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空き家を活用して新しい価値をつくる

空き家は増えるべくして増えている、しかし空き家は可能性であり財産!「解決!空き家問題 中川寛子著」読書メモ(1)

「解決!空き家問題 中川寛子著」を読み込む

ずっと気になっていましたが、なかなか読めていなかった新書「解決!空き家問題(ちくま新書)」。ついに腰を落ち着けて読み込んでいます。著者の中川寛子さんは住まいや街に関するスペシャリスト。All Aboutの「住みやすい街選び(首都圏)ガイド」として本当に多数の記事を発信されていて、実際の現場を歩いて見て感じて作られる記事は鋭い切れ味と洞察に富んでいます。

解決!空き家問題 (ちくま新書)

中川 寛子 筑摩書房 2015-11-05
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そんな中川寛子さんが、空き家問題に絞って調査・執筆されたのが「解決!空き家問題」です。新書といえど、情報密度はすごく濃いので、何回かに分けて読書メモを書きたいと思います。今回は、「はじめに」をまとめます。

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(画像引用元:株式会社 東京情報堂 Webサイト 〜 中川寛子 〜 | トップページ | 住まいと街の解説者、中川寛子(東京情報堂)のサイトへようこそ。スポーツやニュースを解説する人がいるように、分かっているようで分かりにくい不動産情報を、活字やセミナーなどを通じて公平、平易に解説します。

現在、空き家を抱えている人たちに実害がなく、痛くも痒くもない

まずは、「はじめに」から行きましょう。空き家関連の記事って、ここ2、3年で急に増えてきました。それだけホットなテーマである空き家ですが、実際に何が問題なのか、と言われると結構曖昧だったりします。というのも、空き家を持っている人たちの大半は70代、80代の高齢。空き家を持っていたとしても経済的にもさほど困らないし、空き家対策特別措置法が定める、周辺に迷惑な存在とされる特定空き家に指定されるほど劣化もしない。つまり、空き家問題が問題たるゆえんは、現在、空き家を抱えている人たちに実害がなく、痛くも痒くもないからです。

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画像引用元

しかし、空き家もやがて次の世代に相続されていきます。大量に物が溜まっていたり、修繕や補修がされずに劣化していたり、そうこうしているうちに不動産としての価値が下がってしまった空き家を50代、60代が相続し、どう空き家を活かしていくかを考えなくてはいけません。そしてそれ以上に大変なのが30代、40代と、下の世代こそが直面するのが空き家問題なのです。実家の空き家問題は誰もが直面するからこそ、早め早めに対策を立てておく必要があります。といっても親や親族がまだご存命のうちに、空き家のことを心配するのも無粋なようですが、それとこれとは別問題です。将来、相続することを考えて修繕や改修を事前に進めたり、解体するつもりならば共有相続して権利者がたくさん増えて合意形成が煩雑になる前に、兄弟姉妹など相続の権利を持つ人たちと事前協議をしておくなど、重要になってきます。

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建て替えを前提に建てられていない建物ばかり

阪神・淡路大震災では老朽化した木造住宅の被害が大きかったこともあり、その反省を活かし、阪神・淡路大震災後の木造住宅はそれまでより堅牢に建てられるようになったそう。これ自体は良いことですが、取り壊すこと、建て替えることを想定していない”べた基礎”が増えていったことを指摘しています。

一戸建ての基礎には主に布基礎、べた基礎の二種類があるのだが、布基礎は建物の下に部分的にコンクリートを打つだけなのに対し、べた基礎は建物の下全部にコンクリートを打つ。このコンクリートを壊すのが非常に大変なのである。

「解決!空き家問題(ちくま新書)」p.10

べた基礎を壊すとなると、大型の重機が必要で、振動や騒音もすごいことになるそうです。狭い土地に建てられている場合は重機が入らず、周囲への影響もかなり大きいです。目の前の、建てる、という行為にしか考えずに建てられてきた建物ばかりという現状は、近視眼的な先送り思考が産んだものと指摘しています。

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衣食住の住だけは唯一、供給者側の言うなりの選択しかない

もはや住宅の数は充足、むしろ人口は減少しています。そのくせ、住宅困窮者は存在し、子育て世帯や高齢者が安心して住める住宅も少ない。住宅の質を上げていくことが社会全体として求められています。そして質を上げていくためには、需要者側の多様なニーズに応えていくことが必要です。供給者側の言うなりの選択しかない状態では、なかなか質の向上は望めません。

衣食住のうち、衣食に関しては金額から種類、内容まで個人の好みに合わせた幅広い選択が可能だというのに、住宅に関しては供給者側の言うなりの選択しかない。

 「解決!空き家問題(ちくま新書)」p.17

そこでリノベーションやDIYといったトレンドを、常識のレベルまで意識も行動も高めていくことが重要です。インターネットやSNSの発達など、リノベーションやDIYのノウハウや材料などが手に入りやすくなりました。住宅の消費者に甘んじることなく、生産者に近い存在として能動的に住まいづくりにコミットしていくことが、どんどん広がっていけばいいです。

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空き家は可能性であり、財産!

もちろんひどい老朽化だったり、どうしようもない空き家があることは前提ですが、活用すれば面白くなる素材としての空き家もあることもまた事実です。空き家が素敵な街のコンテンツとして生まれ変わったりしている実例が全国で多数ありますし、リノベーションスクールといった、空き家活用のアイデアや事業を競い合うプログラムもあります。空き家は可能性であり、財産!そう思えたなら後はどう活用するか構想し、実行に移していくだけです。

もちろん、どうしようもない物件があることは確かだ。実際にはかなりの数の物件が売れず、貸せず、活用されずに朽ち果てていくであろう可能性がある。だが、活用すれば面白くなる素材として、そこを活用することで地域が生まれ変わるきっかけとして見ている人も少しずつ増えており、その視点があれば、空き家は可能性であり、財産である。

  「解決!空き家問題(ちくま新書)」p.18

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画像引用元:リノベーションスクールの様子。実際の空き家を活用してどう事業化していくか、参加者同士で喧々諤々の議論をしています。)

 

次回は「第1章 いずれは3軒に1軒が空き家?ー現状と発生のメカニズム」をまとめます。