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空き家を活用して新しい価値をつくる

空き家を財産として活用していける人がこれからの社会を作る「解決!空き家問題 中川寛子著」読書メモ(9)

立地が良ければ収益につながりやすい

今回は中川寛子さんの「解決!空き家問題(ちくま新書)」の読書メモの第9回目(ラスト)です。過去記事はこちら。ここまで読み込んできて、空き家に限らず、不動産を活用する上で最初に重要な要件となるのは立地ということでした。つまり多くの人が訪れやすい場所であれば活用の仕方もバリエーションが増え、収益性も優先できるというわけです。もちろんサービスのクオリティや雰囲気作り、コンセプトは重要です。

具体的には住宅、シェアハウス、オフィス、シェアオフィス、SOHO、カフェやレストラン、雑貨店や書店、ブティックなどの店舗、ギャラリー、アトリエ、教室、ゲストハウス、スポーツジム、旅館などなど。

「解決!空き家問題(ちくま新書)」p.105

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東京メトロ銀座線田原町駅から徒歩2分という好立地にあるイリヤプラスカフェ@カスタム倉庫は、2012年にオープンした2階建ての木造倉庫を改装したおしゃれなカフェ。 

立地が悪い空き家はどうする?

それでは立地が悪い空き家は再生・活用できないのでしょうか。中川寛子さんは本の中で「収益性」と「公益性」、そして「社会性」という3つのキーワードを挙げています。ざっくりまとめると、

  • 駅前などの好立地→収益性が優先(カフェやゲストハウスなど)
  • 駅から遠いけれど周辺にある程度人口はある→公益性が優先(高齢者や子供、子育て世代向けのサービスなど)
  • 人口減少地域→社会的な活用(移住・定住促進、地域再生、自治体の取り組み)

という感じです。立地に応じてグラデーションになっていて、立地が悪くなるにつれ私的な領域から公的な領域へとシフトしていっている印象です。尖ったコンセプトやSNSやインターネットをフル活用したお店とかならば、立地の良し悪しは関係なさそうですが。

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(画像引用元:自転車通勤者のためのメゾネットアパート Bicyclette)こちらは自転車通勤者向けという、明確にターゲットを絞った賃貸物件。コンセプトがはっきりしているので立地の悪さは入居者の動向に関係ありません。

土地に合わせることと福祉的観点

好立地であれば色々活用のやり方はあります。住宅やオフィスだった空き家を用途変更してみるとか、リフォームやリノベーションをしてみるとか、結構実例はたくさんあります。では立地が悪い場合ですが、公益性が優先されるのは記述の通りです。空き家を通して高齢者や住宅困窮者、子供、子育て世帯などをターゲットにした事業が考えられます。収益性優先の事業よりも、その土地に合わせることと福祉的観点が必要になります。この場合、どうしても地元自治体のやる気というか、空き家活用に関する施策との連携が多かれ少なかれ出てくると思います。例えば京都市では、「活用・流通促進タイプ」と「特定目的活用支援タイプ」に分けて空き家活用を進めていて、この後者の方は高齢者や多世代交流といった地域の居場所などに空き家が活用される場合は改修費用などを一部補助しています

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(画像引用元:京都市:京都市空き家活用・流通支援等補助金について)京都ならではと言える「特定目的」がたくさん並んでいます。

農村、人口減少地域の空き家は移住・定住促進のツールとして 

空き家再生や活用のニュースの中で特に地方の場合、空き家×移住・定住促進といった組み合わせをよく見かけます(例えばこちらのニュース)。例えば全国に広がる空き家バンク事業なんかは、こういった観点から取り組まれています。

空き家は街の財産

たくさん空き家活用の実例が紹介されていましたが、要するに空き家を財産と捉え、未来に向かって前向きに活用していくこと、そういった発想と行動こそがこれからのまちづくり、社会を作っていく、そんなメッセージを受け取りました。

解決!空き家問題 (ちくま新書)

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