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中古住宅になったとたんに価値が下がる!中古住宅を適切に評価できない問題「解決!空き家問題 中川寛子著」読書メモ(3)

今回は中川寛子さんの「解決!空き家問題(ちくま新書)」の読書メモの第3回目です。過去記事はこちら。「第1章 いずれは3軒に1軒が空き家?ー現状と発生のメカニズム」(p.27-36)をまとめます。

住宅の原価が低すぎる

質の高いものはなんにしろ、大事に使いますよね。住宅も質が高ければ、長く大事に使い続けようと思うものです。しかし、日本の住宅の質に問題があると指摘しています。全国展開しているハウスメーカーやデベロッパーの建てる住宅は、宣伝広告費など、直接住宅の品質に関わらない経費が多く含まれるそうです。地場の工務店が地元で家を建てるアメリカでは、地域の顔の見える範囲で作っているので広告宣伝費や余分な人件費は不要で、建物の原価は80%ほどです。しかし日本では60%になるという。

新築マンションも一度買われたら、その時点で2割〜3割は安くなる。車その他の商品も同様に安くはなるが、元の値段とその割合を考えると、住宅の下がりっぷりは半端なく大きい。実際の建物の値段は新築時の価格とイコールではないというわけだ。 

「解決!空き家問題(ちくま新書)」p.27-28

日本の既存住宅は75%くらいが無暖房の寒くて暑い住宅 

日本の住宅の質の低さがわかる基準として省エネ性能があります。基準ができたのはオイルショック後の1980年。その後、1992年、1999年、2013年と基準が作られていますが、そもそも39%が無暖房で、1980年基準が37%を占める中、日本の既存住宅は75%くらいが無暖房で寒くて暑い住宅であることがわかります。こういった質の低い住宅は相続してまで住んだり、ずっと住み続けたいと思わなくなっても仕方ないとも思います。

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画像引用元:価格が高いからといって住宅の質も高いわけではないようです。)

また、省エネ性能以外にも住宅の質を測る基準はあります。2008年の住宅ストック約5000万戸のうち、1700万戸は新耐震基準以前に建てられた耐震性に欠けるとされるものです。せっかく高い買い物なのに、それに見合った質が伴わないのが日本の多くの住宅なのです。

金融機関に建物を査定するノウハウがない

新築時は住宅自体の価値以上にお金を貸してくれるけど、中古になると、中古住宅を査定するノウハウがないため、木造住宅は20年経てば価値ゼロ、なんていう誤解も起きます。その原因は、あくまでも税務用に作られた法定耐用年数を指標に、中古住宅を査定するということが起きているからです。

法定耐用年数は税務用に作られたもので、年数が経つごとに税負担が軽減される仕組みで、そのモノの価値が下がるという意味ではない。

「解決!空き家問題(ちくま新書)」p.30

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画像引用元

日本では欧米に比べて中古住宅があまり流通していない

中古住宅の価値が適切に査定されない状況もあって、日本では欧米に比べて中古住宅があまり流通していません。アメリカやヨーロッパでは都市の、特に中心部では古い建物がほとんどです。古くなったから価値が下がるわけではなく、街の魅力が上がったり、丁寧に維持管理をすることで価格が上がるなど、適切に評価されます。

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画像引用元

つまり、住宅投資した額の分だけ住宅資産が貯まるのが欧米で、日本はその逆の状態です。せっかく住宅の取得のために投資をしても、それが資産として蓄積していかないのです。

この状況が日本人を貧乏にしている。親が家を買って住宅ローンを払い続ける。しかし、子どもがその家を相続した時点では建物の価値はゼロと査定される。そこに社会の変化による建物、設備、間取りの陳腐化、適切な手入れの欠如が加わったりすると、子どもはその家には住み続けない。

「解決!空き家問題(ちくま新書)」p.35

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画像引用元

 

(次回につづく)