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空き家を活用して新しい価値をつくる

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DIY型賃貸借契約を結んでみた(前編)

空き家は主に「賃貸住宅」と「個人住宅」の2種類

 「空き家が増えている」と各種メディアで喧伝されるようになって5年くらい*1が経ちました。最新の住宅・土地統計調査によると2018年における全国の空き家数は848万9千戸(3.6%増)*2、空き家率は13.6%(0.1%増)といずれも過去最高を記録しています。
 しかし、増加している空き家とは何かをもう少し細かく見ていくと問題の所在が明らかになります。空き家の種類は4つあり、そのうち2つは「売却用の住宅」と「二次的住宅」でそれぞれ29万3千戸と38万1千戸であり、両者を足しても空き家全体の1割にも届きません。
 空き家の多くは「賃貸用の住宅」が432万7千戸で約半分、それから「その他の住宅(つまり個人住宅)」*3が約4割と、この2種類が大半を占めています。

4種類ある空き家の数と割合(2018年住宅土地統計調査)

増加が目立つのは”個人住宅”の空き家

 2003年から2018にかけて賃貸住宅の空き家は65万2千戸(432万7千戸−367万5千戸)の増加に対し、個人住宅の空き家は136万9千戸(348万7千戸−211万8千戸)と、空き家数の増加が2倍以上にもなっています。
 つまり、巷で話題になっている空き家問題の要諦とは、不動産市場に出ていない個人住宅が増加していることにあります。個人住宅の空き家の維持管理が適切に行われていなかったり、老朽化が激しかったりすれば近隣へ悪影響を及ぼす脅威となり得ます。そのように状態の悪い住宅ではない場合でも、利活用されていないことによる機会損失が生じており経済効率の観点から見ると大きな社会的損失となります。
 以下のグラフをご覧いただくと賃貸住宅に比べて個人住宅の空き家の増加傾向が見てとれます。 

「賃貸用の住宅」の空き家数の推移(1998年〜2018年)

「その他の住宅(個人住宅」の空き家数の推移(1998年〜2018年)

国土交通省も普及を目指す「DIY型賃貸借契約」とは

 増加傾向が続く個人住宅の賃貸流通に向けて、国土交通省では「DIY型賃貸借契約」の普及に取り組んでいます。賃貸住宅というと借主は改装NG、原状回復は必須、貸主にとっても借主が使用できるように物件を綺麗にしたり設備を整えたりしなければならないと思いがちです。基本的にはそうですが、最近は新しい賃貸借契約の形が出てきています。それが「DIY型賃貸借契約」です。

「DIY型賃貸借」とは
・借主(入居者)の意向を反映して住宅の改修を行うことができる賃貸借契約や賃貸物件です。
・借主自ら改修する場合や専門業者に発注する場合など、工事の実施方法は様々です。 
住宅:DIY型賃貸借に関する契約書式例とガイドブックについて - 国土交通省

 貸主にとっては現状有姿で貸すことによって設備を整えたりする手間がかかりません。借主にとっては改装可能・原状回復不要となるため物件の使用方法の裁量が上がります。ただし、貸主と借主とで基本となる賃貸借契約を結んでいることが前提であり、改装内容について事前申請と承諾、細かい取り決めを定めた合意書を取り交わすことが必要です。 
 貸主と借主との十分な協議、そして信頼関係がより重要になってきます。実際にDIY型賃貸借契約を結びましたので、気づいたことなどを次回記事でお伝えします。

DIY型賃貸借のすすめ(出典:DIY型賃貸借のすすめ

*1:5年前の2015年に空き家対策特別措置法が施行されたことから

*2:2013年の前回調査から29万3千戸の増加

*3:住宅土地統計調査による定義によると「賃貸用の住宅、売却用の住宅、二次的住宅以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など (注:空き家の区分の判断が困難な住宅を含む。)