マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

MENU

鉄道会社が進める”住み替え”の促進(京王電鉄)

広い持ち家を持て余す高齢世帯と広さや間取りに対する居住ニーズが高い子育て世帯

 

まずは国土交通省の審議会の会議資料から。「住宅の広さや間取り」に対する不満は高齢世帯に比べ子育て世帯が大きく、一方で高齢者が住宅で困っていることのうち「住宅が広すぎて管理が大変」という回答が増加傾向にあります。このデータからわかることは広い持ち家を持て余す高齢世帯と広さ間取りに対する居住ニーズが高い子育て世帯とで双方のニーズのミスマッチが起きていることです。

 

f:id:cbwinwin123:20150504120926p:plain

(画像引用元:国土交通省>社会資本整備審議会住宅宅地分科会(第36回)【資料7】我が国の住生活をめぐる状況(PDF)p40

 

鉄道会社が進める”住み替え”の促進

 

そこで、高度成長期に駅から少し離れた戸建て住宅に子育て世帯を呼び込み、沿線住民を増やしてきた鉄道会社が人口減少・高齢化・空き家増加といった社会背景に合った新しい取組をスタートさせています。

 

具体的には、介護や医療などの施設やサービスが整っており買い物にも便利な駅前や沿線に高齢者住宅をつくり、高齢世帯の住み替えを促進します。そして高齢世帯が住んでいた住宅には子育て世帯が新しく入居します。これにより住宅ストックを活用しつつ高齢世帯と子育て世帯の居住ニーズを満たすことが可能になります。

 

京王電鉄は沿線に高齢者向け集合住宅を整備する。まず、東京都多摩市に2棟を建設する。主に周辺在住の高齢者の入居を想定しており、入居者が住んでいた自宅には子育て世代や若者などの入居を促す仕組みを設ける。高齢化の進展に対応した住環境を整えるとともに、若い世代も呼び込むことで、沿線の活性化を進める。

www.nikkei.com 

 

f:id:cbwinwin123:20150504125652p:plain

画像引用元

 

聖蹟桜ケ丘駅前にサ高住の新設、空き家になった住宅の売却や賃貸業務請け負う

 

新宿駅から京王線の特急で約30分の聖蹟桜ケ丘駅(多摩市)から急な坂道や階段も続く道を歩くこと10分にある「桜ケ丘住宅地」では住民の3人に1人が65歳以上で、急な坂道が生活上のネックになっています。そこで大規模な商業施設もある駅前に「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)をつくることで住み替えを促すわけですね。

 

同社では、サ高住に移って空き家になった家の売却や賃貸業務も請け負う予定だ。空き家をリフォームし、そこに若い世代を呼び込み、沿線の活性化につなげる構想もある。

沿線の住民からは、サ高住への問い合わせがすでにあるといい、市内の60代男性は「駅前で買い物をすれば何でもそろう。安心して暮らせるかもしれない」と、終(つい)のすみかの候補として期待を寄せる。同社は、今回のケースで高齢者のニーズを見極め、別の京王線駅の再開発の参考にするという。

digital.asahi.com

 

定住志向から住み替え志向へ

 

人口はこれ以上増えないし、住宅ストックも余るほどあります。現に部屋を持て余している高齢世帯がいるわけです。持ち家か賃貸かということよりも”住み替えのしやすさ”がこれからますます必要になってくると思います。たとえ住宅を買ったとしてもライフスタイルやライフステージに応じて気軽に住み替えできるような住宅市場をつくっていくことが重要です。

 

いまの30代や20代は親世代がマイホーム幻想に捉われて広い持ち家を買って、子どもが独立した後に持て余しているのを見ているから、家を買うにしても住み替えというのが前提にならざるを得ないだろうし、そうなると不動産というものを"買う""借りる"の関係性も変わっていく。持ち家幻想というものも単純になくなるというのではなくて、人間と住まいとの関係とか、住まいを財産形成の中でどう位置づけるかというところが、住み替えを前提にかわっていくと思うんですよね。なので、住宅購買が単純に少なくなるとは思わないんだけど、感覚は変わっていくでしょうね。

news.mynavi.jp