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空き家を活用して新しい価値をつくる

経済重視の住宅政策からセーフティネットとしての住宅政策への転換が急務(「市民が考える若者の住宅問題」シンポジウムレポートpart1)

貧困問題は雇用と福祉の領域で扱われてきた

 

今日は新宿の損保ジャパン日本興亜本社ビルで住宅政策提案・検討委員会/認定NPO法人ビッグイシュー基金主催による「若者の住宅問題をテーマにしたシンポジウム」に参加しました。真冬の冷たい雨の中にもかかわらず参加者は200名超といった感じでした。

 

最初にビッグイシュー代表の佐野章二さんから挨拶と今回のシンポジウムの概要について。「国交省系、厚労省系の住宅政策は有っても日本全体の住宅政策は無い」とおっしゃるように、雇用や福祉といった観点からの住宅政策、または景気対策としての住宅建設促進策、住宅取得促進策がメインだったと思います。

 

現在全国に空き家が820万戸あります。そのうち半分以上(429.2万戸)は賃貸住宅(民間借家)です。賃貸住宅の空き家率は18.9%。単純計算で5戸に1戸の賃貸住宅が空き家というのが現状です。しかし一方で年収200万円未満で未婚の若者の4人3人が低賃金のために実家から独立出来ないという調査結果が出ています。

 

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第1部は神戸大学大学院教授の平山洋介委員長から「若者・未婚・低所得層の住宅事情について」ー調査結果の報告と分析ー。

 

誰もが結婚をして家を買う時代は終わった

 

生涯未婚率の上昇、核家族化や単身世帯の増加、非正規雇用の増加と雇用の流動性の高まり、住宅余剰の発生と不十分な住宅保障などなど、戦後から高度成長期、そしてバブル期にかけて”当たり前”と思われてきた価値観は急速に変化しています。誰もが結婚する、子どもを生む、正社員になって定年まで同じ会社で勤め上げる、初めは”仮住まい”の賃貸に住んで30年住宅ローン組んで持家を購入する住宅すごろくよろしく、と。このような”当たり前”は既に当たり前ではなくなってきています

参考記事1:みんなが結婚して家を買う時代は既に終わった、話はそれからだ - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

参考記事2:「みんなが結婚して、みんなが家を買う時代」はすでに終わった:データで見る日本の貧困な住宅政策 : BIG ISSUE ONLINE

 

つまりこれまでの住宅政策は「中間層/家族/持家の重視」で、「低所得/単身/借家の軽視」であると平山先生はおっしゃいます。2015年度税制改正大綱において住宅ローン減税の延長住宅購入を促進する若い世代への資産移転を促す税制改正フラット35のローン金利が過去最低更新、と住宅取得促進策は相変わらず枚挙にいとまがない状況です。

 

経済重視の住宅政策からセーフティネットとしての住宅政策への転換が必要

 

若者の住宅確保支援のプレイヤーとして政府、家族、企業とそれぞれいるわけですが市場で住宅を買ったり借りたりできない場合、住宅保障を担うプレイヤーはどこなのか。これに関して平山さんは「政府ではなく家族の持家や企業の家賃補助・社宅が助けている」とおっしゃいます。であれば家族にも企業にも属していない人は住宅困窮に陥ってしまうという構図が問題です。”古き良き三丁目の夕日”的なOSをアップデートし家族や企業にも属さない人たちを包み込む持続可能な住宅政策が今まさに求められています。

 

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