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空き家を活用して新しい価値をつくる

住宅はオーナーが適切な点検と修繕を意識的に行えば資産になる

不動産コンサルタントで国土交通省の不動産流通市場活性化フォーラムの委員も務める長嶋修さんの著書「これから3年 不動産とどう付き合うか」を読んでいます。

※長嶋修さんはラジオで空き家問題について語っています。

空き家を放置する理由の7割が「なんとなく」:ざっくり分かる!不動産コンサルタントが語る、空き家問題の現状 | ラジおこし

 

日本の住宅寿命は30年前後?!

 

国土交通省が公表してきた資料によれば木造住宅の寿命は27年ないし30年、マンション(RC=鉄筋コンクリート造り)は37年とされてきました。確かに日本の住宅の平均寿命は欧米に比べて格段に短いです。

 

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画像引用元)こうした数字は過去に取り壊された建物の築年数であったり、新築数を取り壊し数で除した数字であったりして、実態を反映した正確な数字ではありません。

 

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画像引用元)住宅オーナーのが主体的に長持ちさせようとメンテナンス(点検や修繕)することが重要です。

 

これらの数字は実態を反映したものではないと長嶋さんは指摘しています。まずは「寿命27年」の根拠について、

 

「寿命27年」の根拠は、実は「取り壊した住宅の平均築年数」です。税務署が作成する「固定資産税台帳」から、取り壊された建物の築年数を調べたものです。すなわち、現実には築40〜50年経過しても十分に使用できる建物が多く、27年が建物の寿命を表しているとは全く言えません。

これから3年 不動産とどう付き合うかp96

 

 一つ一つ住宅の状態は違うしオーナーさんが意識的にメンテナンスしていれば長持ちする住宅もあるわけです。次に「寿命30年」の根拠について、

 

「寿命30年」の根拠を調べると、これは「ストック(現存する住宅数)数をフロー数(新築数)で割った数字」です。「サイクル年数」という概念を使い、便宜的に求めたものです。したがってこれも木造住宅の寿命を正確に表しているわけではありません。

これから3年 不動産とどう付き合うかp96

 

これも腑に落ちない根拠です。最後に「マンション寿命37年」の根拠について、

 

「マンション37年」の根拠も「建て替えをしたマンションの平均築年数」です。もちろん、築年数が37年を過ぎたマンションはたくさん存在します。マンション寿命も正確な寿命とは言えません。

これから3年 不動産とどう付き合うかp96

 

要するにどれも便宜的に平均値を求めているだけです。

 

メンテナンス(点検と修繕)を行えば住宅寿命は格段に延びる

 

では本当の住宅寿命はどのくらいなのかということで長嶋さんの著書にはこう書かれています。

 

これについては多くの研究があります。早稲田大学の小松幸夫教授らが行った「建物の平均寿命推計」の最新調査(2011年)では、人間の平均寿命を推計するのと同様の手法を採用しており、それによると木造住宅の平均寿命は64年です。

これから3年 不動産とどう付き合うかp98

 

次に中古マンションの寿命について、

 

中古マンション(RC)の寿命には諸説あります。117年(飯塚1979)、68年(小松2013)、120〜150年(大蔵省主税局/固定資産の耐用年数の算定方式1951)など。実際には配管の種類や箇所にも大きく左右されるのですが、いのほか長持ちするイメージです。

これから3年 不動産とどう付き合うかp98

 

適切な点検や修繕を住宅オーナーが意識的に行うことで住宅寿命は格段に延びます。

 

住宅は「設計」「施工」「点検・メンテナンス」の三拍子が揃ったときに初めて長持ちする

 

住宅しかり建物って水回りや配管、建具など使わないとあっという間に傷んだり劣化してしまいます。「設計」と「施工」までは基本的に建築業者任せですが住宅を使用して「点検・メンテナンス」していくっていうのはオーナーなり使う人が長持ちさせようという意識を持って行動していくことがかなり重要になります。建築の基礎知識くらいは誰もが身につけておくといいでしょうね。

 

住宅は「設計」「施工」「点検・メンテナンス」の三拍子が揃ったときに初めて長持ちします。日本の住宅設計・施工技術は世界有数です。現在の水準でしっかり設計され、そのとおりにきちんと工事が行われ、予防的で適切な点検・メンテナンスが行われていれば、寿命は格段に伸長し、欧米の住宅寿命100年以上にすることができます。

これから3年 不動産とどう付き合うかp99

  

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