住生活基本計画の見直し議論がスタート
国や自治体の住宅政策の拠り所となる住生活基本計画(全国計画)の見直し議論が4月からスタートしました。人口減少や高齢化が進む中で増加している空き家の活用や撤去といったことも論点として盛り込まれています。
国土交通省は21日の社会資本整備審議会分科会で、今後10年程度の住宅政策の方向性を示す「住生活基本計画」改定の議論を始めた。人口減少と高齢化が進む中で、増加が問題となっている空き家の活用や、お年寄りが安心して暮らせる住まいづくりが重点課題となる。新計画は来年3月末までの閣議決定を目指す。
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人の住まい方、住宅供給のあり方、都市・地域のあり方、住宅の意義の再検証
議論される論点をもう少し細かく見てみると大きく分けて4つのテーマがあります。1つ目は「人の住まい方」です。二地域居住や移住(UIJターン)、DIY賃貸やシェアハウスなど居住ニーズは多様化していることや子供、若者、高齢者、住宅困窮者などそれぞれのレイヤーで異なる居住ニーズをどう実現していくが問われています。
2点目は「住宅供給のあり方」です。これは既存住宅ストック(つまり中古住宅や空き家)の価値の維持や向上、そして活用をどのように進めるかということが軸になります。空き家関連で言うと”空き家の利活用や除却の促進”、”空き家の利活用・発生防止の観点からの持ち家の賃貸化等の促進”といったことが論点に含まれています。
3点目は「都市・地域のあり方」です。これは都市のコンパクト化や公的賃貸住宅の活用・再編、団地再生の促進など、まちづくりや持続的なコミュニティをどうつくるかといった切り口から議論される論点です。リノベーションスクールや現代版家守も盛り込まれています。
4点目は「住宅の意義の再検証」です。これは住宅すごろくの終焉と人々が住宅に求める機能の変化ということが論点になっています。21世紀に入り、インターネットやテクノロジーが進化した成熟社会における住宅の意義とは何かが議論されると思います。住宅の意義をハック(改変)またはアップデートするということですね。
(出典:国土交通省>社会資本整備審議会住宅宅地分科会(第36回)【資料8】住生活基本計画(全国計画)の見直しにあたっての論点(案) )
中古住宅の流通促進と都市計画をセットで
4/21に行われた会議では中古住宅の流通促進のために必要な施策は何か、郊外の空き家をどう活用するかは都市計画と絡めて考える必要があるなどの意見が出ました。
「ストック重視の方向性は間違っていないが、いいストックを残すという視点に立てば、資産価値の低下を防ぐ、あるいは中古住宅流通の一層の活性化が不可欠になる」「空き家の利活用と言葉で言うのは簡単だが、郊外に立地する戸建てはほとんど利活用できない。都市計画の問題も含めて考えていく必要がある」といった指摘もあった。
この会議の会長は「都市の空閑地・空き家を考える」の著者である浅見泰司東大大学院教授。会議での議論が、空き家の活用して”まちのコンテンツ”をつくるといった成果につながっていくといいなと思います。
「住宅数の数量管理」については一切触れられていない
住宅生活基本計画の見直し議論の中では空き家の活用など重要なテーマが含まれていますが、新築住宅を造り過ぎという問題について特段アプローチしていかないつもりのようです。これに対しかねてから”住宅の総量規制”といった取組の必要性を訴えている不動産コンサルタントの長嶋修さんが強い懸念を示しています。
<参照記事>
空き家の活用や撤去を進めるのと同時に、将来の人口・世帯予測などを踏まえてエリアによって新築住宅建設を抑制したり、住宅総量目標を定める必要がある、という話です。
社会資本整備審議会住宅宅地分科会(国交省)において、今後の住宅市場に関し、「住生活基本計画の見直し」といった非常に重要な議論が行われているが、ここにおける議論に、筆者は強い懸念を持っている。というのも、4月21日開催された第一回分科会において配布された一枚のペーパー、「住生活基本計画(全国計画)の見直しにあたっての論点(案)」には、「住宅の数量管理」について一切触れられていない。
しかし一方で、中古住宅・リフォーム市場の活性化に向けた取組は着実に前進していますので今後の展開が注目です。