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空き家を活用して新しい価値をつくる

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空き家活用で街の価値を上げる

「中部電力 MIRAI TOWER」の展望フロアからの眺望:2022年9月撮影

「中部電力 MIRAI TOWER」の展望フロアからの眺望:2022年9月撮影

空き家を取り巻く状況の変化と背景

2014年4月に本ブログ*1を書き始めてからこの間、2015年5月に空き家対策特別措置法が全面施行され、国や自治体による空き家対策が進められたり、民間事業者による空き家の活用や流通に向けたサービスが増えるなど、空き家を取り巻く状況は大きく変化しています。

しかし、全国の空き家の数は増え続け、2018年住宅土地統計調査によると8,488,600戸に上り、過去最高となっています(空き家率も過去最高の13.6%)。

その背景には、急速な人口減少や高齢化、新築中心の住宅市場が続けられていること、不動産の相続登記の申請が任意だったこと、などが挙げられます。

急速な人口減少と高齢化

総務省が2022年4月に公表した人口推計(2021年10月1日現在)によると、総人口は1億2550万2000人で、前年に比べ64万4000人の減少となり、減少幅は統計を取り始めた1950年以来、過去最大です。人口減少は11年連続です。

出典:総務省人口推計統計(2021年10月1日現在)

出典:総務省人口推計統計(2021年10月1日現在)

65歳以上人口は3621万4000人で、前年に比べ18万8000人の増加となり、割合は28.9%で過去最高です。

出典:総務省人口推計統計(2021年10月1日現在)

出典:総務省人口推計統計(2021年10月1日現在)

新築中心の住宅市場

国土交通省の建築着工統計調査報告(令和3年計)によると、2021年の新設住宅着工戸数は856,484戸で、直近10年間は80〜90万戸代で推移しています。空き家が増えている状況下でも、新築住宅を作るペースは維持されています。

なお、野村総研のニュースリリースによると、新設住宅着工戸数は2030年度に70万戸、2040年度には49万戸へと減少していくことが予測されています。

出典:建築着工統計調査報告(令和3年計)

出典:建築着工統計調査報告(令和3年計)

不動産の相続登記の申請が任意

2019年空き家所有者実態調査によると、空き家の取得方法で最も多いのは「相続」です(54.6%)。不動産の所有者が亡くなったら、相続人が所有権の移転の登記をする必要がありますが、これまでは任意の手続きでした。不動産の相続登記がされないと、「売る」「解体する」「活用する」などの選択肢の妨げになってしまいます。

不動産の相続登記が行われず現所有者がわからなかったり、現所有者が特定できてもその所在がわからない土地である「所有者不明土地」の解消を目的に、不動産登記法が改正され、2024年4月1日から不動産の相続登記の申請が義務化されます。(参考

出典:なくそう、所有者不明土地! 所有者不明土地の解消に向けて、 不動産に関するルールが大きく変わります!

出典:なくそう、所有者不明土地! 所有者不明土地の解消に向けて、 不動産に関するルールが大きく変わります!

こういった現状から、今後も一定数の空き家は増え続けていくと考えます。

「その他の住宅」の空き家がターゲット

全国における空き家の種類別の割合を見ると、「賃貸用の住宅」が51%、「その他の住宅」が41.1%です。

「賃貸用の住宅」は不動産事業者が適切に管理している物件と考えられます。そのため、売りにも貸しにも出されていない個人住宅である「その他の住宅」の空き家が、近年問題となっている「空き家」と言えます。

出典:株式会社ジェクトワン 空き家手帳(赤囲いは筆者による)

出典:株式会社ジェクトワン 空き家手帳(赤囲いは筆者による)

不動産市場に出ていない個人住宅である「その他の住宅」の空き家にターゲットを絞り、2019年4月から2022年6月まで空き家活用に向けた営業、空き家の片付け、改装、シェア型本屋兼レンタルスペースの運営に取り組んできました。

詳しくは下のリンク先をご覧ください。

営業編

akiya123.hatenablog.com

片付け編

akiya123.hatenablog.com

改装編

akiya123.hatenablog.com

運営編

akiya123.hatenablog.com

空き家所有者の思いや、その空き家の歴史、状態、立地、周辺環境、利用者のニーズといったポイントを踏まえて空き家活用を企画し、街の魅力的なコンテンツへと育てていくことは、困難ではありつつも、やりがいがあることを実感しました。

空き家を「非住宅」として活用する

空き家を活用するプロセスは十人十色です。住宅として使われていた空き家を、そのまま住宅として活用するのももちろん素晴らしいですが、店舗やオフィスなど「非住宅」に用途を変更して活用する、という選択肢も考えられます。

戸建て住宅の空き家の場合

例えば、第一種低層住居専用地域にある空き家を活用する上で、以下の条件を満たせば「店舗兼用住宅」として、店舗やオフィスを開くことが可能です。

①内部で行き来可能(兼用住宅にする事)
②店舗・事務所 ≦ 住宅(住宅の床面積の方が大きい事)
③店舗・事務所 ≦ 50㎡(店舗の床面積は50㎡以下である事)
【兼用住宅と併用住宅の違い】建築基準法では兼用の方が建てやすい|建築基準法とらのまき。

私が運営してきたシェア型本屋兼レンタルスペースも、第一種低層住居専用地域における「店舗兼用住宅」(1階が店舗スペースで2階以上が住居スペース)でした。自らの経験と反省から、低層住居専用地域における空き家活用を進める上で、早い段階からご近所の方の不安や疑問に応えることが重要だと考えています。

共同住宅の空き家の場合

共同住宅の場合は用途地域の他に、店舗やオフィスでの用途が認められるかマンション管理規約も確認する必要があります。東京都における「その他の住宅」の空き家の建て方を見ると、60.2%が共同住宅、36.6%が戸建てです。東京都においては共同住宅の空き家のボリュームが大きいため、どのような活用ができるか考えていきたいです。

商店街の空き店舗を活用する

駅前の好立地な商店街なのにシャッターが降りていて、なんだかもったいないと感じることがよくあります。しかし、空き店舗を貸す側にとっても「貸しづらい理由」があると聞いたことがあります。シェア型本屋兼レンタルスペースを運営している中で知り合った、商店街にある以前はお店だったスペースのオーナーのご家族は、「住居スペースと店舗スペースの境目が曖昧だから、(店舗スペースを)誰かに貸せない」と言っていました。

せっかく第三者に貸す意思があるのに、建物の構造が妨げになっているのは非常にもったいないことです。そこで考えられるのが、「住居スペースと店舗スペースを分離する工事」です。自治体による改修費の補助金なども上手く利用して、商店街の空き店舗の活用を進めていきたいです。

熊谷:建物は昔ながらの、店舗側の入り口と、裏口しかない作りですよね。
石井:そうです。転貸スペースとの境界が難しくて、二階のオーナーの住居部分との兼合いが難しいと思うんですが、思いきって裏口の鍵は完全共用にしてもらったんです。2階は、階段を上がった所にもう1つ鍵付きのドアを付けさせていただいたので、オーナー以外は出入りできないようにしてあります。オープンしてから、何度かオーナーも出入りされているようですが、上手く共存いただいているみたいです。
熊谷:こういった店舗住宅は多いからね。共存が図れるようにできると良いですよね。
空き家・空き店舗はこうやって生まれ変わる! 後継者のいない商店オーナーの挑戦が街を変えていく | 空き家の活用は【アキサポ】

寄稿/執筆一覧

空き家活用の実践は、株式会社まちづクリエイティブにおけるライターの経験や、東京都立大学都市環境科学研究科客員教授の和田清美先生(所属は2022年度現在)の指導や研究が大きなヒントになりました。

寄稿/執筆一覧 - Google スプレッドシート

空き家を活用することは、その空き家の価値を上げるのみならず、その街の価値を上げることにもつながります。今後も空き家活用を通したまちづくりに取り組んでいきます。

*1:当初のブログ名は、「空き家の活用で社会的課題を解決するブログ」でした。