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空き家を活用して新しい価値をつくる

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空き家所有者情報を持つ自治体と民間事業者が連携して空き家を流通させる!

固定資産税課税台帳の空き家所有者情報を空き家対策部局の職員が利用可能に

不動産の所有者が誰なのかを調べたい時は、法務省の地方支分部局の一つである法務局で記載し一般公開されている登記簿を見ればわかります。登記簿を当てにしているのは自治体も同じです。というのもまず、自治体(市町村)は固定資産課税台帳を備えなければいけません(地方税法380条)。この固定資産税課税台帳とは土地課税台帳、土地補充課税台帳、家屋課税台帳、家屋補充課税台帳及び償却資産課税台帳の総称です(同法341条9号)。これらの台帳には、登記簿に登記されている登記名義人の氏名や住所などが登録されることになります。固定資産税課税台帳は自治体が適正な課税を実現するために作成されたものですので、課税という特定された目的以外の目的に利用することは本来はできません(地方税法22条、地方公務員法34条1項、個人情報保護条例)。しかし、空き家対策特別措置法(以下、空き家法)10条において「空き家法の施行のために必要な限度において、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる」と規定されました。つまり、空き家法の目的に沿うのであれば固定資産税課税台帳の不動産(空き家)の所有者情報を税務部局以外の空き家対策部局の職員が利用することが可能になっているのです。(より詳しくはこちら

(空家等の所有者等に関する情報の利用等)
第十条 市町村長は、固定資産税の課税その他の事務のために利用する目的で保有する情報であって氏名その他の空家等の所有者等に関するものについては、この法律の施行のために必要な限度において、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。 

e-Gov>空き家対策の推進に関する特別措置法

空き家所有者情報を空き家対策部局が利用できるようになったけど…

前置きが長くなりました。本来は自治体の課税部局だけが課税のためだけに使われるはずだった不動産(空き家)所有者情報が、同じ自治体職員といえど他の部局で利用できるようになったこともすごい進歩ですが、まだこの段階だと空き家の売買や賃貸といった具体的な空き家活用の動きにはつながりづらかったわけです。そこで国土交通省では民間事業者と連携して空き家所有者情報を活用するモデル的な空き家利活用の取組を行う自治体を募集しました

f:id:cbwinwin123:20180604174430p:plain(出典:報道発表資料:「平成29年度 空き家所有者情報提供による空き家利活用推進事業」の 二次募集採択団体(3団体)の決定について - 国土交通省

この動きは前々から密かに注目していてどう具体化していくか楽しみにしていました。

akiya123.hatenablog.com

「いこま空き家流通促進プラットホーム」が設立!

そこで最近飛び込んできたのがこのニュースです。上記国土交通省のモデル事業採択団体である奈良県生駒市が空き家の流通を促進するために、市内の不動産流通、建築関係の8団体に物件情報を提供するというのです。

奈良県生駒市は28日、空き家の流通を促進する新たな取り組みを始めると発表した。市内の不動産流通、建築関係の8団体が市から物件情報の提供を受け、物件ごとのカルテをもとに活用方法を所有者に助言する。空き家を有効活用する狙いで市や関係各団体が連携するのは全国でも例のない試みだという。

カルテに基づき空き家利活用 奈良県生駒市、民間と連携 :日本経済新聞

生駒市と協定を結んだ宅地建物取引業協会や建築士会、司法書士会、銀行などで構成される「いこま空き家流通促進プラットホーム」が設立されました。生駒市が持っている空き家所有者情報をこのプラットフォームに提供し売買や賃貸の可能性を探るという仕組みです。

f:id:cbwinwin123:20180604175332p:plain(出典:全国初 いこま空き家流通促進プラットホームを設立しました | 生駒市公式ホームページ

初年度は30軒程度の空き家を流通させたい考え

空き家所有者情報の自治体内部での利用、空き家所有者情報の民間事業者への提供、やっとここまで来ました。生駒市では2016年度の空き家実態調査によると2017年3月現在で1444軒の空き家があり、その際のアンケートでは約550棟の所有者が「現状・改修で住める」と申告しました。初年度は30軒程度の空き家を売買や賃貸につなげたい考えです。

(参考)
生駒市空家等対策計画策定及び空き家流通促進検討懇話会のページ | 生駒市公式ホームページ