マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

イケてる空き家活用事例はこれだ!平成30年版首都圏白書から5つ選びました

平成30年版首都圏白書が2018年6月8日に公開されました。「首都圏における『都市のスポンジ化』への対応と、都市の魅力・活力の向上」というテーマで、イケてる空き家活用事例がたくさん紹介されています。

f:id:cbwinwin123:20180701111758p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001237803.pdf

(1)商店街の再生(栃木県宇都宮市・もみじ通り)

栃木県宇都宮市のもみじ通りはほとんどの店が世代交代することなく高齢化が進み、平成21年に商店会が解散します。平成22年に不動産業も営む建築家である株式会社ビルススタジオ塩田大成さんがオフィスを移転しカフェを誘致したことをきっかけに、空き店舗所有者とテナントの仲介を手がけるようになっていきました。

後背地の住宅地等の客層をとらえ、平成28年までに、建築家の目利きで選ばれたレコード店や美容室、雑貨店な ど17店舗が出店し、若いカップルや子ども連れが行き交う賑わいのある通りとして再生している。 

平成29年度首都圏整備に関する年次報告(要旨)p18

商店街の空き店舗が埋まらない理由で最も多いのが「(空き店舗)所有者に貸す意思がない」というものです。つまり、手間や費用をかけてまで貸したくはないと考える空き店舗所有者が多いわけです。そのため10年の定期借家契約とテナントによる改修費負担を基本スキームとすることで、テナント側のオーダーメイドの要望を満たしつつ空き店舗所有者の負担感が少なくし貸してもよいと思える仕組みを構築しています。塩田さんがなぜもみじ通りに目をつけたのかや、若者層や子ども連れが行き交うエリアへと再生させたプロセスはこちらの記事に詳しいです。

f:id:cbwinwin123:20180701113955p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001237929.pdf

(2)交流拠点整備による団地再生(埼玉県鳩山町・鳩山ニュータウン)

昭和40年代から都内などへの通勤者向けの住宅団地として開発された鳩山ニュータウンは現在、高齢化率が45%超え、全体で約3,000世帯の内、空き家が100件を超えていました。鳩山町ではニュータウン一帯を「生涯活躍のまち」として捉え、小学校跡地に福祉・健康複合施設を、空き店舗に交流拠点「鳩山町コミュニティ・マルシェ」(2017年7月開設)を整備するなどしています。

マルシェ内の移住推進センターでは、移住の相談受付や移住推進のためのPR、空家バンクの整備などを行うとともに、地場産品を提供、販売する「まちおこしカフェ」や起業や学 習を支援する「シェア・オフィス」、「マルシェ研修室」などの地域交流のための機能も用意し、 ニュータウンの活性化を目指している。

平成29年度首都圏整備に関する年次報告(要旨)p20 

鳩山町コミュニティ・マルシェの指定管理者は建築設計事務所のRFAです。主宰する藤村龍至さんは若手建築家として存在感があるとともに発信力があり注目です。

f:id:cbwinwin123:20180701121437p:plainhttp://www.mlit.go.jp/common/001237929.pdf

(3)ランドマークだった老朽化ビルのコンバージョン(神奈川県川崎市・複合施設unico)

神奈川県川崎市でかつて簡易宿泊所が軒を連ねた日進町エリアで、地元卸販売会社が旧本社ビルや倉庫をリノベーションし複合施設「unico(ウニコ)」を整備しました。取り壊しも検討されましたがビルの外形を残しつつ店舗や事務所、住居、カフェ、ファブラボ、シェアオフィス、そしてバスケットボールコート!など、多種多様な業種と機能が入り交じっています。

f:id:cbwinwin123:20180701142626p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001237929.pdf

(4)エリア一帯のリノベーションの連鎖(東京都江東区・清澄白河エリア)

かつての水運の中継地点の名残で倉庫や町工場が点在している清澄白河エリアでは、平成7年の都立現代美術館の設立以来、空き家倉庫がギャラリーへと転用されるなど、アートの発信拠点として存在感を増してきました。以前ぼくも実際に行って歩いてきましたが、昭和8年竣工のレトロな集合住宅の1階がおしゃれなカフェ&ギャラリーになっていたり、築50年の風呂無しアパート兼倉庫がカフェや小規模な店舗がいくつも入る複合施設になっていたり、ブルーボトルコーヒーやオールプレスエスプレッソなどが出店しており、そこかしこにリノベーションされた街のコンテンツがありました。

清洲橋や隅田川テラスの川床など居心地のよい水辺空間、アクセスの利便性、庭園・寺社と現代 アートなど古さと新しさの共存等、街のポテンシャルを見出した主体による自然発生的なリノ ベーションと出店の連鎖が活性化をもたらしている。

平成29年度首都圏整備に関する年次報告(要旨)p24

f:id:cbwinwin123:20180701144738p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001237929.pdf

(5)若い世代をターゲットにした住宅の改装(神奈川県座間市・ホシノタニ団地)

小田急電鉄株式会社の老朽化した旧社宅を20〜30代の子育て世帯を新たな入居者層のターゲットとしてリノベーションして「ホシノタニ団地」として生まれ変わっています。カフェ、貸し農園、子育て支援施設、ドッグラン等を併設、かつて閉鎖的だった場所を「まちのひろば」として開放し、住民だけでなく地域に開かれた交流の場所になっています。

f:id:cbwinwin123:20180701145504p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001237929.pdf

多様性を体現する空間づくり

空き店舗所有者や新規出店を希望する方のニーズを汲み取ってこれまでの賃貸借契約にこだわらない柔軟な契約形態を当てはめたもみじ通り、住居やカフェ、シェアオフィスなど多様な機能を備えた空間をつくったunico、これまでの使われ方を一新し子育て世帯にターゲット絞ってリノベーションしたホシノタニ団地…。それぞれの事例から共通して見えてきたのはどれも多様性を体現する空間づくりをしているということです。多世代、多機能、多業種、多業態、そういったキーワードが見えてきました。