空き家問題と聞いてまず何を思い浮かべるでしょうか。一軒家の空き家や空き部屋、マンションやアパートの空き室、商店街の空き店舗、空きテナントなど思い浮かぶと思います。
空き家とは
まずは「空き家」の定義から。
(1)賃貸用の住宅
新築・中古を問わず、賃貸のために空家になっている住宅
(2)売却用の住宅
新築・中古を問わず、売却のために空家になっている住宅
(3)二次的住宅
別荘...週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、ふだんは人が住んでいない住宅
その他...ふだん住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅
(4)その他の住宅
上記以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅 など
(2)売却用の住宅と(3)二次的住宅については特に問題ありません。人の出入りがあり管理がなされるからです。
問題になるのは入居者が決まらない(1)賃貸用の住宅と長期不在等で放置されている(4)その他の住宅です。
割合で言っても賃貸用の住宅が54.5%、その他の住宅が35.4%と大多数であり、この二種類の空き家についての考察がメインになります。
8戸に1戸が空き家
日本全国の空き家数は年々増加しています。2008年の空き家数は757万戸、空き家率は13.1%です。つまり8戸に1戸は空き家になっているのです。例えば自宅から駅まで歩いてみても空き家を簡単に見つけられると思います。
空き家が増加しているのは統計データが証明しています。では空き家の増加でどのような問題が起こるのでしょうか?
外部不経済をもたらす
外部不経済とは空き家があることによって「外部にもたらされる悪影響」のことです。雑草が繁茂したり衛生害虫の巣になったり、不審者が出入りして犯罪の温床になったり、そもそも外壁や窓ガラスが破損したりして近隣に物理的に被害をもたらしていたり。
ご近所に「空き家」増殖中!いまや8戸に1戸…不審者住みついたりゴミ捨てられたりで大迷惑 : J-CASTテレビウォッチ
こうした外部不経済の問題は「その他の住宅」の空き家に多いです。賃貸用や売却用として市場に出回っている限りは最低限の物件管理は行われているはずなので物件が朽ち果てていくことはよっぽどのことがない限り考えられないと思います。平成20年住宅・土地統計調査によると「賃貸用の住宅」の空き家数が413万戸、「売却用の住宅」の空き家数が35万戸。「その他の住宅」の空き家数は268万戸です。
「その他の住宅」の空き家が増加するケースとしては、
その他の空き家は、居住者が何らかの理由によって長期間不在になっているものであるが、今は居住者がいなくとも、いずれ誰かが使う予定になっていて適切に管理されているならば問題はない。しかし、誰も使う予定のないまあ放置されているケースでは、外部不経済の問題を発生させる可能性が高くなる。
そうなんです。誰も使わないでまたは使う予定のない放置された物件が問題なのです。
居住していた親は亡くなったが、使っていた家財道具や仏壇が残されており、愛着があって貸したり手放したりすることができない、あるいは年数回の帰省の際に使うために残しておきたいなどの理由により、空き家のままにされているケースは多い。
「愛着」という心情面・感情面っていうのは大きいと思います。見知らぬ誰かに使われることには抵抗があるのは自然です。
また、市場に出したとしても、借り手や買い手がつく可能性がほとんどないと考えられる地域では、空き家のままにしておくしかないという場合もあろう。
立地条件や築造の状態などによっては”通常の”不動産市場では買い手が見つからないケースはありうると思います。
このほか、その他の空き家の中には、相続した人を含め、所有者が所在不明になっているケースもあると考えられる。
”所有者の所在不明”っていうのは空き家問題の大きな原因の一つです。兄弟姉妹など相続人が複数いて意見がまとまらないといったことや所有者が遠方に住んでいたり、登記を書き換えていなかったり。
「その他の住宅」の空き家の問題は以上です。しかし空き家の種類で一番大きなウェイトを占めるのは「賃貸用の住宅」の空き家です(54.5%)。「賃貸用の住宅」の空き家が増加することで起きる問題はなんでしょうか?
(画像引用元)
不動産市場の需給のミスマッチ
つまり人口減少して需要が減っているのに新築物件作って供給増やして空き家という余剰が発生してしまうということです。
人口構造の重要な要素である総人口は、2010年の国勢調査の1億2,805万人をピークに、今後50年間に4,132万人の減少が見込まれている*。
世帯に目を向けると単身世帯や夫婦のみ世帯の増加などで世帯数は当面増えていくようです。
農業が中心だった時代には、三世代が同居する「拡大家族」も珍しくなかったが、戦後、勤労世帯が増え、「夫婦と子どもからなる世帯」の核家族が「標準家族」になった。今日では核家族の高齢化により単独世帯や夫婦のみ世帯が増加、世帯規模の縮小が続いている。その結果、2010年以降は「人口」が減少しながらも「世帯」は増加を続けるのである。
しかし世帯数の増加も2020年頃まででそれ以降は世帯数も減っていく予測が出ています。
しかし、2019年には世帯数も減少局面を迎える。これまでは人口・世帯がともに増加してきたが、今後5年間の人口は減少し世帯は増加、それ以降は人口と世帯がともに減少する時代が訪れるのだ。
「人口・世帯」減少時代においては住宅需要は減る一方ということは、これまで通りの売り方では通用しないということを意味します。
ありきたりですが付加価値をいかに創出するか、お客さんが「おっ」と思うような魅力的なサービスを提供できるかにかかっていると思います。
コンバージョン・リノベーションで新しい価値創出
コンバージョンは用途変更のことで住宅として使っていたけどミニ保育園にするとかです。リノベーションはリフォームよりも新しい価値を追加するような改修のことです。つまり空き家に少し手を加えたり、「住む」だけでなく「学ぶ」「交流する」「育てる」「遊ぶ」場所として転用する発想でいくらでも空き家活用の可能性は広がると思います。
空き家をシェアハウス、パン屋、図書館に。
シェアハウス・ゲストハウス『地球に宿借りJamHouse』の公式サイトです。 - シェアハウス・ゲストハウス『地球に宿借りJamHouse』の公式サイトです。
練馬区南大泉の自家製酵母パンとスコーン、ビスケット まあるいぱんや|yaplog!(ヤプログ!)byGMO
空き家を定員6名から19名以下の「ミニ保育園」に。
http://komazaki.seesaa.net/article/222293766.html
http://komazaki.seesaa.net/article/193191480.html
保育NPO、社会起業家という生き方 -対談:フローレンス代表理事 駒崎弘樹×田原総一朗 新しい日本のチカラ:PRESIDENT Online - プレジデント
《スマート保育とは》 都会の空き店舗や空き家などを活用し、定員6人以上19人以下の小規模保育施設を作ろうという新事業のこと : 深刻なところまできてた保育園不足の影響 - NAVER まとめ
空き家を低所得高齢者のケア付き賃貸住宅に。
『空き家活用~低所得高齢者向けケア付き賃貸住宅~』 | 成長産業 | 大阪 新規事業・企業再生のための資金調達に【クレド株式会社】
空き家オーナーさんと空き家を活用する事業者とがつながることでこのような事業が生まれたものと思います。空き家の存在と場所を探している事業者の存在、ここの出会いにヒントが隠されていそうです。これ以外にも空き家活用の事例はたくさんあります。アイデアと行動次第でいくらでも開拓のフィールドが広がっているのが空き家活用といえそうです。
今回は空き家問題の解決策として「活用」しか書いていませんが国や自治体では「適正管理の促進」や「除却」といった対策を主に進めています。このあたりのことについてはまた今度書きます。
*1:統計局ホームページ/平成20年住宅・土地統計調査 用語の解説 ≪ 住宅 ≫
*2:統計局ホームページ/平成20年住宅・土地統計調査(速報集計)結果の要約
*3:空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げ-米山-秀隆P24
*4:同上
*5:同上
*6:同上P25
*7:「人口・世帯」減少時代への備え−「世帯」が増え続ける時代の終焉 - 土堤内 昭雄
*8:同上
*9:同上