マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

原則として用途変更できなかった市街化調整区域で既存建築物の用途変更が可能に

日本の都市計画の枠組み

日本の都市計画の枠組みでは全国土3,780万ヘクタールのうち約3分の1程度が都市計画法にいう「都市計画区域」に指定されています。そしてその中に、市街化を促進すべきとする区域である「市街化区域」と原則として市街化を抑制すべきとする区域である「市街化調整区域」があります。この区分を一般的に「線引き」と言い、これ以外に「非線引き区域」があります。今回の記事の本題ではありませんが、非線引き区域及び都市計画区域外は開発規制が緩く無秩序かつ無計画に居住地が拡大する温床となっていることは都市計画が専門の野澤千絵教授の著書などで指摘されています。

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(画像引用元:本格的な人口減少社会に向けた都市政策の在り方〜立地適正化計画の現状と課題〜

東京都はほとんどが市街化区域

では東京都はどのようにして都市計画の線引きがなされているかですが、ほとんどが市街化区域です。八王子の西半分が市街化調整区域、奥多摩町などは都市計画区域外となっています。

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(画像引用元:本格的な人口減少社会に向けた都市政策の在り方〜立地適正化計画の現状と課題〜

市街化調整区域で既存建築物の用途変更が可能に

前置きが長くなりました。人口減少や高齢化が進行していく中でこれまであった住宅や建物の利活用が全国的に課題となっています。市街化調整区域では無秩序な市街化を防止するため建築物の新築や改築、用途変更が制限されていたわけですがこの度、東京都によると市街化調整区域において空き家等の活用を促進するために開発許可の審査基準が改正されます。これにより原則として用途変更できなかった市街化調整区域で既存建築物の用途変更が可能になり、空き家となっている農家住宅が観光振興や地域再生につながるようなシェアハウスや二地域居住用の住宅となったり、空き校舎がサテライトオフィスや研修施設へと生まれ変わる余地が生まれました。今年4月以降の受付案件から適用されます。

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(画像引用元:市街化調整区域において開発許可の審査基準を改正|東京都

既にいくつか廃校活用されている事例はある

空き校舎、つまり廃校ですが、既に活用されている事例はあります。農業体験や自然体験をして宿泊もできる滞在型観光施設である戸倉しろやまテラスは、2013年3月に閉校したあきるの市立戸倉小学校を用途変更させています。他にもテレビや映画等の撮影場所やドローンの飛行テスト場などとして使える多目的スペースであるOKUTAMA Fieldは2004年に廃校になった旧小河内小学校が廃校活用されています。しかしこれらはあくまでも自治体が主体となっていました。そこで民間企業やNPOの参入を促すために今回の基準変更が行われました。

多摩地域では廃校の空き校舎を自治体が観光施設として活用し、地域活性化につなげる動きが出ている。ただ現行制度では民間が空き家や空き校舎を観光振興や集落維持に活用する用途変更ができない。都は用途変更を柔軟にすることで、企業やNPO法人による地域再生の活動を促す。

多摩の空き家や廃校活用しやすく 都が基準変更 :日本経済新聞

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(画像引用元:戸倉しろやまテラスとは|泊まれる学校 戸倉しろやまテラス|秋川渓谷戸倉体験研修センター

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(画像引用元:奥多摩フィールド(旧・小河内小学校)| OKUTAMA Field

古民家カフェ、レストラン、民泊…様々なコンテンツに用途変更が期待

市街化調整区域ですので田畑も多く、公共交通やインフラ整備などが行き届いていないこともあるようですので移住・定住するというよりも交流人口を増やすというか、定期的に訪れたくなるような場をつくることが一つ大きな目的になると思います。農家住宅だった空き家をカフェやレストラン、民泊施設などへと用途変更するといったケースが今後考えられます。また、今回の開発許可基準の変更は2016年12月に国が開発許可制度運用指針の一部改正を行ったことが遠因になっています。あくまでも市街化を拡大させないことが前提なので、どのように空き家などを用途変更させ魅力的なコンテンツに育てていくかは自由な発想と冷静な分析、果敢な行動が必要です。

実際の運用はそれぞれの自治体に委ねられるが、いずれにしても今後は竹林に囲まれた「隠れ家レストラン」や「古民家カフェ」、農林漁業の営みを体験できるような宿泊施設なども少しずつ増えていくだろう。民泊が解禁されれば、田畑に囲まれた民泊施設も生まれそうだ。
だが、市街化調整区域では飲食店や宿泊施設の営業に適さない立地の場合も少なくない。古民家カフェなどに興味を持ちそうな大都市の若い世代は車を所有していないことも多く、電車で行きづらい場所ではなかなか客が集まらないことも考えられる。グル−プホームなどに用途変更できる既存建築物も限られるだろう。さらに、立地適正化計画などによる「コンパクトシティ化」の流れとは逆行する場面が出てくるかもしれない。

市街化調整区域での用途変更が認められやすくなる?国土交通省が指針を改正