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「空家等対策の推進に関する特別措置法」逐条まとめpart3

条文のポイントを整理するpart3

 

「空き家対策特別措置法」の全条文(16条)を一つ一つ取り上げてまとめる”逐条”の第3回です。part1(第1条〜第4条)はこちら。part2(第5条〜第8条)はこちらです。

 

立入調査等(第9条)

 

(第1項)市町村長は、当該市町村の区域内にある空家等の所在及び当該空家等の所有者等を把握するための調査その他空家等に関しこの法律の施行のために必要な調査を行うことができる。
(第2項)市町村長は、第十四条第一項から第三項までの規定の施行に必要な限度において、当該職員又はその委任した者に、空家等と認められる場所に立ち入って調査をさせることができる。
(第3項)市町村長は、前項の規定により当該職員又はその委任した者を空家等と認められる場所に立ち入らせようとするときは、その五日前までに、当該空家等の所有者等にその旨を通知しなければならない。ただし、当該所有者等に対し通知することが困難であるときは、この限りでない。
(第4項)第二項の規定により空家等と認められる場所に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
(第5項)第二項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 

 

いよいよ各論めいた内容になってきます。第1項は「市町村」は「その区域内の空き家の所在地、所有者を把握するための調査」といった空き家対策に必要な調査を行うことが出来るということをうたっています。

 

第2項は第14条第1項〜第3項までの規定(特定空き家に対する措置)の施行に必要な限度で「職員による空き家と認められる場所への立入調査が可能」という内容です。

 

第3項は空き家の立入調査をする場合は「5日前までに所有者に連絡をしなくてはいけない」ということです。

 

第4項は空き家の立入調査をする場合、職員や委任された人は身分証明書を携帯して、関係者から請求があれば提示できるようにしておかなければいけない。

 

第5項は空き家の立入調査権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈していはいけない旨。

 

空家等の所有者等に関する情報の利用等(第10条)

 

(第1項)市町村長は、固定資産税の課税その他の事務のために利用する目的で保有する情報であって氏名その他の空家等の所有者等に関するものについては、この法律の施行のために必要な限度において、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。
(第2項)都知事は、固定資産税の課税その他の事務で市町村が処理するものとされているもののうち特別区の存する区域においては都が処理するものとされているもののために利用する目的で都が保有する情報であって、特別区の区域内にある空家等の所有者等に関するものについて、当該特別区の区長から提供を求められたときは、この法律の施行のために必要な限度において、速やかに当該情報の提供を行うものとする。
(第3項)前項に定めるもののほか、市町村長は、この法律の施行のために必要があるときは、関係する地方公共団体の長その他の者に対して、空家等の所有者等の把握に関し必要な情報の提供を求めることができる。 

 

空き家問題をややこしくしている原因の一つに「空き家所有者へ連絡が出来ない」という問題があります。不動産登記は義務ではないため登記所に行って空き家の所在地を確認しても所有者はとは限らないわけです。ましてや空き家の郵便ポストに手紙を入れていても、定期的に管理されていてポストの中身を確認しているご家族などがいればいいですが、ほったらかしにしてある空き家ほど所有者と連絡を取るのが難しくなってきます。

 

そこでこの規定が効果的だろうと思います。つまり「固定資産税の課税などの事務のために保有している情報」を利用出来る、ということです。同じ行政組織内部で情報を活用するのは当然と思いきや、あくまでも固定資産税の課税などの事務のために利用する目的で収集された情報であるため、それ以外の利用は同じ行政組織内部でも認められない、という解釈が今までされてきたのです。この規定によって空き家所有者への連絡が効率的になります

 

第2項は東京都と23区(特別区)との関係がうたわれています。固定資産税は市町村税なのですが23区の場合は東京都(都道府県)が課税処理しています。いわゆる”都税事務所”ですね。で、「23区から空き家所有者の情報提供を求められたときには都税事務所なり東京都は速やかに情報提供を行わなければいけない」ということがうたわれています。

 

第3項はさらに関係する地方自治体にも空き家所有者の情報提供について求めることが出来る旨がうたわれています。

 

空き家等に関するデータベースの整備等(第11条)

 

市町村は、空家等(建築物を販売し、又は賃貸する事業を行う者が販売し、又は賃貸するために所有し、又は管理するもの(周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切に管理されているものに限る。)を除く。以下第十三条までにおいて同じ。)に関するデータベースの整備その他空家等に関する正確な情報を把握するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 

 

住宅メーカーや不動産仲介業者の売買物件や賃貸物件の中の空き家や空き室についてのデータベースを整備すること販売・賃貸用の空き物件はデータベースには含まれないようです。しかし、たとえ販売・賃貸用でも近隣に悪影響を及ぼすような空き物件だとデータベースの掲載対象になります(そもそもそんな状態で販売・賃貸用で市場取引にさらされているのは疑問ですが)<2015.3.5追記>。また、正確な情報の把握のために必要な取組を行うこと。 果たして行政組織がどのような空き家データベースを作るか、注目です。「空き家バンク」といった感じになるのか、今後次第ですね。

 

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