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特定空き家対策は「代執行」よりも「寄付受入」の方が良策!

特定空き家への指定

空き家の中でも、そのまま放置すれば倒壊などの危険性があったり、衛生上有害だったりすると、市区町村によって「特定空き家」に指定されてしまいます。特定空き家に指定されると、市区町村から修繕や清掃などの「助言・指導」があり、それに対してリアクションをしないと次は「勧告」がなされ(この時点で固定資産税の税制優遇措置の対象から除外される)、それでもリアクションしなければ「命令」、それでも…であれば「代執行」いわゆる強制撤去される、という流れになります。

f:id:cbwinwin123:20180527170657p:plain(画像引用元:特定空き家とは-NPO法人 空家・空地管理センター)代執行まではいくつものハードルがあります。

代執行費用を市区町村が負担せざるを得ない場合も

最終的に代執行された場合、その費用は誰が持つのか。本来は特定空き家の所有者なのですが、所有者が特定できなかったり、所有者が特定できたとしても費用を負担できない事情があるとすると、市区町村が費用を肩代わりすることになってしまいます。例えば秋田県湯沢市にある廃業ホテルの略式代執行に当たる多額の費用を、湯沢市が負担せざるを得ない状況に追い込まれています。

費用はアスベストの調査費を含め約1億5600万円を見込み、うち市が約9200万円を支出する。運営会社は既に解散し、費用を請求しようにもできない状況だ。
市くらしの相談課の照井匡毅課長は「廃ホテルは目立つ場所にあり、観光イメージを損なっていた。長年の懸案を解決できるが、自治体の負担は重い」と補助増額を求める。

<老朽空き家対策>代執行が倒壊事故回避の切り札に 日本海側の豪雪地で重宝、課題は費用回収 | 河北新報オンラインニュース

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(画像引用元:<老朽空き家対策>代執行が倒壊事故回避の切り札に 日本海側の豪雪地で重宝、課題は費用回収 | 河北新報オンラインニュース)所有者不明の廃業ホテルが地域の安全や衛生に対する脅威となってしまっています。

群馬県富岡市が特定空き家の「寄付受入」を開始!

そんな中、群馬県富岡市は今年4月から新しい試みとして、「特定空家等の防止を推進するための空き家寄附受入制度」を開始しました。特定空き家は最終的に市区町村が費用負担して代執行するならば前もって特定空き家の寄付を受け入れ、ポケットパークなど市民に役立つ施設として活用しようという狙いがあります。寄付受入の対象となる区域は都市計画上の用途地域内にあること、条件は建築基準法の接道がないものなど5つのうちいずれか1つに該当することです。富岡市内の空き家は776件で、このうち特定空き家は25件です。特定空き家である期間が長ければそれだけ地域に悪影響を及ぼす期間が長引くということですし、区市町村が早めに寄付を受け入れることで特定空き家の所有者としても代執行費用を請求されることもなくなるし、win-winな良策です。

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(画像引用元:湯村温泉ポケットパーク | 公園 | 施設案内 | 新温泉町)特定空き家を解体して地域の人たちがちょっと休憩できるようなポケットパークなどに活用されると良いです。

まとめ

財務省のウェブサイトには、「行政目的で使用する予定のない土地等の寄付については、維持・管理コスト(国民負担)が増大する可能性等が考えられるため、これを受け入れておりません。」と明記されています。しかし特定空き家までなってしまった空き家の場合は、逆に寄付を受け入れた方が財政負担の軽減や市民福祉の向上につながります。長年放置された土地の所有権放棄の仕組みが検討されるなど、大きな制度見直しの動きもあります。不動産を所有すること=メリットがある、という構図は当たり前のものではなくなり寄付や所有権放棄といった意向を持つ不動産所有者がますます増えて来ることを見据えて、新しい法制度や施策を生み出していくことが重要です。