空き家グッド

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必要以上に新築を造りすぎる理由は「日本の新築住宅建設は景気対策の道具だから」(そもそもなぜ空き家が増えるのか?)

住宅の多面性

 

人間の生活にとって「住宅」はまさに大前提です。しかし特に新築住宅建設に当たっては多くの人手と材料を要するため経済にとっても大きな影響を与えます。つまり「住宅」は生活の場や文化を担うものであると同時に”金融商品”として”経済”にも深く関わっています。

 

住宅は「金融商品」であり「経済」に深く関与しています。同時に「生活の場」であり「文化」を担うもの。

(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)p13

 

戦後は住宅の数が足りなかった

 

戦後は住宅の数が足りなかったので、高度経済成長期の1966年に「住宅建設計画法」が施行(2006年まで続く)され、住宅の量に力点を置いて住宅政策がなされてきました。

 

しかし、統計データを見てみると1968年(昭和43年)には早くも住宅数が世帯数を追い抜いています。

 

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画像引用元)昭和43年(1968年)の時点で住宅数は足りていた!?

 

ただ、この頃はまだ住宅の質も広さも十分ではありませんでした。そのため、より満足の行く住宅の建設が必要ということでこれまで通り、住宅の量に力点を置いた住宅政策は続けられました。

 

新築・持ち家住宅取得促進のために「住宅ローン減税」が始まった1970年代

 

1972年に「住宅取得控除」、1978年に住宅ローンを控除する仕組みが導入され、新築・持ち家住宅取得促進のインセンティブが生まれました。

 

当時は住宅の床面積に応じ税額控除する仕組みで、年間最高2万円、期間は3年という小規模なもので、ローンの生むを問わず、条件を満たす新築住宅の取得に適用された。この後、1978年に住宅ローンを控除する仕組みが導入され、減税額は毎年の返済額を基に算定された。

空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げp200

 

景気対策としての色合いが出てきた1980年代

 

1980年代あたりから「住宅政策」はいつの間にか「景気対策」となっていきます。1986年には「住宅取得促進税制」に衣替えし、毎年末のローン残高を基に減税額を算定する方式に改められました。

 

1980年代になると、質の良い住宅もかなり出回るようになり、本来はこのあたりが住宅政策転換のベストタイミングだったはずなのですが、バブル経済とその崩壊があり、経済を立て直すための方策の一つとして、新築住宅建設の促進があったわけです。

(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)p57

 

バブル崩壊景気対策としての性格が強まってきた1990年代

 

バブル崩壊後の1993年以降は、景気対策としての性格を強め、減税規模が次第に拡充されていきます。

 

1999年には「住宅ローン税額控除」となり、控除期間15年、最大減税額は587.5万円と大規模なものとなった。

空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げp201

 

そしてバブル崩壊後の不況の中においては、かえって地価が下がり続けていたので新築マンション市場は絶好調だったそうです。

 

意外かもしれませんが、1993年以降に新築マンション市場は大きく回復しています。そしてそこからしばらく市場は順風満帆、1990年代後半には、上場するマンションデベロッパーが続出しました。

(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)p57

 

ゆとりローン」などの税制優遇が新築住宅の購入を促しました。

 

当時の住宅金融公庫が、ゆとりローンといって、当初数年間のローン支払いを大きく抑制して買いやすくしたり、税制優遇をすることで、新築住宅の購入を促したためです。

(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)p58

 

規模は縮小傾向にあるものの、なお新築・持ち家取得促進の重要な手段になっている2000年代

 

2001年には現在の「住宅ローン減税」に変わり、規模は次第に縮小されてきていますが、なおも新築・持ち家取得促進の重要な手段になっています。

 

新築住宅建設は経済波及効果が高い!?

 

新築住宅の建設に当たってはコンクリートや材木などの資材やキッチン・ユニットバスなどの設備機器が売れ、職人さんに給料が行き、その先にまた消費があり、お金が循環するため、そこだけを見ると経済への波及効果は大きそうです。しかし実際は、新築住宅を建設し過ぎることで空き家対策に取り組む財政的・人的コスト、新築住宅の価値が25年程度でゼロになる(価値が落ちる)ことで各家計に逆試算効果が働くことによる消費減など、全体で見ると無駄もかなりありそうです。

 

さらに、新築住宅建設の生産誘発効果(経済波及効果)については、1990年代後半の社会情勢を参考に割り出された数字です。インターネットが出始めて携帯電話もまだまだそこまで普及していなかった頃に作られた資料がいまだに使われているということです

 

新築至上から中古利活用へ思い切った住宅政策の転換が必要

 

2006年に制定・施行された「住生活基本法」は”フローからストックへ”を合い言葉に新築中心の住宅政策を中古利活用へと大きく転換させることを目的としています。たしかに中古住宅の利活用を進めるための指針や計画などは少しずつ議論されたり、整ってきたりしていますが、新築住宅については相変わらず毎年100万戸近く作られています。今後、地域によっては”新築住宅の建設を抑制する”といった施策も考えられます。

 

「06年に住生活基本法ができて、政府は中古を利活用する方針を打ち出した。ただ、新築の抑制まではしていない。抑制するとハウスメーカーが困るのでかじを切れない。現状は両にらみ。本当は基本法ができたときに大きくかじを切るべきだった。年間100万戸も新築され、空き家も増えているというのはおかしな政策の結果だ」

新築住宅促進の政策、見直しを 減税は中古に手厚く :日本経済新聞

 

まとめ

 

  • 住宅は生活の場や、文化を担うものという側面以外に、「金融商品」として”経済に深く関わっている”という一面もある
  • 1968年の時点で住宅数は世帯数を満たしていたが住宅の質や広さが不十分だった
  • 1970年代から住宅ローン減税による新築・持ち家取得促進の税制が始まった
  • 1980年代頃までに住宅の質や広さはある程度の水準まで満たされるようになってきた
  • しかし「景気対策」として新築住宅建設は続いた
  • バブル崩壊後は地価の下落でかえって新築マンション市場は盛況だった
  • 空き家増加が問題視される現在は住宅ローン減税の規模は縮小傾向といえど廃止はされていない
  • 新築住宅建設の経済波及効果は空き家対策や新築住宅の寿命の短さを考慮すると必ずしも大きくはない
  • 人口減少、空き家増加している現代は”新築住宅建設抑制”など思い切った住宅政策が求められている

 

関連書籍はこちら。

 

空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げ

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(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)

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