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空き家を活用して新しい価値をつくる

空き家所有者情報を制する者は、空き家再生を制す!

空き家所有者情報については、2015年5月に施行された空き家対策特別措置法により、市町村(基礎自治体)の税務部局が保有する課税情報を市町村内部で活用することが可能になりました(参照:空き家対策特別措置法第10条1項)。今回さらに一歩進んで、空き家所有者の同意を得た上でですが、民間事業者へ外部提供するにあたっての法制面での整備、提供の際の運用方法、留意点などをまとめたガイドラインが国土交通省から出されました

不動産事業者へ空き家所有者情報を外部提供が可能に

空き家再生・活用を進め、広げるにあたって今回のニュースはとても良いことです。空き家が老朽化して建物の資産価値を下げたり、近隣にとっての迷惑の温床となる前に、早めに所有者へ連絡し、住むなり売るなり貸すなり、なんらかのリアクションを促すことは重要です。空き家という中古住宅が流通し、地域経済が回ることで中古住宅市場が活性化されます。日本の全住宅流通に占める中古住宅のシェアは14.7%(2013年)という話はかなり出回っているわけですが、空き家所有者情報(所有者の同意得た上で)に不動産事業者(登録制度や市町村との協定を結んだ業者など全ての不動産事業者というわけではない)がアクセス可能になることで、ビジネスチャンスが広がります。

f:id:cbwinwin123:20170402142858p:plain(画像引用元:上野同潤会アパート正面|フリー写真素材・無料ダウンロード-ぱくたそ)空き家の流通が進むことで新築中心の住宅市場から中古住宅中心へと移行するか。

もちろん空き家所有者の同意を取ってから

空き家だからって勝手に不動産事業者に個人情報を流されたくない、という意見についてですが、もちろん空き家所有者の同意を取ってからです。(1)情報の提供先、(2)提供元における利用目的、(3)提供される情報の内容、を明らかにし、できるだけ書面で同意を取得するということがガイドラインに示されています。

f:id:cbwinwin123:20170402143831p:plain(画像引用元:報道発表資料:「空き家所有者情報の外部提供に関するガイドライン(試案)」の策定・公表について - 国土交通省)民間事業者への空き家所有者情報の外部提供の流れ。

京都市、松戸市、太田市では既に外部提供を進めている

空き家所有者情報の民間事業者への外部提供は実例があります。例えば京都市では空き家所有者の同意を得て、「京都市地域の空き家相談員」として京都市に登録されている宅地建物取引士に空き家所有者情報を提供するといった取り組みが行われています。他にも松戸市や太田市が先進取組事例として紹介されています。こういった自治体の先進事例を全国へ水平展開させようという国土交通省の意図を感じます。

f:id:cbwinwin123:20170402144826p:plain(画像引用元:報道発表資料:「空き家所有者情報の外部提供に関するガイドライン(試案)」の策定・公表について - 国土交通省)京都市の先進事例。

まだまだ内容の充実を図る予定

では具体的に全国の自治体でいつからこのガイドラインが運用されていくのか、ということですが、まだ”試案”ということで、平成29年度内を目途に内容の充実を図っていく予定です。地方分権の時代ですので、やる気のある自治体が先んじて取り組みを進めていくこと、トライアンドエラーを進めることで内容はさらに磨かれていきます。

各市町村においては、このガイドライン(試案)を踏まえ、地域の実情に応じた仕組み作りを行っていただくことが望ましい。 なお、このガイドライン(試案)については、総務省と調整済みであること、また、 現段階では試案として公表するものであり、今後の各市町村の取組等を踏まえ、平成 29 年度内を目途に内容の充実を図る予定であることを申し添える。

空き家所有者情報の外部提供に関するガイドライン(試案)p.1(PDF)

空き家所有者情報を制する者は、空き家再生を制す

空き家の活用がなかなか進まない原因の一つに、空き家所有者への把握や連絡が難しいことが挙げられます。こうした障壁を解消する今回のガイドラインが今後どう広がっていくか、引き続き注視していきます。「リバウンドを制する者は、ゲームを制す!」はスラムダンクの赤木キャプテンの名言ですが、これにあやかって言わせていただくと、「空き家所有者情報を制する者は、空き家再生を制す!」そう思います。

 

(参考記事・サイト)
報道発表資料:「空き家所有者情報の外部提供に関するガイドライン(試案)」の策定・公表について - 国土交通省
空き家所有者情報の外部提供でガイドライン | 最新不動産ニュースサイト「R.E.port」