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空き家を活用して新しい価値をつくる

”空き家を活用して子育て世帯を呼び込む”「課題先進地」夕張で25歳の若者が空き家問題の解決に挑む

「課題先進地」夕張の空き家率は33%

 

前回記事では2020年の東京オリンピック以降、人口減少と高齢化、そして空き家の増加がますます社会的課題として存在感を大きくなっていくことについて書きました

 
そして「人口減少と高齢化、そして空き家の増加」という社会的課題が既に現在においても先鋭化・顕在化しているのが北海道夕張市です。夕張市は2007年に財政破綻し350億円もの借金を背負いました。その結果、最盛期は12万だった人口も1万人を切り、高齢化率は46%、空き家率は33%(平成20年住宅・土地統計調査:空き家数2,710÷住宅総数8,210)という状況です。
 
 夕張市は北海道のほぼ中央に位置する都市です。夕張メロンでご存じの人も多いと思います。かつては明治24年の炭鉱開始以来、炭鉱の町として栄え、最盛期の人口は12万近くを数えていました。しかし、昭和40年代に入り、産業のエネルギー源は石油に変わります。炭鉱は次々に閉山し、人口も今は1万人を切りました。そして現在夕張市は、自治体の倒産にも等しい「財政再生団体」になった唯一の都市です。
 

25歳司法書士、夕張市内で唯一の不動産会社を立ち上げ

 

夕張市内で唯一の不動産会社を立ち上げた今川さんは現在25歳。20年近く司法書士が不在だった夕張で2012年12月から事務所を開き、相続などの相談に乗ってきたそうです。そして司法書士の業務の中で空き家問題を実感されたそうです。

 

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画像引用元

 

今川さんは仕事を通じ「司法書士業務の中心となる不動産の動きが、夕張は極めて少ない」とも実感した。市が炭坑会社引き取った炭坑住宅を改良した市営住宅の数が多く、民間賃貸住宅の供給が乏しいためだ。

夕張唯一の不動産会社設立 25歳の今川さん「空き家と子育て世帯橋渡し」−北海道新聞[道央]

 

夕張は元々炭坑の街でした。旧炭鉱住宅を受け継いだ市営住宅は約3700戸。世帯数(約5,500世帯)に対する公営住宅の割合は全国一の多さです。夕張市の総住宅数は8210ですから、住宅の45%が公営住宅ということです。公営住宅なので入居には所得制限があるため誰もが入居できるわけではありません。そのため夕張市内に職場があるにもかかわらず適当な物件が見つからない(そもそも民間賃貸住宅が少ない!)ため近隣の自治体に住む人も多いそうです。

 

そんな夕張で宅地建物取引主任者の資格も持つ今川さんは「誰も不動産業をやらないなら、自分が手がけよう」と決意したそうです。若い世代の定住につなげるために集合住宅の賃貸も手がけていく予定だそうです。

 

「市内の空き家を改修し、子育て世帯に住んでもらえるように橋渡ししたい」

夕張唯一の不動産会社設立 25歳の今川さん「空き家と子育て世帯橋渡し」−北海道新聞[道央]

 

コンパクトシティに向けて舵を切っている夕張市

 

夕張市では2011年4月に鈴木市長が就任後は「日本初の人口減を前提とした都市再編計画」に着手しています。国道や北海道が管理する道道の沿線に市街地を集約するために新築・既存住宅への移転を実現するなど、コンパクトシティ化を進めています。

 

空き家をITベンチャーのサテライトオフィスに

 

例えば夕張市とよく似た状況の徳島県神山町(人口6,000人、高齢化率46%)ではNPO法人グリーンバレーが軸となって空き家をリノベーションしてサテライトオフィスを開設するなど、サテライトオフィス誘致や人材誘致に成功しています。

 

徳島県の神山町は人口6,000人、高齢化率46%の小さな町ですが、最近、若者や起業家の移住が増えたことで注目を浴びています。空き家再生と若者の定住を目的とした街づくりプロジェクトが契機になり、現在、9社のIT系ベンチャー企業が古民家を改修したサテライトオフィスを開設、移住者の増加に伴ってパン屋やカフェ、ビストロなどの店舗、図書館などが相次いで開業して町が大きく変わりはじめているのです。

<中略>

徳島県は過疎地域にまで高速・大容量の通信回線を整備しており、このような情報通信インフラがサテライトオフィス誘致や人材誘致に貢献している点も特筆すべきです。

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夕張市も徳島県神山町のように空き家を活用してITベンチャーのサテライトオフィスへとリノベーションしたりすると面白いと思います。インターネット利用環境さえ整っていれば”場所にこだわらずに”働ける人たちをメインに呼ぶ込むようにするとか、ターゲットを絞ってシティープロモーションしたり。移住しても仕事がないと生活していけないので、こういった「クリエイター」たちにとって魅力的な町へ進化していくと新しい展望が開けてくると思います。

 

インターネットが登場・発展したおかげで、ぼくみたいに「ネットさえあれば、とりあえず食っていける」人は増えました。自分の身一つでコンテンツを生産し、収益化できる「クリエイター」層はその代表格です。

これまで、クリエイターは東京で仕事をすることが当然のこととされてきました。東京には、仕事もありますし、人もいるからです。勉強会なども盛んですから、東京は「学ぶ」には大変いい環境です。

でも、そろそろ東京は「卒業」してもいいと思うんですよ。ぼくはもう、東京で3年、クリエイターをやりました。そろそろ、自分の力を別の環境で試す時期に来ているように感じます。東京で働く延長線に何があるかは、おぼろげに見えてしまっていますし。未来にワクワクしないのは、健全ではありません。

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