空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

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渋谷セカンドステージvol.20「学校」はいかにアップデートされるべきかレポート

 「渋谷セカンドステージ」では、渋谷から新しい文化を発信することをテーマに様々なトークショーを開催しています。今回は、教育の未来がテーマです。様々なゲストをお呼びして「今、学校教育の現場に必要なものは何か」と「今、学校教育の外に必要なものは何か」という2つのテーマについて議論しました。

出演者:
小幡和輝(#不登校は不幸じゃない 発起人)
駒崎弘樹(認定NPO法人フローレンス代表理事)
藤川大祐(千葉大学教育学部教授)
若新雄純(㈱NEWYOUTH代表、慶應義塾大学特任准教授など)
宇野常寛(評論家/批評誌「PLANETS」編集長)
【司会】得能絵理子

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「今、学校教育の現場に必要なものは何か」

 1つ目のテーマは「今、学校教育の現場に必要なものは何か」。まずは若新さんが「先生同士のケンカ」を挙げました。大人同士で考えていることは当然違うように先生同士も考え方に違いがあるはずなのに、子どもの前では違いをあまり出さないようにしている、と若新さんは指摘します。一方、親戚のおじさん同士などはお互いの意見をぶつけ合ったりします。先生同士が堂々と意見の違いを言い合い、それを子どもに見せていくことが重要です。

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 これに対して「大賛成」と藤川さんは応えます。今の学校は9割くらいの子どもに適した運営がなされやすい。そうなると転校生やLGBT、発達障害など特徴がある子どもたちは辛い思いをすることになりがちです。学校は色々な人がいるから楽しい、そして課題も見えてくる、という場にできればかなりマシになるんじゃないか、と藤川さんはおっしゃいます。

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 不登校を肯定したい、と小幡さんはおっしゃいます。不登校が問題なのではなくて不登校になった後の時間をどう過ごすのかが重要です。インターネットが無かった頃は学校でしか学べないことや学校でしかできないことは確かに多かった。けれども今はその役割がどんどん減ってきています。リクルートのスタディサプリなどYouTubeで検索すれば面白い授業はたくさん見つかりますし、コミュニティもSNSを使えばいくらでもつながれます。学校の役割を勉強とコミュニティの2つに分けると、勉強もコミュニティも学校じゃなくてもできるようになってきているんじゃないか、と小幡さんは指摘します。1対大勢の授業しかり、アクティブラーニングもまだまだ進んでいないし、そもそも学校のクオリティってそんなに高いのか、と疑問を投げかけます。

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 小幡さんの著書『学校は行かなくてもいい ――親子で読みたい「正しい不登校のやり方」』を読んで、「学校に行きたくない理由があるわけではなく、そもそも学校に行く理由がない」という発言をしている不登校の方の事例がとても印象的だったと得能さんはおっしゃいます。全国の学校を回っている中で、頑張っている先生や学校があるのもわかっているけれど、中にはある種画一的な教育に馴染めない子もいる。そういったときに学校に行く理由がないと思う人もいます。

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 教育と福祉は融合するべき、とおっしゃるのは駒崎さんです。例えば発達障害を持っている子どもの場合、味覚がすごく強かったり、ある特定の味にすごく拒否反応が出てしまったりします。それは特性であり変えられるものではない。そういった福祉の知識があれば給食を無理矢理にでも残さず食べさせる、という指導は起こらないはずです。教育と福祉との間には崖がある、と駒崎さんは強く問題提起します。加えて、少数派を起点とする福祉の考え方をどう教育に入れ込んでいくかが課題ともおっしゃいます。

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 「さくらももこイデオロギーの打破」と力強く掲げたのは宇野さんです。人気アニメ「ちびまる子ちゃん」の登場人物であるスークルカースト最上位のイケメンコンビ大野・杉山くんとスクールカースト最底辺の長沢・藤木くん。「ちびまる子ちゃん」は基本的に大野・杉山に媚び、長沢・藤木をヘイトすることによって「さくらももこ=私=普通の人」は超安泰でありマジョリティの側であるというイデオロギーに貫かれている、と宇野さんは批評します。

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「今、学校教育の外に必要なものは何か」

 2つ目のテーマは「今、学校教育の外に必要なものは何か」。若新さんが提示するのは「大人のトモダチ」です。街中で普通に商売している大人は中高生にとってすごく面白い存在だ、と若新さんはおっしゃいます。普段子どもが関わっている大人は親か先生に偏りがちです。一方で遊び相手としての大人はあまりそういった関わり方ではありません。若新さんは高校生の頃に街中で仲良くなった携帯ショップのお兄さんから影響を受け、心強かったとおっしゃいます。親でも先生でもない直接は関係ない大人と出会ってなんとなく遊ぶ場をどう作るか。誘拐などの犯罪を防ぐためにも政策的なアプローチが重要になってきます。

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 学校以外で子どもが大人と関われて学べる場がもっともっと必要だ、と指摘する藤川さんが提示するのは「創造的な実践」。藤川さんがメンバーとして関わる子どもたちが起業を学ぶ実践型プログラムである「西千葉子ども起業塾」では、毎年30人くらいの子どもが集まり地域の商店街と取引する会社を作り中小企業の社長さんたちからアドバイスをもらうという活動を10年くらいやっています。
 一方で困っているのが中学生になると部活や塾で忙しくなり、子どもが起業塾へ来なくなるという問題です。部活行かなくていいから起業塾来て、と藤川さん。ちなみに藤川さんが校長を務める千葉大学教育学部附属中学校では部活動日数は平日3日・土日1日まで・夏休みは12日間までというルールを設定し、子どもも先生も部活以外のことにより時間を使えるようにしているそうです。

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 部活動日数の縮減などもそうだし個々の改革は、具体的に学校へ「働きかけ」ていくことで実現できる、と駒崎さんはおっしゃいます。小学生の娘さんが真冬に長距離走の練習をする際の服装が半袖短パンで上着を来ちゃダメと指導されていることに疑問を持った駒崎さんは、担任の先生を通して校長先生へ電話します。真冬にもかかわらず薄着で長距離走の練習をさせていることの意図を聞いたところ、「特に意図はないです」「至急話し合います」となり結局はトレーナーを着て構わないことになりました。
 後日、親の集まりのときにこの件について話したら、親もみんな「そういうものだと思っていた」と言います。ルールは従うものではなく変えられるものであるということを大人が身を呈して証明していかないといけない、と駒崎さんはおっしゃいます。

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 小幡さんは「お金がなくても受けられる学び」をどう確保していくかの重要性を指摘します。現状フリースクールはざっくり月に2万円くらいかかかります。これは結構高いです。不登校の子どもは全国に14万人くらいいますが割合で言うと1、2%ほど。ターゲットは少ないけれど、場所を借りて人を雇うなどやっていることはかなり大変です。補助金などの支援もあまりなく、経済的に厳しいシングルマザーの子どもが不登校になったときに学びをどう担保するのか悩ましい問題です。
 本当は学校への補助ではなくて子ども一人一人への補助であるべき、と駒崎さん。一つの事例として渋谷区が2019年度から政策として導入することが決まった「スタディクーポン」が紹介されました。

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 「学校に期待したくなる大人が減る」と掲げたのは宇野さん。今までの公教育はマジョリティのためのもので、そういった古い世界を信じている人間が残念ながら公教育に関わりたがるという現実もある。学校の役割は社会から縮減するしかない、究極的には読み書きそろばんさえ教えればいい、学校の役割は究極的には「ダメな親に当たったときのキャンセル装置」であるべき、と宇野さんは主張します。経済的に困窮している、ネグレクトされている、暴力を受けているなど、家庭環境が厳しくても公教育が最低限しっかりしていていればそれでいいという考え方です。

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 このトークショーの模様は少しだけYouTubeで視聴できます。 

www.youtube.com 全編をご覧になりたい方はPLANETSの運営するオンラインサロン「PLANETS CLUB」にて動画を公開しています。

構成:舟橋拓 写真:岡田久輝