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空き家を活用して新しい価値をつくる

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東京都三鷹市井の頭一丁目の空き家活用の実践<片付け編>

「旧・アンティーク日本の心」の外観:2020年4月撮影

「旧・アンティーク日本の心」の外観:2020年4月撮影

片付けの日々

2020年3月、「旧・アンティーク日本の心(戸建て住宅の1階にある元骨董品屋の空きスペース)」で、週末の休日を使って片付けをする日々がスタートしました。この場所は2006年以降、本格的な営業はしておらず、ひっそりとした場所になっていました。時代箪笥や鏡台、食器、置き物など様々な物が眠っている状態でした。値札が付いている物も多く、営業していた頃の名残を感じます。

まだまだ使える物もありましたが大半の物は傷んでいたり、汚れていたりで、廃棄する必要がありました。ひたすらゴミ袋に入れるという作業を繰り返しました。ゴミの処分については、空きスペースの所有者さんが手伝ってくれたのがありがたかったです。

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街の人たちとのコミュニケーション

2020年4月、京王井の頭線三鷹台駅から徒歩4分の住宅街に立地しているためか、定期的にシャッターを開けて片付けをしていると、ふらっと寄ってくれる方もいます。いつも通るシャッターが閉まっている場所が珍しく開いているので、気になって覗いてくれるのかもしれません。街には世代や性別、海外にルーツがある方など、様々なバックグラウンドを持つ方が暮らしていることを、片付けをしながら肌で感じました。

前々からこの場所にたまに通っていた、という美容師さんが訪ねてきました。お店や自宅用に欲しいというので、臼のテーブルや釜、食器などを低価格でお譲りしました。この方とはSNSでつながり、後日お店にお邪魔する機会があったのですが、臼のテーブルが素敵に活用されていて驚きました。

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美容師さんがリメイクした臼のテーブル

美容師さんがリメイクした臼のテーブル

残った物がつなぐストーリー

2020年5月、この活動を「イノイチサードプレイスプロジェクト」と名付けたのがこの頃です。残っている物を欲しい方に向けて、InstagramやLINE公式アカウント、チラシで発信し始めました。ある日もいつものように、ふらっときた方に残っている物をお譲りしたのですが、この方がアートやデザインのお仕事をされている方でした。ご自身のInstagramでお譲りした物について発信してくださり、この発信の影響で信じられないくらいたくさんの人が足を運んでくれました。 

物をお譲りした方には、お譲りした物を実際に使っている様子の写真を送ってもらうようにお願いしていました。皆さんそれぞれ、喜んで使っていることがわかりました。ずっと空き家だった場所に残っていた物が誰かに引き継がれ、リメイクやリユースされるというストーリーをいくつも見届けることができて嬉しいです。

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古着市を開催

2020年6月、この日もご近所の方と雑談していて、長年箪笥の肥やしになっている着物や古着の取り扱いについての話題になりました。話をする中で、一度全部の着物や古着を干して、もし欲しい人がいればお譲りするイベントを一緒にやろうということになりました。町会長に相談したところ、「場所だったら地区公会堂(公民館のようば場所)で開催してみては」とご提案をいただき、ご近所の方、町会長、町会メンバー、私で「イノイチ古着市」を開催しました。

2日間かけて開催し、最終的に残った着物や古着約50着は、「着物地をアップサイクルするものづくり」をベースに活動されている「ワタリス」へ寄付しました。ワタリスのことはご近所の方から教えてもらいました。

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シャッターアートを企画

2020年7月、この頃になるとだいぶ物は減ってきました。そのため少し余裕が出てきましたので、街の人たちを巻き込んだ企画を仕掛けたいと思うようになりました。それは「シャッターアート」です。当初は旧・アンティーク日本の心だけと考えていましたが、町会長を通して商店街の店主や以前までお店をやっていた方のご家族へ話が広がり、最終的に5件のシャッターに「絵を描いてもいいよ」と、不動産所有者の承諾を得ることができました。

2020年8月、シャッターアートのアーティストをSNSや地域のリアルなつながりで募集し、5組に集まってもらいました。並行してシャッターの掃除をし、ペンキや筆などの消耗品を買い揃えるなど、準備を進めていきました。町会長はもとより、地域住民や友人が手伝ってくれて、とても助かりました。

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シャッターアートを制作中の美大生の皆さん:2020年8月撮影

シャッターアートを制作中の美大生の皆さん:2020年8月撮影

自治体のゴミ回収、民間の不用品回収、ジモティー

毎週末片付けをしながら、ふらっと来た方に物をお譲りするだけだと、片付けに膨大な時間がかかってしまいます。タイムリミットを決めて、それまでに欲しい人が現れなければ廃棄という風に、段々と思い切って断捨離するコツを覚えていきました。

自治体のゴミ回収以外に利用したのは、民間の不用品回収やジモティーです。まず民間の不用品回収は、主にエコランドを利用しました。自治体の粗大ゴミ回収よりも高額なので、厳選して利用していました。ジモティーは不用品をジモティーのサイトに掲載して、欲しい人が現れるのを待ちます。個別のやりとりが必要になりますが、物を欲しい人が取りに来てくれるのは便利でした。

片付け全体を通して、箪笥がそれなりの価格で売れましたが、収入を差し引いても約10万円の支出となりました。

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