このことは後述します。)。

 

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画像引用元)住宅地図に外観上空き家と判断された建物をマッピング。

 

建物区分→木造一戸建ての2階以上が多い

 

空き家の可能性が高いと判断した建物の建物区分は、

一戸建て:91.4%

共同住宅:7.2%

長屋:1.3%

 

構造別では、

木造:95.4%

非木造:4.6%

 

階数別では、

1階が24.0%

2階以上が76.0%

 

木造一戸建てで2階以上の建物に空き家の可能性が高いです。

 

675戸中、オーナー等が把握できた287戸について所有者アンケートを実施

 

回答率は44.3%。回答数127件。外観上は空き家と判断されてもオーナーからすればなんらかの形で利活用していると答えることが多いと思います。結果を見ていきます。

 

住宅の種類と建築時期→高度経済成長期に建てられた一戸建てが多い

 

住宅の種類は一戸建てが87.4%で、建築年数は昭和31年から昭和50年の間に建てられたものが46.5%と最も多いです。高度経済成長期に建てられた一戸建てが空き家になるケースが多いということです。

 

使用状況→空き家っぽい住宅でも5戸のうち2戸のオーナーさんは「空き家でない」という認識をお持ち

 

建物の使用状況は「空き家である」が58.3%。「空き家でない」が37.0%です。やはり外観上は空き家と見られる建物でもオーナー側から見ると何らかの利活用ををしているという認識であるということがわかりました。

 

空き家でない建物の使用状況→月1または年に数回使用、倉庫として使用が多い

 

これは、

週末に使用:2.1%

月に1回程度使用:17.0%

年に数回使用:12.8%

その他:46.8%

です。「その他」については「居住している」「倉庫として使用」「賃貸住宅として使用」などが多かったようです。これは以前ブログで紹介しました「親家の空き家の実態調査」結果と似ています。

 

(2)「親家」の利用状況

これは、利用と放置が半々です。利用の中で一番多いのは「物置、トランクルーム」。次に「法事、お盆など、親戚が集まるときに利用」「セカンドハウス、別荘」と続きます。なんかどれももったいない使い方ですね。もっと他に面白い使い方や使い道がありそう。そして半分は放置ということで、これこそもったいないです。

「親家の空き家」の活用・管理市場はブルーオーシャン(今のところ) - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

 

空き家になった時期→2009年〜2012年頃が多い

 

「空き家である」と回答があった建物の44.6%は平成21年から24年頃に空き家になったことがわかりました。高齢化が背景にあるということですね。

 

空き家に至った理由→転居や老人ホーム等への入居などで

 

空き家に至った理由は「転居のため」「賃借人の転居のため」「相続等により取得したが住居者がいない」が多くて合わせて63.5%。その他は「老人ホーム等に入居」「長期入院」などが主な理由です。

 

維持管理を行っている人→オーナー自身または家族が多い

 

維持管理は「所有者本人または家族」で管理が71.6%。「不動産業者などの民間業者」が8.1%。オーナーまたは家族が多く、時間的にも費用的にも体力的にも結構な負担になる場合もあると思います。

 

維持管理で困っていること→管理の手間が大変

 

困っていることは「特にない」が32件。次に「管理の手間が大変」が21件です。管理を負担に感じているオーナーさんも多くいるということがわかります。

 

住宅の賃貸について→賃貸する予定はないが多い

 

賃貸については「賃貸する予定はない」が55.4%。「現在、賃貸の検討中」が13.5%です。賃貸に出すことに消極的であることがわかります。

 

住宅の売却予定について→4割のオーナーさんは売却したいと考えている(賃貸より売却意向のほうが強い)

 

売却予定については「売却する予定はない」が39.2%。「現在、売却を検討中」が10.8%、「将来的には売却したい」が29.7%」ということで賃貸よりは売却したいニーズのほうが強いようです。全体の4割のオーナーさんは売却したいと考えています。

 

住宅の有効活用について→空き家活用の支援や情報提供は必要だがそもそも空き家活用を考えていないオーナーさんが多い

 

住宅の有効活用については、

リフォームに対する支援:19件

空き家の有効活用に関する情報提供:19件

公的な機関による借り上げ制度:18件

不動産情報の提供:19件

空き家の有効活用は考えていない:28件

ということで、空き家有効活用への支援や情報提供のニーズはあるものの「空き家の有効活用は考えていない」オーナーさんはやはり多いということがわかりました。

 

年齢と居住地→60歳以上が7割、居住地は市外が過半数

 

オーナー年齢は

70歳以上:44.6%

60〜69歳:29.7%

50〜59歳:17.6%

ということで年齢が高いほど空き家の所有率が上がっています。

 

居住地は三鷹市内が41.9%で東京都内が36.5%。その他が21.6%ということで、居住地から空き家への移動距離・時間がかかるケースが半分以上ということがわかりました。

 

まとめ

 

今回の三鷹市の調査はまず外観調査で空き家を判断してから所有者アンケートによりオーナーへ意向調査するという手順でした。市内全域を対象にしたことでかなり精度の高い調査が出来たのではないかと思います。

 

所有者アンケートの結果「空き家でない」との回答が約4割存在しています。それらの建物の使用状況は「月に1回程度」や「年に数回」使用といったものも含まれており、外観調査から導かれた結果とオーナーさんの空き家に対する認識にズレがあることがわかりました。これは、例えば毎月1回だけ使用すると考えた場合、残りの20何日間は”空き家状態”になるため定期借家制度など一定期間の借家制度などを使うことでもっと土地・建物を有効活用できると考えます。

○「定期借家制度」については以前ブログで書きましたのでこちらをご覧ください。

個人住宅の空き家活用の鍵は「借主DIYによる修繕・改修」と「定期借家制度の利用」 - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

 

また空き家オーナーの居住地は三鷹市内は4割程度で、全くのご近所に空き家があるというケースは半分以下です。これは空き家の維持管理コストが結構かかるということに行き着きます。誰か第三者が維持管理または利活用すれば維持管理の手間も省け、賃貸借にすれば賃料も入ってくるなどオーナーさんにとって一石二鳥になると思います。

 

関連記事はこちら。

「親家の空き家」の活用・管理市場はブルーオーシャン(今のところ) - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ