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空き家を活用して新しい価値をつくる

国立市空き家活用フォーラム「空き家でまちをおもしろく!」レポート(後編)

空き家活用グループセッション

 

さて先日、東京都国立市の空き家活用フォーラムに参加してきました。前編(空き家問題の概要や原因についての講義)はこちらです。今回は後編ということでフォーラムの後半に行われた「空き家活用グループセッション」について書いていきます。

 

会場に着いたときには既にグループが分けられていて人数の足りていない所に入りました。ぼくを含め7名のグループで女性5名に男性2名。皆さん国立市在住でしたね。5つのグループで7、8名がいたので30名〜40名が参加していました。年齢層は40代〜60代が多い感じ。子育て世代は少なかったですね。学生もたぶんゼロ。

 

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グループセッションの様子。各グループで空き家の活用について話し合っています。具体的には、国立らしさ空き家で出来ること・したいこと担い手(関係者)阻害要因、といったポイントごとにブレスト的にポストイットにアイデアや意見を書いてホワイトボードにまとめていきます。

 

各グループのアイデアや意見を順に見ていきます。

 

空き家を「お試し滞在施設」にして移住促進

 

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<背景・状況>

  • 人口減少
  • 住みたい街ランキング上位
  • 宿泊施設がない、ホテルや旅館が作れない(文教地区条例)
  • 子育てに向いている(平日日中にお年寄りと子供とが過ごしている)

<出来ること・アイデア>

  • 「宿泊」ではなく空き家を使って「住居提供」
  • ゲストハウス、ワーキングホリデー、バケーションのための滞在施設として
  • 空き家を「移住促進施設」に(お試し滞在施設
  • 文教地区外の谷保や矢川地域で

<関係者>

  • 家主
  • 借り手
  • 管理・仲介業者
  • 家主と借り手とをつなげるコーディネーター
  • 行政(広報や信用保証)

<阻害要因>

  • 家主の不安(占拠、貸したら返ってこないんじゃないかという不安)
  • 耐震性
  • 資金(改修費?)

<その他>

  • まちのブランドイメージアップ
  • 物件のイメージアップ

 

国立といえば駅前から一直線に続く桜並木道(約1.8km、幅員40m以上)が魅力的です。片側2車線に自転車道、歩道、緑地帯を備えていて、沿道には一橋大学があるなど若者向けのお店も多くて活気があります。

 

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国立市 - Wikipedia

 

1952年に東京で初めて「文教地区」の指定を受けたことにより、多くの学校を擁する緑豊かな閑静な街並みが定着しています。確かに学校が多くて落ち着いた雰囲気です。がしかし一方では文教地区へ指定されているためホテルや旅館などが建築するこが出来ないなどの制約もあります。(他にも風俗店や劇場、映画館なども規制対象)

 

ここを柔軟に出来ないかというアイデアが「おためし滞在施設」ですね。地方で移住・定住促進施策として空き家活用をしている事例をニュースでもよく見ますが、それと似たような発想です。これは「東京都文教地区建築条例」の柔軟な解釈と運用で実現できるのか、それとも改正する必要があるのか吟味が必要です。

 

貸し手と借り手をつなげる空き家コーディネーター

 

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<国立らしさ>

  • コンパクトシティ(顔が見える、大きな施設が少ない)
  • 治安が良い
  • 団塊の世代が多そう
  • 教育熱心
  • 市民活動が盛ん
  • 不動産価値が高い
  • 家賃が高過ぎ
  • 子育てしやすそう

<空き家活用アイデア>

  • 子育て広場
  • 多世代の居場所・交流スペース
  • 学童保育施設
  • 障害のある人たちの働く場
  • ものづくりの場
  • コミュニティカフェ
  • 住宅困窮者のために活用
  • セルフビルド(セルフリノベ?)

<今後求められること>

  • マッチングのシステム
  • 適正管理のシステム
  • 危ない空き家には行政の介入が必要
  • ワンストップ相談窓口
  • 活用可能な物件が一覧できるマップやリスト
  • 死亡届の(提出の)ときに(空き家を貸さないか)チラシを入れてはどうか
  • 近隣の空き家を発見したらその情報を吸い上げるシステム
  • 「DIYリノベーション」に対する行政の理解と協力

<今回参加した動機>

  • 空き家活用でコミュニティビジネスがしたい
  • 近所の空き家に悩んでいるため
  • 国立で空き家活用市民団体をつくりたい
  • 空き家を公共のスペースとして使えないかと考えた

<関係者>

  • 市民
  • 信頼性のために役所も関わる
  • 建築士などの専門家(リフォーム)
  • 子育て世代
  • 子育て支援活動団体
  • 借り手と貸主の間に入る第三者
  • 物件を提供する人

<阻害要因>

  • 資産を失うおそれ
  • 相続税でもめて空き家化
  • 借り手に対する不安
  • 行政の資金的バックアップが得づらい
  • 男性がなかなか地域に馴染まない

<成功すると思われる秘訣>

  • 利用する人の応益負担
  • ボランティアだけでは無理
  • 第三者が入って貸し手と借り手の契約をサポートする
  • 大人数で分担して運営
  • 運営資金
  • 社会的役割を担うものに対しては税を優遇する
  • 寄付金
  • ある程度の期間貸してもらえる保障
  • コーディネーターの育成
  • 男性には肩書きを与えると出やすい(地域活動や市民活動に参加しやすい?)

<ポイント!>

  • これらをまとめるセンス良いコーディネーター

 

このグループは一番議論が白熱していた感じでポストイットがたくさんでした(2枚のホワイトボードを使っていました)。空き家活用に対する問題意識も高く、「貸し手と借り手を結びつけるセンスの良いコーディネーター」が必要という具体的なアイデアが出ていました。まぁ結局のところ誰が仕掛けていくか、誰が当事者になるかが一番の問題だと思いますが。高知県では若者が空き家活用を促進する団体を立ち上げました。

参考記事:高知の「空き家活用」を促進するための団体を作りましたよ : まだ東京で消耗してるの?

 

空き家相談窓口の設置

 

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<国立らしさ>

  • 学園都市
  • 一戸建て空き家結構ある
  • 終の住処にされる方が多い
  • 色々あるが皆小粒
  • 映画やドラマのロケ(撮影)が多い
  • 障害者が当たり前に暮らす
  • 多目的図書館
  • 経済力が乏しい(市民、企業、行政)
  • 近隣意識乏しい
  • 音楽が身近(聞いたり、演奏したり)
  • 環境意識が高い(騒音など)

<空き家で出来ること>

  • ものづくりワークショップスペース
  • 高齢者・多世代のたまり場
  • シェアハウス(趣味、テーマ型)
  • 一緒に子育てする場
  • 気楽にコンサート

<関係者>

  • 事業運営者(NPO、企業など)
  • 不動産会社
  • 行政(市がバックアップすると信用が出来る)

<阻害要因>

  • 親の荷物を片付けるのが嫌
  • 貸すリスク(維持管理が面倒、問題先送り)
  • 相談してもらえれば様々な使い方を提案出来る
  • 相談先がない
  • リノベーション費用を誰が出す→寄付を盛んにする
  • 寄付されても行政が有効活用できない

 

こちらのグループは”国立らしさ”をたくさん出してくれています。国立の強みも弱みもそれぞれ出ています。狭い範囲で学園都市として大きな地域コミュニティがある感じが良い点でしょうか。弱みとしては企業も少なく人口もそこまで多くないので税収が少ない点があります。でもだからこそ今有るストックや人やモノ・コトを掛け合わせて国立らしいコンテンツを作っていけばいいと思います。「空き家相談窓口の設置」や不動産、司法書士、建築士、地域団体などによる「協議会の設立」など具体的な行政への要望もありました。

 

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<国立らしさ>

  • 学生が多い
  • 元気高齢者が多い
  • お金がない(大規模施設つくれない)
  • 自主的に何かしたい人が多い
  • 学びのスペースを探すのが大変

<やりたいこと>

  • カフェ
  • 保育所
  • 母子の居場所
  • 多世代の交流場所(子供も大人も来れる)
  • 留学生の住まい
  • UR団地に留学生向けシェアハウス
  • アーティストの活動場所

<阻害要因>

  • 家主が負担する固定資産税分を補填するという切り口で貸してもらえるか
  • 貸し手と借り手とをマッチングする組織がいない
  • 空き家情報は公開か非公開か(プライバシーVS情報公開)
  • 地価が高い

<必要な空き家対策>

  • 信頼できる管理運営者が必要(ビジネス化)
  • 行政は前に出ない
  • 空き家バンクをつくる
  • 期間限定でもいいので空き家活用のモデルケースをつくる

 

ぼくが参加したグループはほかのグループより寂しい感じですね(笑)空き家情報をどこまで公開出来るかは難しいところです。防犯上問題になるし、個人情報保護の観点から理解は得られにくい。空き家所有者へ働きかけるNPO的な団体や組織は確かに必要ですね。こういったフォーラムに参加した人たちがやるしかない気がしますが。

 

まとめ

 

以上4つ(5つのグループだったはずですが、写真を撮り忘れました)のグループのアイデアと意見を受けていくつか感想です。まず、貸し手の不安についての意見が結構ありました。

 

「貸したら返ってこないんじゃないか」「借り手が信頼出来るかわからない」「貸すために改修が必要」など。当然自分の住宅を身内以外の人に貸すわけですから最初はなかなか抵抗があると思います。しかし、「定期借家契約」や「借主負担DIY型賃貸借契約」など新しい賃貸借契約のかたちも出来ています。ここら辺を使って行けば貸主の不安は解消出来ると思います。そして貸主と借主とをつなぐようなコーディネーター的な人や組織がサポートしていけばスムーズかなと。

 

次に、「空き家活用のスタートアップに助成金を」「行政に〜してほしい」といった意見もチラホラ出ていました。これは自らが当事者として空き家活用を仕掛けて行くという人が出て行く必要があると思います。行政はいい意味で当てにしてはいけない。助成金ではなく自ら稼ぐという発想と手法を実践する必要がありますね。寄付金もクラウドファンディングしかり活用するのはいいですが、資金調達のメインは事業収入でしょう。

 

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