条文のポイントを整理するpart4(これで最後)
「空き家対策特別措置法」の全条文(16条)を一つ一つ取り上げてまとめる”逐条”の第4回(最後)です。part1(第1条〜第4条)はこちら。part2(第5条〜第8条)はこちら。part3(第9条〜第11条)はこちらです。
所有者等による空家等の適切な管理の促進(第12条)
市町村は、所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、これらの者に対し、情報の提供、助言その他必要な援助を行うよう努めるものとする。
第3条では空き家所有者は周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないように空き家の適切な管理に努めるように「空き家所有者の責務」がうたわれていました。この第12条では「市町村が空き家所有者に対して情報提供、助言、必要な援助を行う」ことがうたわれています。市町村の空き家対策としては基本的な取組ですね。
空家等及び空家等の跡地の活用等(第13条)
市町村は、空家等及び空家等の跡地(土地を販売し、又は賃貸する事業を行う者が販売し、又は賃貸するために所有し、又は管理するものを除く。)に関する情報の提供その他これらの活用のために必要な対策を講ずるよう努めるものとする。
第11条の「空き家データベースの整備」とも共通しますが、空き家の活用、空き家を撤去した跡地の活用に必要な対策を実施する旨がうたわれています。
特定空家等に対する措置(第14条)
(第1項)市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
(第2項)市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。
(第3項)市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
(第4項)市町村長は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対し、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
(第5項)前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から五日以内に、市町村長に対し、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
(第6項)市町村長は、前項の規定による意見の聴取の請求があった場合においては、第三項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。
(第7項)市町村長は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第三項の規定によって命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の三日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
(第8項)第六項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
(第9項)市町村長は、第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
(第10項)第三項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第一項の助言若しくは指導又は第二項の勧告が行われるべき者を確知することができないため第三項に定める手続により命令を行うことができないときを含む。)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
(第11項)市町村長は、第三項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令・総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
(第12項)前項の標識は、第三項の規定による命令に係る特定空家等に設置することができる。この場合においては、当該特定空家等の所有者等は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
(第13項)第三項の規定による命令については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。
(第14項)国土交通大臣及び総務大臣は、特定空家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。
(第15項)前各項に定めるもののほか、特定空家等に対する措置に関し必要な事項は、国土交通省令・総務省令で定める。
この条文が一番ボリュームが大きいです。「特定空き家」つまり「危険、衛生上有害、景観を損なっている、周辺の生活環境の保全のために不適切な空き家」のことですね。第1項から第15項までありますが重要度は前半が高くて後半は細かい手続き規定が多いです。
ということで第1項は「市町村」が「特定空き家の所有者」に対し、「特定空き家の除却、修繕、立木の伐採、その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置」をとるように「助言か指導」をすることが出来る旨をうたっています。
次に第2項では「助言か指導」をした場合に、「その特定空き家の状態が改善されないとき」には、特定空き家の所有者に一定の猶予期間を設けて「特定空き家の除却、修繕、立木の伐採、その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置」をとるように「勧告」することが出来る旨をうたっています。
さらに第3項では「勧告」を受けてもまだ「正当な理由」がなくて「勧告に係る措置をとらなかったとき」には、特定空き家の所有者に一定の猶予期間を設けて「勧告に係る措置」をとるように「命令」することが出来るとあります。「助言か指導」する→改善されない→「勧告」する→勧告に係る措置がとられない→「命令」、と段々と強制力が強くなっていくのがポイントです。
第4項から第8項までは手続き的な規定です。第4項は「命令」したときに特定空き家の所有者に対し、「命じようとする措置」「その理由」「意見書の提出先と提出期限を記載した通知書を交付」をして「反論の機会」を提供しなければいけない旨です。
第5項は「通知書の交付」を受けた特定空き家の所有者は「交付を受けた日から5日以内」に市町村に対し、「意見書の提出」「公開による意見聴取」を行うことを請求することが出来る旨。
第6項は市町村は特定空き家の所有者から「意見聴取」の請求が合ったときは「命令」を命じた部署の出頭を求めて「公開による意見聴取」を行わなければならない旨。
第7項は「意見聴取」を行う場合、「命じようとする措置」「意見聴取の期日と場所」を「期日の3日前まで」に特定空き家の所有者に「通知」して「公告」しなければいけない旨。
第8項は「意見聴取」に当たり、双方とも、「証人を出席」させたり「自分にとって有利な証拠を提出すること」ができる旨。
そして最も大きな強制力である「代執行」が規定されているのが第9項。 「命じられた措置を特定空き家の所有者が履行しないとき」「履行しても十分でないとき」「履行しても期限までに完了する見込みがないとき」には「行政代執行法」に従い、「市町村自ら特定空き家の所有者が果たすべき義務(つまり修繕や改修や清掃など)を実行する」ことが出来る旨がうたわれています。この「行政代執行」が規定されることで市町村からの働きかけを無視し続けたりすると強制撤去もありうるということになります。重要なのはここくらいまでですね。
後は細かいので簡潔に書きます。第10項は「命令」を通知することが出来ない場合(特定空き家の所有者に連絡がつかないなど?)は市町村自らが必要な措置を行うことができる旨。第11項は「命令」をしたときは標識の設置など公示しなければならない旨。第12項は「標識の設置」は命令に係る特定空き家に設置することができる旨。第13項〜第15項は省略。
財務上の措置及び税制上の措置等(第15条)
(第1項)国及び都道府県は、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、空家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(第2項)国及び地方公共団体は、前項に定めるもののほか、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、必要な税制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
第1項は国、都道府県による市町村の空き家対策に対する費用補助、地方交付税制度の拡充といった「財政支援」を行う旨。第2項は「税制支援」を行う旨。
過料(第16条)
(第1項)第十四条第三項の規定による市町村長の命令に違反した者は、五十万円以下の過料に処する。
(第2項)第九条第二項の規定による立入調査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、二十万円以下の過料に処する。
これで最後。「命令」に違反した場合は「50万円以下の過料」を支払わなければならない旨。「立入調査」を拒み、妨げ、忌避した場合は「20万円以下の過料」。罰金を取るんですね。
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法律の全文はこちら。
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