空き家活用は所有者と利用者双方の相互理解が重要
空き家に関するブログを書いていると、ときに「○○エリアで空き家はあるんでしょうか（借りられるのでしょうか）？」というご質問を受けることがチラホラあります。確かに住宅・土地統計上では国内の空き家率は13.5%で820万戸の空き家が存在するということになっていますが、その空き家を全て活用できるかと言われればそういうわけではないわけで（賃貸用なのか、個人住宅なのか、老朽化の程度はどうなのか、所有者の理解はあるのか、など越えるべきハードルは多い）、所有者と空き家を活用したいと考える利用者との相互理解がとても重要になってきます。
空き家は安いのか？
例えばよくあるのが、空き家を活用したいと考える利用者の意識として「安く借りられる」「安く買える」といった感覚で空き家の活用を捉えていることです。中にはタダ同然で借りられる（買える）空き家もあるかもしれませんが、そんなのは稀で、なぜかというと空き家が放置されている理由（相続登記がなされず所有権利者がたくさんいて意思決定ができない、老朽化がひどい、事実上物置として使われている、など）を考えると空き家になっている＝個別具体的な複雑かつ多様な事情が絡んでいる、という場合が想像つきます。そもそも空き家であるかどうかも個人住宅の場合、所有者にとっては空き家ではないと認識していることが大半でしょう。
実は空き家に興味を持つ人はかなり多いが、その大半は建築物自体ではなく、「安く借りられる」「安く買える」物件に興味があるにすぎない。ところが、放置されていた空き家を再利用するためには、所有者は多額の改修コストやリスク対策の負担、そしてさまざまな記憶や思いを断ち切る必要がある。特に所有者の思い入れが強い物件ほど、結果的に交渉が成立しない場合が多い。
空き家活用に必要な修繕・改修工事のコストというリスク
そして空き家所有者に空き家活用の意向があったとしても、今まで何年も使われてこなかった空き家を使える状態にまで修繕・改修するには、相当なコストがかかります。しかも、工事をしていく中で当初予定していなかった新たな工事が必要になってくるなど、コストの目安が見通しづらいというリスクも存在します。ここまでコストをかけてまで修繕・改修ができるか（投資回収できるか）真剣に考える必要が出てきます。
一方で所有者がどうしても貸したい・売りたいと考えている空き家があっても、一般的に空き家の資産価値・市場価値は低く、不動産市場では商売にならないことから、空き家の状態はほぼ開示されていない。そのため利用希望者と所有者との接点がなく、運よく良さそうな空き家が見つかっても建築物自体の状態も程度も分からない場合が多い。この状態では、再利用に必要な修繕・改修工事のコストもリスクも予想がつかないため、手が出せる人は限られてしまう。
空き家活用に特化したウェブサイトまとめ
所有者にとっても利用者にとってもハードルが高い空き家活用ですが、空き家活用に特化したウェブサイトしかりマッチングサービスが出てきました。こうしたサイトを通して空き家活用へとつなげていくのが一つ近道になると思います。
家いちば
「家いちば」は仲介会社を通さずに空き家の売り手と買い手が直接交渉できるウェブプラットフォームです。なかなか流通しない空き家や空きビルの一室などが掲載されていて見ていて面白いです。契約の段階では宅地建物取引士が細かい条件などをチェックして安全で円滑な取引をまとめてくれるので安心です。
（出典：家いちば 空き家売ります掲示板）
ハロー！RENOVATION
空き家を使って事業を始めたい人、空き家を活かしたいと考える所有者にとってのウェブサイト「ハロー！RENOVATION」は空き家活用に関する情報が詰まっています。空き家活用の事業計画をウェブサイト上に登録しておくと、サイトを見た人たちが様々なアイデアをくれたりします。
（出典：ハロー! RENOVATION）
＜以下、2018年6月3日追記＞
これまでの「ハロー！RENOVATION」はβ版だったみたいで、2018年6月1日に空き家・遊休不動産を対象とした投資型クラウドファンディングサービスを搭載したまちづくり参加型クラウドファンディング「ハロー！RENOVATION」に正式ローンチされました。これまでの「購入型」「寄付型」に加え、「投資型」のクラウドファンディングが実装されました。こちらのプロジェクトは一口5万円です。新しい不動産投資のスタイルです。
（出典：泊まれる蔵プロジェクト｜プロジェクト概要｜ハロー! RENOVATION）
商い暮らし
1階は店舗で2階は住宅というような店舗付き物件専門のウェブサイト「商い暮らし」はその名の通り、商いと暮らしを両方したい人のためのサイトです。空き家で街を元気に-社会運動という書籍の中川寛子さんの記事で知りました。
（出典：商い暮らし | 店舗付き住宅の賃貸物件と売買物件をご紹介）
rerererenovation
言わずと知れたリノベーションスクールの会社「リノベリング」が運営する全国のリノベーション事例やリノベーションスクールの情報などを発信しているウェブサイト「rerererenovation」。物件単体の価値を上げるだけではなくエリアの価値をも高めるというリノベーションまちづくりの取組がたくさん掲載されています。
（出典：全国のリノベーションプロジェクト｜ReReRe Renovation!）
カリアゲJAPAN
築30年以上の空室・空き家を借主負担で改修し、借主が6年間運用するオーナー負担ゼロの空き家活用方法である「カリアゲ」というサービスを軸に空き家の再生に取り組んでいる「カリアゲJAPAN」。空き家所有者にとっては、固定資産税分の収益と費用負担ゼロでリノベーションしてくれるというメリットが大きいです。
（出典：カリアゲJAPAN - 全日本空き家流通化サービス）
最終更新日：2018年6月3日
