空き家対策に政府も本腰を入れ始めた
空き家対策の萌芽は地方自治体から始まりました。2010年に所沢市で制定された「所沢市空き家等の適正管理に関する条例」を皮切りに全国各地で「空き家対策条例」がつくられました。昨年秋の時点で約270の自治体が制定しています。そして国もようやく本腰を入れ始めました。
適切に管理されずに崩れて通行人にけがをさせたり、放火されたりする恐れがあるなど、空き家の増加が社会問題化して久しいが、ようやく政府・与党も抜本的な対策に乗り出した。各地の自治体の取り組みに背中を押された形で、持ち主に対して修繕や解体を促す仕組みを整備しようというのだ。
自民党の空き家対策推進議員連盟(宮路和明会長)は「空き家等対策の推進に関する特別措置法案」をまとめ、今国会に議員立法で提出する方針だ。
2010年10月施行の所沢市の空き家対策条例からわずか3年で全国の約270の自治体で同じような条例がつくられたました。これは単なるブームと片付けられない全国に共通した課題があるからこそ、国が法律をつくって全国に空き家対策を行き渡らせることには大きな意義があります。
動画もあったので貼付けておきます。
「放置空き家」自民が対策法案提出へ 税優遇など柱(14/04/09) - YouTube
空き家対策特別措置法案のポイント
法案のポイントとしては、
法案ではまず、老朽化で倒壊する危険があったり、景観や衛生を損なったりしている空き家を「特定空き家」に指定。市町村が特定空き家の家主に除却や修繕、立ち木の伐採などを指導・助言したり、勧告・命令したりできるようにする。
今は空き家対策条例を独自に制定している自治体にしか、空き家のオーナーへ除却や修繕などの指導・助言などは行えませんでしたが、本法案が通れば全国の自治体でこのような「権限」が与えられるようになります。
特定空き家を含むすべての空き家を対象に、家主の把握などを目的にした情報収集方法も明記。市町村は家主の許可がなくても立ち入り検査ができるようにし、特に守秘義務が厳しい固定資産税情報の内部利用も認める。
そもそも除却や修繕などの連絡をする際に、空き家オーナーの方の連絡先が必要なのは言うまでもありません。しかし、登記がされていなかったりしてオーナーの連絡先がわからないというケースがあります。この場合、税務部門のセクションでは固定資産税などの税務台帳というものがあってオーナーの連絡先は把握しているのですが、守秘義務という名目のため行政組織内部での利用ですらスムーズにいかなかった実態がありました。「固定資産税情報の内部利用も認める」ことでその問題点を大幅に克服するのではないかと思います。
市町村には空き家の情報を一元化したデータベース(DB)を整備する努力義務を課し、空き家や除却跡地に関する情報提供とこれらのストック活用策も求める。
どの地域にどの位の空き家が存在するのかの把握は除却にせよ活用にしろ重要です。
政府は今国会で新法が成立すれば、15年度予算の概算要求や税制改正要望に反映させたい考えだ。
法案が今国会で通れば予算や税制改正への反映へとつながるはずです。今国会での「空き家特別対策措置法案」に対する議論が楽しみです。今秋には空き家対策に対する基本指針が出されるとのこと、本ブログではこの辺のトピックも書いていきます。
2014年度は今後の空き家対策の重要な節目
空き家法案のほかにも、5年に1回の統計である総務省「住宅・土地統計調査」の2013年時点の結果が今夏発表される予定です。このことは次回書きます。
空き家の増加が地方、都市部を問わず深刻な問題になっていますが、「空き家対策法案」の今通常国会への提出が予定され、また7月には、5年に1回の統計である総務省「住宅・土地統計調査」の2013年時点の結果が発表され、最新の空き家率が判明する予定になっているなど、2014年度は今後の空き家対策を考えていく上で、重要な節目になると考えられます。
私の視点 : 富士通総研「注目される空き家対策法案と空き家率の最新統計」富士通総研 米山 秀隆
(参考)
日刊建設工業新聞の記事がわかりやすかったので記事全文貼付けします。
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自民議連/空き家対策推進へ14年秋にも基本指針/市町村権限で除却・修繕命令 [2014年4月10日1面]
日刊建設工業新聞 » 自民議連/空き家対策推進へ14年秋にも基本指針/市町村権限で除却・修繕命令
自民党の空き家対策推進議員連盟(宮路和明会長)は9日、今国会に議員立法で提出する空き家対策推進特別措置法案を同党の国土交通・総務合同部会に示し、了承された。防災や景観などに悪影響を及ぼす恐れのある空き家の増加を防ぐため、市町村の権限で家主に除却や修繕を命令できるようにする。国は税財政面で市町村や家主を支援する。国土交通、総務両省は合同で今秋にも空き家対策に関する基本指針を策定する。
法案ではまず、老朽化で倒壊する危険があったり、景観や衛生を損なったりしている空き家を「特定空き家」に指定。市町村が特定空き家の家主に除却や修繕、立ち木の伐採などを指導・助言したり、勧告・命令したりできるようにする。命令に従わない家主には50万円以下の過料を科すほか、行政代執行も可能にする。
特定空き家を含むすべての空き家を対象に、家主の把握などを目的にした情報収集方法も明記。市町村は家主の許可がなくても立ち入り検査ができるようにし、特に守秘義務が厳しい固定資産税情報の内部利用も認める。市町村には空き家の情報を一元化したデータベース(DB)を整備する努力義務を課し、空き家や除却跡地に関する情報提供とこれらのストック活用策も求める。
市町村には、国交、総務両省が定める基本方針に沿って空き家対策計画も策定してもらい、都道府県には市町村への技術的助言などを求める。
国は、空き家対策にかかる費用への補助や地方交付税の拡充といった特例措置を実施する。政府は今国会で新法が成立すれば、15年度予算の概算要求や税制改正要望に反映させたい考えだ。
自民党や国交省によると、全国に約5700万戸ある全住宅ストックのうち空き家は約13%に当たる756万7900戸に上り、この20年で倍増。今後も増えるとみられている。昨年10月時点で272の自治体が空き家対策条例を設けているが、自民党は対策強化に向け法律で全国一律のルールを導入することにした。
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