賃貸住宅は5戸に1戸が空き家
全国の空き家数は約820万戸、空き家率は13.5%、7戸に1戸は空き家です。内訳を見ると不動産市場に出ている賃貸住宅が5割(その他の住宅(個人住宅)が4割)です。429万戸もの賃貸住宅が空き家になっているわけです。そして空き家になっている賃貸住宅数を稼働している賃貸住宅数も含めた全体の賃貸住宅数と割った賃貸住宅の空き家率は18.9%です。単純計算ですが5戸に1戸の賃貸住宅が空き家というのが現状です。
賃貸住宅の空き室率推移をグラフ化してみる(2014年)(最新) - ガベージニュース
売買の場合は「売買価格の3%+6万円」、賃貸の場合は「家賃1ヶ月分」が仲介手数料
不動産会社がどこで収入を得るかといえば「仲介手数料」です。しかしこの仲介手数料は宅建業法第46条で上限が決められています。具体的には売買の場合は「売買価格の3%+6万円」、賃貸の場合は「家賃1ヶ月分」が仲介手数料として不動産会社の収入になります。つまり売買価格や家賃が高いほうが不動産会社としては収入が高額になります。ですので、高額な売買物件や賃貸物件の仲介にどうしても積極的になってしまいがちです。その結果として売買価格や家賃が低い物件はあまり積極的に仲介(流通)させようとするインセンティブが乏しいということになります。
空き家の流通を市場原理に任せるのは難しく、家賃の安い家は不動産屋にとって「うまみ(手数料収入)」が少ないので、よほど志がないかぎりは扱ってくれません。実際、高知でも少し山に入ると不動産会社は途端になくなります。
デキる営業は「両手仲介」を狙う
こうした仲介手数料の仕組みが不動産会社による”物件の囲い込み”と”両手取引(売主と買主又は貸主と借主の双方から仲介手数料をもらえる)”という市場競争を歪める問題行為を生む温床になっていると思います。不動産・住宅情報サイトHOME'Sを運営する株式会社ネクスト社長の井上高志さんや不動産コンサルタントの長嶋修さんはこの問題行為を指摘しています。
結局、割を食うのは、A社に売却仲介を依頼した顧客です。B社が抱える顧客に対して高く売れたはずなのに、A社が抱える買い手に売ったことでより安い金額しか手にすることができないということも起きるのです。
売主の利益を無視してまで、両手取引狙いで客付けを妨害したり、情報を出さなかったりするのは売主の利益を著しく既存するのはもちろん、中古住宅流通の不活性の元だ。
なによりそこで働く業界人の心を蝕ぶ。なにしろ売主に対して背信的な行為なのだ。また客付け側も、見たい・買いたいと言ってる顧客に申開きができない状態だ。不動産仲介の物件囲い込み問題~宅建業法の改正を望む~ | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】
仲介手数料の上限を撤廃し、仲介サービスの内容に応じた「仲介手数料の自由化」で不動産の流通が促進される
不動産各社は不動産流通機構が運営するコンピュータ・ネットワーク・システムのレインズ(不動産流通標準情報システム)で不動産物件情報を共有しています。つまり本来は売却希望者や賃貸希望者と契約した不動産会社は物件情報をレインズに登録する義務があります。しかし、チェック機構が機能しておらず「違反をやったもの勝ち」になっている状況だそうです。
レインズを運営する全国の4つの不動産流通機構の内、東日本不動産流通機構は昨年10月、正当な理由なく登録物件の紹介拒否による囲い込み行為を禁ずる規定を設けました。しかし、罰則規定ができてもチェック機構が機能しなければ有名無実化してしまいます。果たしてどれだけ厳格に運用されているのか疑問です。これでは「違反をやったもの勝ち」の状況になりかねません。
レインズに登録しなくてもペナルティーが無い、仲介手数料も上限が決まっている、だから自社で物件を囲い込み、両手取引を狙ってより多くの仲介手数料を得る、という流れが出来ているのだと思います。
ネクスト社長の井上高志さんはレインズが正しく機能するためにアメリカの仕組み(物件情報は24時間以内に掲載しなければならず、また商談中などといって囲い込み続けた場合は不動産情報の共有システムの利用権を剥奪されるなど厳しい罰則を設けている)を参考にしたほうがいいとおっしゃっています。
そして”仲介手数料を自由化すべき”ともおっしゃいます。仲介サービスの内容によって仲介手数料を自由に設定出来るようにすることで健全な競争を促すわけです。
サービスが不要という人には低い手数料があってもいいし、逆にフルサービスを求める人には10%という会社があってもいい。両手取引を行なわなくても、良質なサービスを行う企業が片手でも高い手数料が取れることで、健全な競争になるのではないでしょうか。
仲介手数料の自由化が実現すれば市場に出ていない個人住宅の空き家も積極的に流通させようとするインセンティブが生まれるはずです。
現在は、地方の数百万円の空き家でも、都心のタワーマンションでも、手数料率は同じです。しかし、地方の空き家は、場合によっては、登記簿にきちんと書かれていなかったり、境界区域が不明だったりで、登記簿や地籍を調べるなどの手間がかかるケースもあります。さらに契約に瑕疵があれば、仲介会社が保証しなければならない。しかし、売買金額が低いので3%の手数料では、手間の割に利益が低く、不動産会社は仲介をやりたがりません。こういうケースであれば、手数料率を3%よりも上げることで、市場流通する可能性があります。
仲介にかかった分の費用=仲介手数料が本来の形
昨年8月に営業開始したソニー不動産は不動産業界の仲介手数料の常識を覆し、仲介に関してかかった分だけの費用を仲介手数料としています。
ソニー不動産の仲介手数料が安い理由は何だろうか?「それは、仲介に関してかかった分だけの費用を頂くという考え方にしているためです」と、風戸さんは説明する。早期に成約 (売却の場合)した場合は割引がある。
「仲介に長い期間がかかる場合と、すぐに決まった場合とではかかった業務量が違うわけで、一律で同じ仲介手数料なのは合理的とは言えません。グループ会社のソニー損保の自動車保険“走る分だけ”と同じような考え方と捉えていただけると分かりやすいと思います」ソニー不動産が仕掛ける新常識 仲介手数料も「かかった分だけ」 | スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
ソニー不動産の新しい取組はガラパゴス化した日本の不動産業界の呼び水になるかと期待されています。
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