住宅・不動産情報ポータルサイトのHOME'Sを運営する株式会社ネクストの井上高志社長とPLANETS編集長の宇野常寛さんとの対談記事が面白いです。
今朝のメルマガは不動産ポータル「HOME'S」で知られる株式会社ネクスト・井上高志さんへのインタビューです!/「情報化される実空間と都市再編ーー不動産ポータルは日本の「住」をどう変えたのか」http://t.co/rDhLoNRJoz pic.twitter.com/QjFu6yGnJo
— 宇野常寛 #planets9 発売中 (@wakusei2nd) 2015, 3月 18
井上さんは「HOME'S」で、日本の「住」にどんな革命を起こしていたのか? そしてさらに、中古住宅・リノベーションを有効活用した「これからの住まい方」まで、じっくりとお話を伺ってきました。http://t.co/zJ8eU2Vp9s
— PLANETS/第二次惑星開発委員会 (@PLANETS_9) 2015, 3月 18
この対談記事はめちゃくちゃ長いのですが、”日本の不動産サイトポータルを発明したに等しい会社”であるHOME'S(厳密には株式会社ネクスト)について真正面から取材した記事というのは珍しいし、ラジオやPLANETS vol.9などで切れ味鋭い評論を展開している宇野さんがインタビューするということで面白くないはずがないと思っています。
井上 僕としても、こういう切り口のインタビューは珍しいんです。「創業から成功までの軌跡」みたいなパターンがほとんどで、あとは「人財育成はどうしていますか」とか「リーダーシップ教育はどうしていますか」みたいなものですから。
宇野 そこは取材前に調べさせていただいて、驚いたんですよ。だって、ホームズなんて、僕の中ではほとんど、日本の不動産ポータルを発明したに等しい会社ですよ。ところが、そこをしっかりと聞いたインタビューが出てこないんです。
住宅にもレコメンデーションエンジンを
Amazonで本を見ているとたくさんレコメンデーションが出てきますよね。これ実は結構面白くて、本当に読みたくなる本がレコメンドされてくるんです。これと同じようなことを住宅でもやってしまおうとHOME'Sの井上社長は考えているようです。
井上 まだ過渡期なんですね。ユーザーの方も、不動産ポータルで探すときには、都道府県を選択して、次に駅の路線か地域か、あるいは通勤通学時間なのかを選択して……みたいな風に、もう探し方を「こういうものだ」と学習してしまっていて、まだ抜け出せずにいます。
そこで次に考えているのが、レコメンデーションエンジンです。まだ開発途上ではありますが、最終的な目標としては、例えばユーザーの行動履歴を見ながら、「この人は現在、賃貸から売買の方へと意識が変化し始めている。でも、資金繰りのところで躊躇しているようだ」なんて解析して、「住宅ローンのいろは」みたいなページのコンテンツをレコメンドして見せてしまうくらいにはしたいですね。
とにかく、情報をどんどんパーソナライズして、人間の感性の変化に合わせながら、その人間の「今」のタイミングにぴったりな情報を提供するのが良いと思うんです。
自分のライフスタイルやライフステージに応じた住宅を提案してくれるレコメンド機能付きの不動産情報ポータルサイトが出来たら面白いなーと思います。「DIY改装可能」「ギターOK」「保育園が近い」とか各人の趣味嗜好や生活上の課題などを瞬時に判断して最適な物件をレコメンドしてくれると、物件を探す手間も省けるし、なにより物件検索がもっと楽しくなりそうです。
ライフスタイル提案に舵を切っているHOME'S
最近は全国の老人ホーム・介護施設が検索できる「HOME'S介護」やインテリアや家具、雑貨のECサイトである「HOME'S Style Market」など個々人のライフスタイルに寄り添うサービスが出てきています。
井上 それは、中期戦略の中で明確に決めていて、その戦略を「DB+CCS」と呼んでいます。
物件からインテリアまで含めた巨大なデータベース(=DB)を構築する一方で、コミュニケーション・アンド・コンシェルジュ・サービス(=CCS、Communication and Concierge Serviceの略)を構築する。これは、お客様とコミュニケーションしながらコンシェルジュする機能を、人間と機械・システムによるハイブリッド型で提供するのですが、そこでは巨大なデータベースが必要になるわけです。さらに、この膨大なデータへの検索をレコメンデーションエンジンで支援したり、ザッポスのようにコールセンターを設けて、「あなたにとってのピッタリはこれでしょう?」と提供したりして、マッチングを進めるのです。まあ、本来はここのマッチングは、不動産仲介会社がやるべき仕事なんですけどね。
家具・インテリアの通販なら【HOME'S Style Market】
個々人のライフスタイルやライフステージに応じたレコメンデーションをしつつ、最終的には人間が情報をまとめて(キュレーションして)価値として提案していく、ということだと思います。
井上 ラストタッチには、人間による「ヒューマンタッチ」が必要だと感じています。やはりリテラシーの高くないインターネットユーザーが圧倒的多数を占めていて、彼らに手を差し伸べるにはヒューマンタッチを残すことが必要なんです。
例えば、現在の不動産業界の課題は、新たな用途開発なんです。でも、そこでコミュニティ充実型の賃貸マンションをオススメするか、空きスペースをアトリエとして使わせるのか、それともバイクの置き場として使うのか、あるいは小規模保育所として待機児童問題の解消に使うのか……もう沢山のやり方があるわけですが、ここはシステム的な対処では追いつけない部分であるように思います。
不動産会社は「住まうこと」のスペシャリストにならないといけない
ITの力、つまりレコメンデーション機能がますます発達すれば、勝手に最適な物件を選んでくれるようになると思います。そうなったときに人間にしかできないこととは何か?築年数や駅までの時間、バス/トイレ別とかテンプレ化した判断材料ではなく、よりユーザーの立場に寄り添った「住まうこと」全体のプロデューサーのような役割を果たすことが必要になってくると思います。
宇野 つまり、ユーザーの趣味嗜好は多様化しているが、彼らは自分たちが検索すべきワードをひねり出す力は持っていない。そこに業者の介入が必要であると考えるわけですね。
それにしても、ここまでの話から見えて来るのは、今後の日本は意欲的な不動産ポータルとリノベーション業者だけが生き残るようになり、町の不動産会社は全滅するというお話ですね(笑)。不動産会社は「住まう」ことのスペシャリストにならないといけないし、もはや検索ワードをみつけてあげる能力がないと生き残れないという話でもありますよね。
井上 でも、それこそが本来あるべき不動産業の姿ですよ。今後、私たちは地域のスペシャリストであり、ライフスタイル提案のスペシャリストであるというところまで行く必要がある。だから、ザッポスのような事例を伝えながら、業界にその警告を発しています。実際のところ、現在の不動産業界の仕事なんて、ITによってぐっと減らせるものです。では、そのときに人間にしかできない仕事とは何なのか、というのを考える必要があります。