2014年3月15日(土)、下北沢駅から徒歩5分にある北沢タウンホールにて「空き家活用フォーラム〜世田谷らしい空き家等の地域貢献活用にむけて〜」に参加してきました。今日は後編を書きます。前編では世田谷区内の空き家活用事例を3つ紹介しました。後編では、世田谷区外の空き家活用事例2つとパネルディスカッションの模様をご紹介します。
世田谷区外からの空き家活用事例紹介(2つ)
(1)西国図書室(国分寺市)
テーマ:本が旅する西国図書館 1冊の本からはじまるまち暮らし
西国図書室 - 東京都国分寺市 - ローカルビジネス | Facebook
これは元洋裁店兼住居だった建物に夫婦が引っ越し、そこの1階を使って「図書室」にしてしまった事例です。営業日は週1回日曜日だけ。夫妻が室長と副室長。休日のみ自宅を「住み開く」ことで図書室を運営しているそうです。
本を通じ、心の交流を育む「街の図書室」| 家を開く | SUUMO
「住み開く」という言葉、聞き慣れないですねー。これは”家を無理の無い程度に何らかの方法でまちに開く”ということです。ではなぜ自宅をまちや地域に「住み開く」のか?それはご夫婦が結婚以前からシェアハウスに住んでいたそうで「家は閉じていないほうがよい。何らかまちとつながっていたほうがよい。」という発想をお持ちだからということです。
さらに、夫婦ともに本好きなので本棚に本を並べるうちに図書室運営のアイデアが出てきたそう。西国図書室のコンセプトは「本が旅する」。これは本の持ち主と本を読んだ人とをつなぐ仕組みです。
まず自分のお気に入りの本、人にも読んでもらいたいお勧めの本を持ち寄り、自分が持ち寄った本と同じ数の本を借りることができる。自分が持ち寄った本は登録をし、「本籍証」というものを書く。本籍証には持ち主の名前、旅の期間(本を西国図書室に預ける期間で、期間終了後は持ち主に返却される)、本とのなれそめ、本のお勧めポイント等を記入する。これと、読んだ人が持ち主へのコメントを書く「旅の記録」の2枚の紙を、本の好きな所に貼って本の旅立ち準備が完了する。次に本棚に並んだ本を手に取り、本籍証や旅の記録も参考にしながら借りる本を決め、図書カードに記録してもらったらその本の旅がはじまる。
このようにして旅の準備ができた本は今年の2月時点で200冊を越え、累計で63冊の本が旅に出た。旅を終えた本は、いろいろな人の思いが重なり、一層特別な本として持ち主の元へ戻ってくる仕組みだ。
本好きなぼくとしては本の持ち主のコメントなど参考になるし是非利用したい。一定期間、自分の本を図書室に旅をさせる。そうして地域の人が面白い本との出会いや発見を得ることができる素敵な空き家活用事例です。
(2)高島平団地空家・空き地活用〜団地内分散(点在)型モデル+コミュニティ棟計画〜」(板橋区)
テーマ:コミュニティの拠点づくり〜空き室活用による団地再生〜
高島平団地の空室・空き地をサービス付き高齢者向け住宅、ディサービスや温浴施設などを備えたコミュニティ空間に再生したコミュニティネットの事例。団地では世代交代が進まず高齢化が大きな課題です。孤独死する高齢者がニュースになることも多いです。
コミュニティネットは、高島平団地の空き室の一部を活用して高齢者向けの住宅にするプロジェクトを始めています。(12月に開設予定)借り手のない部屋をバリアフリーに改修し、店舗をスタッフの事務所にして、各戸を見回り、生活サポートをします。
空き家を活用して高齢者の”ケア付き”住宅にする。今後ますます進む超高齢社会においてニーズのある空き家活用サービスではないでしょうか。
プレゼンターと世田谷区長とのパネルディスカッション
5つの事例のプレゼンターの方々と世田谷区長とのパネルディスカッション。テーマは「空き家等の地域貢献活用のこれから」です。空き家活用について行政の役割について話がありました。
「行政は空き家等の活用の阻害要因を取り除くのが役目で、活用自体は民間のやることではないか」というパネルディスカッションのコーディネーターを務めた小林秀樹教授の言葉にも共感した。例えばシェアハウスは現行の建築基準法的にはグレーゾーンにあり、国土交通省は寄宿舎という対応を助言(空き家活用フォーラム後に寄宿舎基準を撤回)しているが、小林教授は「公共が条例等で規制、対応すれば建築基準法に抵触しなくて済む。シェアハウス、グループホームといった使い方も可としなければ、一戸建ての活用は難しくなる」とも。
世田谷区空き家活用フォーラムに見る、空き家等の地域貢献活用のこれから | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】
各種法令や条例など空き家活用に妨げとなりうるものを取り除くことがまず行政に必要なことです。
一方で活用については必ずしも行政がやる必要はない。たとえば、現在、自治体に寄贈された住宅は世田谷区のように、公共性の高い施設に使われるケースが大半だ。その場合、建物自体は費用を払わずに取得しているが、維持、利用に関しては税金が投入される。だが、これを民間に貸し出すなどして利用料が得られるようにしたらどうだろう。税金を投入しなくていい分、もっと活用例が増えると思うが、難しいのだろうか。増え続ける空き家等を考えると、柔軟な対応が望まれるところだ。
世田谷区空き家活用フォーラムに見る、空き家等の地域貢献活用のこれから | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】
継続的に空き家活用を進めていくためには、自立したビジネスモデルの構築が必要ということだと思います。
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「空き家活用フォーラム〜世田谷らしい空き家等の地域貢献活用に向けて〜2014年3月15日」に行ってきました(前編) - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ