マチノヨハク

空き家を利活用して新しい価値をつくる

仲宿商店街を歩いてきた

おむすびカフェ兼交流スペース「板五米店」

おむすびカフェ兼交流スペース「板五米店」

「東京人」2021年12月号の空き家利活用特集で取り上げられているまちを実際に歩いてみよう特集・第2弾は板橋の仲宿商店街です。

古い建物と新しい建物が混在

都営三田線の板橋区役所前駅から徒歩1分の仲宿商店街は、江戸時代に整備された五街道の一つである中山道の最初の宿場町である板橋宿の中心地です。現在は130店舗が軒を連ねていますが最も賑わった昭和40〜50年には約200店舗もあったそう。商店街の中を歩くと商店街らしい古くからある魅力的な個人店がたくさんありましたが、それと同じくらいに真新しいチェーン店や高層マンションも多く見かけました。建設中のマンションも多く見ました。

とても賑やかだった

とても賑やかだった

板五米店

「仲宿」と書かれた立派なゲートをくぐってすぐの場所に一際目を引く大きな趣のある建物があります。1914(大正3)年築の旧米屋商家をリノベーションして2019年12月に誕生したおむすびカフェ兼交流スペース「板五米店」です。美味しそうなお弁当やおむすびが販売されていました。2021年11月より店内営業再開されています。

宿場町の町家の面影が残る

宿場町の町家の面影が残る

銭湯「花の湯」の廃業

板五米店の運営は株式会社向こう三軒両隣が担っています。代表取締役社長である永瀬賢三さんは板橋出身で2010年に板橋三丁目食堂を開き、かつて賑やかだったまちに空き家が増え、マンションに建て替わる変化を身近に感じてきました。

昭和54年生まれの私が子どもの頃には朝市や縁日が開かれ、とてもにぎやかでした。祖父が地元で寿司店を営んでいたことから、修行後この地域で開業したのですが、好きだった店が次々に廃業してシャッターが閉まり、マンションに変わる。もったいないのに加え、建物、人が変わり、会話、知った顔が減っていくことを寂しく感じていました」
「東京人」2021年12月号P.56

2017年3月、永瀬さんや地元の人たちにとって衝撃的な出来事になったのが創業1910(明治43)年の銭湯「花の湯」の廃業です。花の湯の廃業以降、永瀬さんは全国各地のリノベーション事例の研究や交流イベント、ワークショップを開催するなどまちでの活動に力を入れていきます。

板橋宿の商店街に点在する古い空き家を活用し、昔からの住民も、新しい住民もつながれるような場が増えれば、より楽しくて居心地のよいまちになると、想いは膨らんだ。が、当時は不動産やリノベーションの知識がなかったという永瀬さん。全国各地のリノベーション事例を訪ね歩き、手がけた人に会って話を聞くといった努力を重ね、手段を模索した。
地元での地域活動にも力が入った。板橋3丁目食堂のある板橋宿不動通り商店街組合の理事になり、交流イベントやワークショップの主催、商店街にコミュニティスペースを開設するなど、精力的に活動した。
古民家カフェ・板橋宿「板五米店」再生プロジェクトの奮闘を聞いた

銭湯「花の湯」はマンションに建て替わった

銭湯「花の湯」はマンションに建て替わった

おとなりstand&works

2018年9月、商店街の方からの噂話で板橋宿不動通り商店街(仲宿商店街のおとなり)沿いの元牛乳屋さんが廃業されてしまうということを知った永瀬さんは、退去の準備中だった大家さんとお話し、大家さんにご自身の活動を共感してもらいます。同時期につながった人たちが集まり、元牛乳屋さんの空き家を再生する地域を結びなおす拠点をつくるプロジェクトを立ち上げます。(参照記事:おとなりができるまで

2019年1月に株式会社向こう三軒両隣を設立し、3月にカフェ&コワーキングスペース「おとなりstand&works」をオープンさせました。

築40年の元牛乳屋さんをリノベーション

築40年の元牛乳屋さんをリノベーション

牛乳屋さんと宿場町の両方の名残が感じられる看板。

なぜウサギなのかはわからない

なぜウサギなのかはわからない

仲宿商店街振興組合の代表理事・星野さんによる声かけ

以前の板五米店は単発で使われることはあるものの、ほぼ空き家状態でした。そんな板五米店と永瀬さんとを出会わせるきっかけを作ったのは仲宿商店街振興組合の代表理事である星野久男さんです。永瀬さんの活動と同時期に動き始めていた板五米店のプロジェクトに参画しないかと、星野さんが永瀬さんに声をかけました。

板五米店は築100年を越すとても古い建物であるため定期的なメンテナンスが必須です。板橋区の空き店舗対策事業の助成は受けられるものの、その期間は3年間だけのため4年目以降も持続的に経営ができる人が必要と星野さんは考えたのでした。

板五米店のすぐ近くに星野家具店はある

板五米店のすぐ近くに星野家具店はある

地域電力会社「めぐるでんき」の参画

株式会社向こう三軒両隣の事業内容を見てみると不動産活用やリノベーション、飲食店やコワーキングスペースの運営以外に、再エネ事業や電力小売事業といったまちづくり会社では一見すると珍しい事業も含まれています。

事業内容
① 遊休不動産、空間資源を活用したエリア再生と不動産管理
② リノベーションによる建築再生の企画、事業開発、デザイン、設計監理及び施工
③ 飲食店、コワーキングスペースの運営及び運営コンサルタント
④ 再生可能エネルギーによる発電事業
⑤ 電力小売事業
⑥ 社会インパクト事業
ABOUT | 株式会社向こう三軒両隣のホームページ

地域電力会社である「めぐるでんき株式会社」が参画、現在は株式会社向こう三軒両隣と合併し、同社の事業部として位置付けられています。脱炭素は地球規模の課題でありパワーシフトという、電力のあり方を化石燃料から再エネに変えていく動きも昨今は出てきています。電力を切り替え、さらに電気代の一部が板五米店など地域の課題解決プロジェクトの活動費に回っていく仕組みは持続可能な社会と地域をつくるソーシャルグッドな取組です。

めぐるでんきには、支払っていただいた電気料金の一部を地域の課題解決に挑戦している人たちに投資するめぐるスイッチという仕組みがあり、これを利用して助成がなくなった後の板五米店を広く、浅く、地域の人たちからのお金で支えようという計画です」とめぐるでんきを設立、現在は向こう三軒両隣の取締役をつとめる渡部健さん。
「東京人」2021年12月号P.30

出典:めぐるでんきウェブサイト

出典:めぐるでんきウェブサイト

R.E.portの記事によると板五米店の改修コストは約2400万円。板橋区からの3年間の助成、クラウドファンディングで調達した約370万円もありつつも、継続的に稼ぐ仕組みがあることは強みであり、他のまちでもお手本になります。

板五米店は2020年2月に板橋区の登録有形文化財に指定された

板五米店は2020年2月に板橋区の登録有形文化財に指定された

「板橋」も見てきた

仲宿商店街を北に進むと板橋の地名の由来となった石神井川にかかる橋があります。スーツ旅行チャンネルの中山道の旅で板橋も紹介されていました

こじんまりとした橋である

こじんまりとした橋である

マンション開発は引き続きありつつも、まち固有の歴史や文化を継承し持続的に稼ぐ仕組みによってまちの価値を高める生き生きとした試行錯誤もまた生まれています。

まちの有形無形の資産をどう引き継ぐかが課題

まちの有形無形の資産をどう引き継ぐかが課題

株式会社向こう三軒両隣は「LOCAL REPUBLIC AWARD 2020」で最優秀賞を受賞しています。最終公開審査会の様子はYouTubeで視聴できます。