空き家の所有者は「別に貸さなくても当座は大して困っていない」
東洋経済オンラインに公開されている木下斉さんの記事より。 全国の自治体で取り組まれている空き家バンクの物件情報を集約し、一元化する動きに対して「空き家バンクでは空き家は減らない」と指摘しています。というのも、そもそも空き家にしておく理由の3分の1以上の人は「特に困っていないから」と回答しているからです。
問題の根幹は、空き家と言われる不動産の所有者たちが「別に貸さなくても当座は大して困っていない」という状況にこそあるのです。
国土交通省による「平成26年空家実態調査」集計結果を見てみると、空き家にしておく理由の1位は「物置として必要だから(44.9%)」、2位は「解体費用をかけたくないから(39.9%)」、そして3位が「特に困っていないから(37.7%)」です。
シャッター商店街の不動産オーナーも同様
シャッター商店街というと何か救うべき対象のように感じますが、シャッター商店街の不動産オーナーは実は豊かだからこそシャッターを閉めている、というケースが多くあります。確かに冷静に考えると、収入が少なくて切羽詰まっているならば、むしろ積極的に店を開いて事業を頑張る、またはテナントを入れて賃料をちゃんと得る、と考えるのが筋でしょう。
商売が行き詰まって、不動産収入も乏しく余裕がなくなってしまった人は、土地・建物・自宅・車などなど一切合切もって行かれ、現在のシャッター商店街の所有者ではないのです。本当に困っている人は、シャッターを閉めて不動産を放置しておくことなどはできないのです。
中小企業庁による「平成27年度商店街実態調査」によると、空き店舗が埋まらない理由(貸し手側の都合によるもの)の1位は「所有者に貸す意思がない(39.0%)」、2位は「店舗の老朽化(34.6%)」、3位は「家賃の折り合いがつかない(29.2%)」です。
参考記事:シャッター商店街の敵は"豊かさ"!? (No.966) | 経営からの地域再生・都市再生 [木下斉]
空き家もシャッター店舗も所有者からすると問題ではない
空き家問題もシャッター商店街も、実は不動産オーナーにそもそも貸す気がないという、なんとも身も蓋もない理由があるのが実情です。だからこそ両方とも根が深い問題なのです。
問題の根幹は空き家の所有者が「別に貸さなくても困っていない」ことにある。補助金入れると不当に高い家賃が維持されるだけ。結局世代交代待つしかないんじゃないかなあ。木下斉さん記事。/「シャッター商店街」は本当に困っているのか https://t.co/T7jnhEeKwf
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) 2016年10月9日
世代交代を待っていたら、10年、20年かそれ以上か、ひたすら待つなんて気が遠くなります。
とある分譲団地は人気があるのになぜ空き家が多いんだろうと地元の不動産屋さんに尋ねたららほとんどが売りに出していないからという答えが返ってきたことがある。空き家問題というより「開いてない家問題」。 https://t.co/jQ6U4co0sD
— 吉永健一 (@yosstudio) 2016年10月7日
空き家問題というより、そもそも開いていない家問題。
https://t.co/5nVreiaUP1
— kut (@kutrider) 2016年10月10日
「『シャッター商店街』は本当に困っているのか」読んだ。
商売ができない店主が被害者→お店が少なくなり地域衰退、、となんとなくのイメージで考えがちな話題だが、問題の本質は店舗や土地建物という地域資源の不活用、なのだと思った。
商売ができないのではなく、商売をしないということ。
僕の住んでる地方の空き家バンク眺めてても、プランと築年数と値段だけ事務的に記載されてるだけで魅力的じゃないんだよなぁ。「ここに住むとこんな生活出来るよー」みたいな紹介の仕方だけでも多少変わると思うのだがなぁ。 https://t.co/VlOMM7cMqt
— ryoichi matsuda (@ryoichisamasoni) 2016年10月10日
これはすぐにでも出来ること。空き家バンクって定住促進とかを狙っているわけだから、引っ越したらどんな生活が出来るのか、イメージを沸かせるための紹介は必要。
【東洋経済オンライン更新】空き店舗対策だ、空き家バンクだと騒ぐが、本質的問題は別のところにあることを改めて整理しました。/「シャッター商店街」は本当に困っているのか 国交省の「空き家バンク」で空き家は減らない https://t.co/qscewlFLGG
— 木下斉/HitoshiKinoshita (@shoutengai) 2016年10月6日
空き家を埋めればいいという単純な話ではなく、空き家所有者はむしろ空き家のままにしようと思っているというジレンマ。
行政は補助金ではなく固定資産税の減免などを
そこで行政ができることですが、空き店舗に補助金出して若い事業者の活躍の場をつくろう、というのはありがちな話です。しかしそんな補助金頼みではなく、空き家再生や空き店舗活用に取り組む事業者に対して行政は、固定資産税減免などの優遇をするとか、事業者の創意工夫を促すやり方が重要と、こちらの記事では指摘しています。補助金出して事業者の足腰を弱らせるのではなく、クリエイティブだったりイノベーションを起こしそうな事業者のやる気を出させるようなことを行政はやるべきです。空き家・空き店舗オーナーに加えて、補助金施策に頼る行政もマインドチェンジが必要か。
民間はこのような取り組みを着々と増加させていくことが大切です。一方で、行政はこのような取り組みを、「素晴らしいので補助金を出して全国に広げる」、などとやっては絶対に駄目です。むしろ空き不動産を活用して再生したものについては、一定期間の固定資産税減免などを講じるなど、行政にしかできないことと向き合って頂きたいのです。
参考記事:商店街の空き店舗が埋まらないのは何故?起業の拠点になりそうでならない、商店街のまちづくりを考える | MAD City:松戸よりDIYと暮らし、物件情報を発信