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空き家を活用して新しい価値をつくる

「日曜討論『人口減少 どうする空き家問題』2014年8月10日放送」文字起こし

「日曜討論」のテーマが「人口減少 どうする空き家問題」だったので文字起こしします。

 

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画像引用元)空き家問題の社会的関心が高まりつつあります。

 

いつもは9時から始まる予定が台風の影響で15時30分からの放送でした(1時間の番組です)。前半30分は見逃したので、2ちゃんサイトなどを参考に前半の概要を書きつつ、後半30分の放送分を文字起こしします。

 

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空き家の数が過去最多の820万戸

 

全国の空き家の数は820万戸。7戸に1戸が空き家という調査結果が先月発表された。

 

空き家が過去最多となるなか、放火とみられる火事や台風、大雪などによる倒壊が相次いでいる。

 

危険な空き家をどう減らすのか、自治体は対策を迫られている。条例を制定し空き家の強制撤去に踏み切るケースもある。例えば東京都大田区。

 

空き家の問題にどう向かうべきか、自治体責任者や専門家、NPOの皆さんに討論していただく。

 

しゃべるひと

○井出多加子さん(成蹊大学教授)

○上田真一さん(NPO法人空家・空地管理センター事務局長)

○米山秀隆さん(富士通総研上席主任研究員)

○増田寛也さん(元総務大臣・東京大学大学院客員教授)

○森民夫さん(新潟県長岡市長・全国市長会会長)

○島田敏男さん(解説委員)

○中川緑さん(アナウンサー)

 

空き家の場合は固定資産税の優遇措置を適用除外する

 

空き家の増加の背景には人口減少はもとより税制も影響している。住宅が建つ土地の固定資産税の軽減措置を空き家にも適用していること。

 

増田:この固定資産税の優遇措置は1973年(昭和48年)に出来た制度。農地を出来るだけ住宅にして住宅不足を解消しようとした。しかし、人が住めないぐらいボロボロになった住宅は適用除外とすべき。2、3年間の猶予期間を設けて除却などの流動化を促す必要がある。そうして少しずつ固定資産税の制度を本来の趣旨に戻していくべき。

 

島田:物件の状況に応じて固定資産税の課税内容を柔軟に変えていくという対策は現実的ですね。

 

増田:(空き家かどうかの)線引きをどこでするかという問題はあるが、基準とガイドラインを定めて運用していくことは可能だと思う。

 

森:運用に関して、それぞれ地域性があるので基礎自治体が(裁量をある程度もって)自由度のある制度にしてもらえるとありがたい。

 

空き家の活用について

 

島田:まだ使える空き家をどう活かしていくかが問題です。

 

中川:空き家の再利用を進めるのに多くの自治体が導入しているのが「空き家バンク」という制度です。一般社団法人が行った調査によると全国で374の市町村がこれを導入しています。自治体などが主体になって地元にある空き家の情報を集めて登録してホームページなどを通じて購入や賃貸を希望している人に紹介するという仕組み。しかし自治体によってはこの仕組みが上手く機能していないところも少なくありません。年間で1件も契約が成立しなかった自治体が3割近くのぼっています。しかし、森さんが市長を務める長岡市の空き家バンクは4年間で50件以上も賃貸や売買の契約につなげています。空き家バンクの成果を出すためにどんな工夫をしていますか?

 

森:物件の調査から情報発信と相談まで丁寧に行います。買う側、借りる側もトラブルに巻き込まれたくないので行政が間に入ると安心というのがあるよう。現在、長岡市の空き家バンクの登録件数自体は少なく19軒しかない。累計でも96軒しかない。その中で52軒成約しているので成約率は高い。

 

島田:長岡市は市町村合併で大きくなった。大きくなった市の中で空き家バンクが有効に機能する地域とそうでない地域との違いは現れ始めていますか?

 

森:市内で地域差はそれほど顕著には無いです。山間部でも地域活性化の拠点になった事例もあります。まだまだ掘り起こせば有効に使える空き家はたくさんあるんじゃないかと思っています。

 

島田:上田さん、空き家バンクについてはどう思いますか?

 

上田:私どもが活動している埼玉・東京で言うと、活用しようと思えば活用できる状況にある空き家が多いです。しかし空き家を一旦放置してしまうと、所有者が(活用する)きっかけがなかなか無いというのが大きな問題だと感じている。なので行政から「こういう空き家の状態になっているので解体、賃貸、売却しませんか」という働きかけがあるだけでも前進するケースもあると思う。一度放置した空き家を流動化するきっかけづくりをどうするかも重要だと思う。

 

島田:上田さんが活動している地域はかつての人口急増地域ですね。長岡とは違って大都市としての特性を感じることはあるりますか?

 

上田:今、空き家が多いのがニュータウンで開発されたような地域です。総じて駅から少し離れているなど一般的には市場性が低い地域です。こういった地域で空き家が増えているので空き家バンクしかり流動化する取組は必要だと思います。

 

井出:全く同じ考えです。地方の空き家バンクはターゲットがだいたいシニア世代というのが多いが、今後の地域活性化を考えるともっと色々な年代の方々を呼び込み地域を支えてもらうという仕組みをつくっていく必要があります。今後の空き家バンクの課題はいかに地元に若い人たちを呼び込んで雇用をつなげていくかです。

 

森:(大きくうなずく)例えば高齢で(空き家を)どうしていいか判断できない方もいます。その方に行政からきちんと説明して有効活用をお願いすれば貸そうと考える人も出てくると思います。空き家所有者に対して売ったり貸したりしたくなるような働きかけを行うことはすごく重要だと思います。

 

島田:米山さん、全国各地で色々な事例をご覧になっていますね。住民が自分の責任を果たしていこうとする意欲を育てていくというのが空き家バンクだと思いますが空き家バンクを広げていくためには今何が必要なんでしょうか?

 

米山:空き家バンク成功の要因は4つあると思っています。

(1)物件発掘

ホームページや広報での募集に加え、自治体によっては固定資産税の課税通知書に物件の登録を呼びかけるといった取組も行っています。他には、空き家が出たと聞きつけたら登録を頼みに行くなど。

(2)物件の問い合わせに対する親身になったコンサルティング

仕事や生活相談も含めます。移住後の地域との橋渡し役や先に移住した人を紹介したりもします。

(3)インセンティブ

お試し暮らし助成金や改修費補助といった費用負担を軽減する方向で。

(4)地域の魅力をいかにして発信できるか

全国他地域との違いを打ち出していく。

 

島田:増田さん、今の議論で空き家バンクを機能させていくためには地域の雇用の確保や魅力ある地域として定住者をいかに増やすかが重要なようですね。

 

増田:都市部と地方部で必要性は違ってきます。地方部は市場性が無いのでインセンティブを設けるのも必要だと思います。都市部では高齢者のグループホームの拠点にするとか、海外の留学生の住まいにするとか。

 

島田:不動産経済学が専門の井出さんどうでしょう。個人が住まう以外に空き家を地域活動の活性化に役立てるという側面はどうでしょう?

 

井出:むしろそのほうが地域にとって可能性は大きいです。そもそも人口が減っている地域では「専用住宅として住んでください」だけでは限りがあるので、もっと広い用途で住宅以外のものに使って行くということも必要になってくると思います。

 

島田:米山さん、公共の財産として活かしている先進事例はどんなのがありますか?

 

米山:空き家単体の活用ということだけではなく、地域活性化の観点から考えると、手に職を持っている人を誘致するのが良いです。地域では職・雇用を用意できないというケースが多いためです。あとは住宅セーフティーネットとしての活用があります。公営住宅の立て替えは今後(財政難から)難しくなっていきます。そこで家賃補助の制度を整備して空き家で代替していくことが考えられます。あるいは低所得・単身・高齢者で住む場所がなくて困っている人向けに空き家をグループホームにして見守りや生活相談のサービスをつけていくといったことも重要です。

 

島田:上田さん、大都市部での高齢化が早いスピードで進みますが米山さんが言うような活用は可能でしょうか?

 

上田:私どもに問い合わせで一番多いのは「空き家を借りれないか」という要望です。しかし、空き家を貸すにあたっても所有者がそのままの状態で貸すというのが難しいのが実情です。例えば雨漏りしないように屋根の改修するとか費用負担が発生する。改修して貸したにしても給湯器が壊れたとか雨漏りが発生したとかの場合も所有者の費用負担が発生する。所有者としてはそこらへんが負担できないということで第三者に貸すのを躊躇していしまうパターンが多い。所有者の責任をどういうふうに緩和するか。借りる人で改修費用を負担する仕組みをつくるとかが整備されれば空き家の流動化はどんどん進んでいくと思います

 

島田:昔から借地借家法の根本議論として大家さんの責任をどこまで減らすかという問題がありますね。森さん、市長会会長としてそういった側面の議論は行われているんですか?

 

森:不動産市場に地域社会の発展や人口減少対策、良好なコミュニティの維持などの公共性がしっかり絡めば行政も支援していきます。

 

増田:日本全体の住宅市場の中で中古住宅の流通の割合がすごく少ないことも問題です。アメリカやイギリスで出回っている住宅の80〜90%が中古住宅です。中古住宅をリフォームして長持ちさせて使うことを日本社会でももっと広げていく必要があります。リフォームしやすいような仕様の住宅をたくさん販売していくとか。

 

島田:井出さん、日本人は新築が好きっていうのが度が過ぎていますか?

 

井出:最近の調査を見ると特に若い世代や子育て世代は利便性があって適切な価格であれば新築でなくても構わないと答えています。ただし質の確保があったうえでですが。極端な新築志向は薄れていると思います。中古住宅流通について言うとマンションについては近年、流通量は伸びています。マンションは元々立地が良いことと手頃感があります。

 

上田:中古戸建てを流通させるためには、空き家の期間どのように資産として維持管理していくかということが重要です。日本の家屋はほとんどが木造。1年間で1、2回しか風通しをしないとなると中古戸建てとして使えなくなるまで劣化が進んでしまうことがあります。

 

米山:将来に向けて空き家を減らしていくためには新築需要を中古にいかにかたむけていくかがポイントです。そのためのインセンティブが必要になります。自治体によっては中古住宅を買ったとき改修費を補助するという制度もあります。新築ローン減税を廃止しろとまでは言いませんが中古をより充実させていく必要があります。

 

今後の住宅政策とまちづくり

 

島田:人口減少時代はもう始まっています。日本の総人口推移を見ると、2008年の1億2808万人をピークに減り始めています。2048年には1億人を割り込みます。そして2060年には8674万人まで減ると予測されています。

 

増田:人口減少の要因は2つあります。出生率が低いことと20〜30代の女性の数が激減していること。後は人口の社会移動の問題。地方から特に東京へ人が集まってしまう。地方は急激に人が減るため住宅を含めこれまで築いた社会資本ストックが無駄になりかねません。このアンバランスをどう埋めていくかが課題です。

  

井出:国土のグランドデザイン(国土交通省)によるとキーワードは「コンパクトシティ」。行政コストを下げつつどれだけ質の高いサービスを住民に提供して住み良い暮らしを築いていただけるかが基本になっています。法改正もあり病院や福祉施設、教育施設を充実することで人を集めていくための計画は始まっていますが、大前提として自治体の職員が積極的に危機意識を持って取り組むことが必要です。

 

増田:むしろ若い人が地域で働く場所をたくさんつくっていくことが大事です。人が住んでいる地域全部を維持するのは難しい。出来るだけ集落を集約化していく必要があります。人口が集積している所に産業の可能性が出てくるので中核都市に若い人の雇用の場を開拓していきます。あまりにも東京に人が集まりすぎています。

 

島田:米山さん、増田さんがおっしゃたような人が集まる地域づくりを進める上で住宅政策はどのようになりますか?

 

米山:コンパクトシティの絡みでいうと財政の問題などから全ての空き家を活かすのは難しい。例えば中心市街地の空き家にはインセンティブを与えるとか、事実上選別しているような自治体もあります。

 

井出:日頃若い大学生と接していると地元に帰りたいけれど雇用の場が無いとか帰りたいけれどずっとは居たくないとか色々な声を聞きます。緩やかな形で第二、第三のふるさととして地域交流を考えて行かなければいけないと思います。

 

感想

 

空き家を取り巻く問題とその原因や背景について概括的な討論でした。老朽化して手入れがされていないような空き家は撤去なのか活用なのか所有者が流動化に向けたアクションを取るような働きかけが重要ですね。米山さん風に言うと「空き家流動化のインセンティブを与える」ということです。あと井出さんがおっしゃっていた「空き家に単に住むだけでなくそれ以外の機能をもたせることで若者を呼び込み地域の活性化につなげる」ことはとても共感しました。

 

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