今必要なソーシャルグッド
- 臨時休校要請は事実上の命令に近い
- 冷静かつ柔軟な判断を下した千葉市、つくば市
- 一斉休校に根拠や効果はあるのか?
- 子どもから大人に感染したと話す人はいなかった
- 一斉休校で困る子ども、共働き世帯、ひとり親、非正規雇用者…
- ソーシャルグッドな動き
臨時休校要請は事実上の命令に近い
散々メディアで伝えられていますが、政府は新型コロナウイルスの感染拡大のため3/2〜春休みまで、全国すべての小中高校などに臨時休校を要請しました。子どもの健康や安全を第一に考えた結果だそうです。
「何よりも、子どもたちの健康・安全を第一に考え、多くの子どもたちや教員が日常的に長時間集まることによる大規模な感染リスクにあらかじめ備える」と述べ、来月2日から全国すべての小学校・中学校、それに高校と特別支援学校について、春休みに入るまで臨時休校とするよう要請する考えを示しました。
全国の小中高 臨時休校要請へ 来月2日~春休みまで 首相 | NHKニュース
2000年に施行された地方分権一括法により国と地方自治体は、上下・主従関係から対応・協力関係へと転換しました。事前に臨時の立法がなされてたわけではなく今回の「要請」に法的拘束力はありませんが、「自分たちだけしないという判断は現実的にはできない」と千葉市の熊谷市長がおっしゃるように事実上の命令に近いです。
県内や市内で感染が確認されていないなどにより休校しない、共働き世代や企業などへの影響が大きいとして判断を保留、3/2からではなく3日や4日から休校する、休校するけれど共働き世帯が多いことを踏まえ休校期間中に学校を開放する、休校した上で普段、学童保育を利用していなくても家庭の状況に応じて学校で預かる、など各地で臨時休校の状況は様々です。
冷静かつ柔軟な判断を下した千葉市、つくば市
中でも千葉市長とつくば市長の判断が冷静かつ柔軟です。まず千葉市は事実上の命令に近い休校要請に対し、現場の実情に最大限合わせた対応策となっています。春休みまでとする約3週間の政府要請休校期間の疫学的根拠を確認するまでは休校期間を2週間としたこと、小学1、2年生で保護者が対応できない場合は感染予防策を取り学校で受け入れ、など。
学校休校について方針を固めました。3月3日(火)より市内一斉休校とします(市立高校は4日から)。2日(月)に休校中の学習・生活指導を丁寧に行う等、混乱を回避します。
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) February 28, 2020
1・2年生で保護者がどうしても対応できない場合は学校で自習。疫学的知見に基づき、各教室少人数に分散して予防に努めます。
千葉市の市立小中学校の休校期間は16日(月)までで確定します。文科省は各自治体で柔軟な判断をとのこと。
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) February 28, 2020
政府方針をできる限り現場の現実に近づけるべく、市教委と協議して方針確定しましたが、教職員の皆さまには長期休校に伴う学習・生活指導の準備、休校中の対応などでご労苦をおかけします。
次につくば市は3/6から24までを臨時急行としつつも登校は可能とし、希望者には給食も提供するとしています(つくば市のプレスリリース)。
【新型コロナウイルスへの学校の対応について】
— 五十嵐 立青 (@igarashitatsuo) February 28, 2020
昨夜発表された学校の全国一斉の休校要請について、緊急で協議をしつくば市の方針を決めました。休校は3/6から、登校は可能、給食は希望者としました。感染防止策を講じながら、休めない保護者や医療環境悪化を考慮しできるかぎりの対応をしていきます。 pic.twitter.com/AlDHgaUcSn
こういった緊急事態へ独自の有効な対策が打てる首長がいることは住民も中で働く職員も心強いと思います。
一斉休校に根拠や効果はあるのか?
そもそも一斉休校に根拠や効果はあるのかについて、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんが疑問を投げかけています。
ここで見ても分かる通り、0から9歳までの死亡者数は0人です。
主にお亡くなりになっているのは、60歳以上の高齢者ということが分かります。
高齢者の感染対策だったら、高齢者が行くところを「先に」対応するのが筋でしょう。
何でいきなり小学校・中学校・高校なんだよ、と。
「子どもが媒介するリスクへの対応策」と言うなら、大人同士が直接媒介する満員電車対策と職場の一斉リモートワークが先でしょう。
全く整合性が取れていません。
政府は根拠の無い「一斉休校」を撤回してください | 親子の課題を解決する社会起業家│駒崎弘樹公式サイト
中国疾病管理予防センター(CCDC)の調査によると9歳までの子どもに死者はいない、40歳未満の致死率は0.2%、致死率は40代が0.4%、50代が1.3%、60代が3.6%、70代が8%と、年齢層が上がるにつれ徐々に上昇、などのデータが明らかになっています。
つまり、子どもではなく高齢者の方に対する感染予防策を打つのが先ということです。具体的には満員電車対策や職場の一斉リモートワーク実施などです。
そして、今回の一斉休校要請は専門家の意見を踏まえていない政治判断であることがわかっています。
NHKの報道によると、政府の新型コロナウイルス対策の専門家会議の委員で、感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「専門家会議で議論した方針ではなく、感染症対策として適切かどうか一切相談なく、政治判断として決められたものだ。判断の理由を国民に説明すべきだ」と仰っています。
政府は根拠の無い「一斉休校」を撤回してください | 親子の課題を解決する社会起業家│駒崎弘樹公式サイト
科学的知見を無視し一斉休校要請の政策形成の過程や決定の根拠、効果をオープンにすることなく政治判断してしまうこと、その判断が浸透してしまうことに恐ろしさを感じます。
政府はどういう根拠で、今のタイミングと決めて、いつまでやって、何をもってこれが成功したと判定するのか、説明責任があるのではないでしょうか。
一斉休校にした効果はどのくらい持続するかわかりません。3月いっぱい休校にしたとしても、また4月や5月に散発的な流行が起きたら、またやるつもりなのでしょうか?
全国一斉休校の速報に専門家も「ひっくり返りそうになった」 新型コロナ感染拡大防止のためにどこまですべきか?
なぜ全校なのか、なぜ春休みまでなのか、本当に効果的なのか、など疑問は尽きません。
休校を正当化するならば、その方策がもたらすゴールをはっきりさせる必要があります。休校で感染をゼロにするとか、1日何人まで減らすとか。そういう目標設定がちゃんとあり、その背後に根拠があれば、事後的に政策の成否が分かります。それなしに、ただ「やる」と言われても、その成否は事後的に判然としません。
一斉休校は「科学より政治」の悪い例 クルーズ船対応の失敗を告発した岩田教授に聞く - 毎日新聞
子どもから大人に感染したと話す人はいなかった
WHO調査報告書によると「調査チームが聞き取りを行った範囲では、子どもから大人に感染したと話す人はいなかったと指摘」ですので、子どもがウイルスを媒介するというケースは限りなく可能性が低いです。
WHO調査報告書を見ても、「子どもから大人に感染したと話す人はいなかった」のだから、壮大に無意味。
— 駒崎弘樹 ( Hiroki Komazaki )@病児保育入会キャンペーン中! (@Hiroki_Komazaki) March 1, 2020
「子どもを守る」どころか「子どもの日常を壊す」ことをしてしまったのだ。
とっとと無意味な一斉休校を短縮し、春休みに学校を復活させるべき。https://t.co/FOilym0IcW
一斉休校で困る子ども、共働き世帯、ひとり親、非正規雇用者…
共働きの医療、福祉、保育等の労働者減、ひとり親や非正規雇用者の収入減など、一斉休校で生活や仕事、学習など様々な側面で影響が及びます。
ソーシャルグッドな動き
学童保育のキャパシティ増強と給食提供、仕事に行けなくなった非正規雇用の親達の所得補償、図書館を子ども向けに開放、など駒崎さんは政府に対して要望しています。
一方で民間企業やNPOなどではソーシャルグッドな動きが続々生まれています。子育て世帯をサポートする緊急サービスまとめには預かりサービス、民間学童、医師への相談サービス、食事サービス、学習サービスなどが紹介されています。情報は随時更新されて行きます。
(出典:新型コロナウイルスによる臨時休校でお困りの子育て世帯をサポートする緊急サービスまとめ|kidsweekendブログ)
小中高生対象に弁当宅食のサービスを始めたのワタミです。ICT教育各社も学習支援サービスを無料公開や無償提供しています。
せやろがいおじさんがおっしゃるようにこのピンチを逆手にとってリモートワークやテレワークを根付かせて通勤負担の軽減や業務の効率化、咳エチケットや体調悪いときは迷わず休む休ませるといった感染症対策の習慣化など、いかにこの逆境をポジティブに変えていくかを考え実践することだけが求められています。