"その街の文化と歴史を掘り起こす"岡山県問屋町のまちのコンテンツづくり(株式会社レイデックス明石卓巳さん)
岡山県問屋町で”アンカーを打つ”明石卓巳さんのお話
現在、リノベーション住宅推進協議会主催で「リノベーションEXPO(首都圏)」というイベントが連日行われています。詳しくはこちら。
先週の土曜日は「リノベーション×まちづくり=その未来って?」というテーマのトークセッションを聞きに行きました。その中で、岡山問屋町というもともと繊維問屋街として栄えたエリアで増えてきた空き店舗を解消し、まちのコンテンツを次々と作っている明石卓巳さん(REDEX)のお話と取組をまとめます。
印象的だったのが「アンカーを打つ」という言葉です。つまり、空き店舗になってしまった場所に”面白い人を呼び込み、まちのコンテンツを作る”ことです。
現在は繊維問屋とお洒落なカフェや飲食店、衣料・雑貨店などが同居する街になっています。地元タウン誌などにも頻繁に取り上げられるほどに。チェーン店は少なく個性を活かした個人商店が中心だそうです。
約13haの地区には約50の卸売業者のオフィスと若手経営者による60以上の小売店が入居し、倉庫などを改造した店舗は現在も増加傾向にある。一帯は新しい商業スポットとして注目され、地元タウン情報誌や観光ガイドブック等のマスメディアにも頻繁に取り上げられている。
”個性的なカフェまとめ”もありました。
岡山県の【問屋町】にはなぜ、個性的なカフェが多いのか? - NAVER まとめ
”問屋町カフェマップ”もあります。
カフェ以外にも飲食店、雑貨店、洋服店、エステ、美容室など58店舗が集まっています。「問屋町テナント会」というネットワークもあるそうで、エリア一帯でまちを盛り上げて行こうという感じがします。
赤い点線で囲まれたエリアが「問屋町」。岡山市北区の南西部、JR北長瀬駅から南へ約800mに位置。繊維問屋と飲食店や衣料・雑貨店が同居する街。約13haの地区。
割安な家賃と駐車規制の緩和で出店ラッシュ
問屋町はかつて岡山駅前などにあった繊維関係の卸売業者が昭和43年に移転し「岡山県おろしセンター」として街開きした沿革があります。その後、昭和63年に区画整理が完了し一帯は近代的な街並みになるも、その間に大型店を中心に小売店が卸売業者を通さず、メーカー直接仕入れの流通形態へと変化。その結果、個人商店などの取引先減少により廃業・撤退する卸売業者が増えたことで問屋町は衰退していったそうです。
そしてその後、空き店舗へ卸売り業者以外の入居を可能にしたり、割安な家賃、駐車規制が少ない、などが追い風となり出店ラッシュにつながりました。
この状況を打開するため、平成12年5月に卸センターが定款を変更。卸売業者以外の入居が可能となり、割安な家賃と駐車規制が少ないことで出店ラッシュにつながった。また、問屋町近くを南北に走る国道180号岡山西バイパスの開通と、周辺でマンションや住宅団地の開発が活発になり人口が増加したことなども後押しとなっている。
「リノベーション」という言葉は使わなかった
問屋町の再生に取り組んできた明石さんは当初、「リノベーション」という言葉は使わないようにしていたそうです。大事なのは「その街が持っている魅力や歴史・文化などを掘り起こして増幅させる」ことでまちのコンテンツをつくっていくこと。リノベーションという曖昧な言葉ではなく具体的な取組内容を明示されています。「リノベーション」はまちの再生の手段であって目的ではない、ということですね。
文化と歴史を大切にした理念ある街作りこそがリノベーションだ! - 活動
また、古くてレトロな味わいを活かす、という発想も「その街固有の魅力」と言えます。
リノベーションとブランディングについて古いものと取り替えるにではなくて、古くて味わいのあるものを活かして価値を引き出していくそれが、リノベーションの醍醐味
問屋町がなぜ人気か?それは、レトロな雰囲気、狭いエリアにたくさんの店が集積している、おしゃれなカフェが多い、駐車スペースが多い、などが挙げられます。
問屋町人気の理由を考えてみました。
・レトロな問屋街が逆に新しい
・狭いエリア内にたくさんの店があるため歩いてまわれる
・おされカフェが多い。しかも、深夜まで営業している。
・駐車スペースがある(良いことではないが路上駐車が多い。ただし、休日は路駐も難しい)
人や産業が集まってきた次の課題へ
お店がたくさん出店し、働く人、お客さんが増え、空き店舗も解消。問屋町のリノベーションまちづくりは誰が見ても成功しています。しかし持続可能なまちづくりを考えると、次の段階の課題もあるそうです。人気が高まったことで家賃が上昇、自動車で訪れるお客さんの駐車マナーの問題などの課題が出ています。この状態は90年代後半から2000年代前半にかけての「裏原宿」のブランドの盛り上がりと衰退に似ているかもしれません。個性的なファッションのお店が多数出店して「裏原宿」というブランドを生み出しましたが、人気が高まって多数の店舗が出店し家賃が上がり、テナントがどんどん違うエリアに移転していくジェントリフィケーションという現象です。
テナント出店の呼び水となった要因に広い道路に駐車禁止の規制が少なく、市中心部の表町や岡山駅前に比べて割安な家賃などがある。しかし、最近では市中心部より半額位だった家賃は人気とともに上昇傾向で差はそれほどなくなり、自動車で訪れる買い物客の増加に伴い駐車マナーに対する苦情も増えている。また、自由な気風の問屋町の小売店には仲間意識はあるが、問題や課題に対応する連携組織がないため、卸センターの業者が新規出店の小売店を加えた新組織設立を検討している。
関連記事はこちら。
”伊賀の魅力は忍者だけじゃない”地元の埋もれた魅力を発掘して企画を組み立てる三重県伊賀市のリ・ブランディング(株式会社サルトコラボレイティブ加藤寛之さん) - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ
「リノベーションEXPO首都圏」(10/25〜11/3)で多くのことを学ぶ - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ