「京都×空き家×まちづくり」〜京都だからできる空き家活用の可能性、空き家をきっかけとしたまちづくり〜2014年6月7日イベントレポート第3弾です。
関連の過去記事はこちら。
「それぞれの立場からみた空き家×まちづくり」と題したトークセッションで「空き家所の借り手」の立場からのお話です。
空き家の活用でアーティストの場づくり支援(東山アーティスツ・プレイスメント・サービス「HAPS」)
空き家の「借り手」の立場からのお話。築100年ほどの町家(空き家)を活用してアーティスト(芸術家)の場づくり支援や地域活性化に取り組んでいる「東山アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)」ディレクターの芦立さやか氏によるトーク。
西側に鴨川、東側に清水寺がある京都市東山区の六原地区の住宅街にある町家を改装してメインオフィスとしています。
1階は表玄関側が展示スペース、室内が会議などに使える多目的スペースとなっており、随時アーティストの作品展示やワークショップ、講演会などのイベントを開催しています。
築100年の京町家(空き家)をセルフリノベーション
空き家改装をイベントと捉えることでアーティスト、若者、一般の人たちが一緒になってリノベーションに取り組むことで金銭的に低コストです。
築100年ほどの町家を利用しています。
スタッフさんにお伺いしたところ、ここ20年ほどは誰も住んでおらず、空き家状態で放置されていたとのこと。
それを「京都の技術伝授ワークショップ」として、若手アーティストさんや学生さん、一般の方々が参加し、大工さんや左官屋さんなど職人さんの指導を受けながら改装していったそうです。その期間、約1年!床の解体から土壁塗りまで、少しずつ仕上げていったそうです。【内覧会レポート】京都のNEW・アートスポット「HAPSオフィス&スタジオ」に行ってきました!|京都で遊ぼうART ~京都地域の美術館、展覧会、アート系情報ポータルサイト~
(鴨川の西側の住宅街の中に「HAPS」のメインオフィスはあります)
京都市の”文化芸術振興”条例が設立のきっかけ
HAPSの設立の経緯は京都市の「京都文化芸術都市創生条例」(2006年4月1日施行)がきっかけです。この条例の具体化に向けた指針の中で「若手芸術家等の居住・制作・発表の場づくり」事業が計画されました。そしてHAPSの中心メンバーである遠藤水城さんを中心に「アーティストの相談窓口」を作る事業を始めました。
その事業を推進するために、2009年から遠藤さんを中心に「どうすればもっと若手芸術家が京都に住みたくなるような土壌を作れるのか」ということについてのリサーチを開始しました。その結果、アーティストに制作の姿勢を高めてもらうきっかけを作るためには相談窓口が必要だと判断し、HAPSを開設しました。
ミッションは、
○京都在住の芸術家たちの居住・制作・発表を包括的に支援する(芸術家支援)
○芸術家たちの創造性を京都市の活力へと繋ぐ(地域創造)
○国内外の芸術機関と多様な協力体制を構築する(ネットワーク形成)
○新たな芸術のあり方と、新たな社会のあり方を共に探求する(イノベーション活動)
「住む」「つくる」「見せる」という切り口で京都の文化芸術を発展させる
具体的には「住む」「つくる」「みせる」といった切り口でアーティストの活動をサポートしていきます。
<住む>
アーティストの居住および制作のための不動産のマッチング。家主、不動産業者、各町内会、京都市担当部署などと連携しながら物件を紹介します。さまざまな条件をきめ細かく把握した上で、アーティストにとって最も必要とされる最適な物件探しのサポートを行います。<つくる>
アーティストの作品制作をサポートするコーディネーション。制作に必要な資材、道具、技術、人員などの相談をお手伝いします。他、公募やレジデンスなどの情報も提供しています。<みせる>
展覧会などプレゼンテーションを効果的にする方法の提案。会場選定、会場構成、広報、イベントの実施などの相談をお手伝いします。他、京都のレンタルスペースの情報なども提供しています。
そしてその場として「空き家活用」を加えることで結果的に地域のまちづくりにも貢献しています。
HAPSの活動の主軸には、「東山地域にある空き家スペースの活用」があります。
歴史の古い街である東山地域には、現在人の暮らしていない古い家が数多く残されているほか、高齢化が進み思うように対策が出来ないという状況がありました。
そこで、制作場所や展示スペースなどを求めている若手のアーティスト、クリエイターに場所として空き家を提供・再生し、地域の活性化につなげよう!というものが、HAPSの大きな活動のひとつです。
このオフィスは今後においてのモデルケースにもなるんですね。【内覧会レポート】京都のNEW・アートスポット「HAPSオフィス&スタジオ」に行ってきました!|京都で遊ぼうART ~京都地域の美術館、展覧会、アート系情報ポータルサイト~
廃校(小学校)を活用して「HAPSスタジオ」に
HAPSメインオフィスから近くには閉校した小学校の6教室を活用した「HAPS スタジオ」もあります。アーティストがアトリエとして創作活動に励んでいるようです。
(画像引用元)
(HAPS)オフィスからは徒歩5分もかからないほど。
平成23年に閉校した「新道小学校」の建物の一部を利用しており、現在選出された6組のアーティストが制作拠点としています。【内覧会レポート】京都のNEW・アートスポット「HAPSオフィス&スタジオ」に行ってきました!|京都で遊ぼうART ~京都地域の美術館、展覧会、アート系情報ポータルサイト~
(画像引用元)
アーティストにとって空き家は創作のインスピレーションを生みやすい!?
空き家オーナーさんにとっては古くて人に貸すのがためらわれる住宅でも、芸術を志す若者(一応年齢は不問)にとってはこれ以上の創作環境はなかったりするようです。
アンディー・ウォーホルのアトリエのような空間が再現できるのかも。
(画像引用元)
多様な主体との協力体制でマッチングに取り組む
具体的な物件の紹介から契約の流れは次の図がわかりやすいです。地元の空き家情報に詳しい「六原まちづくり委員会」や不動産のプロである「不動産コンサルティング協会」などと協力しながら空き家オーナーとアーティスト(入居者)とのマッチングに取り組んでいます。
(画像引用元)
相談件数は増えてきている
平成25年度は、アーティストからの物件探しの相談が増え、大家さん・管理不動産業者からの利用者探しの相談も多く寄せられたそう。
2012年から東山区六原地区で空き家や防災等の問題に取り組む「六原まちづくり委員会」に参加するなど、地元と協力して地域活性化にも取り組んでいます。
同志社女子大学の学生さんが制作したHAPSの紹介動画(京都市公式)もあります。3分。
(つづく)
次回のブログは空き家「所有者」の立場からのお話です。
関連記事はこちら。
地方自治体による空き家対策のメインは老朽空き家の撤去や空き家の適正管理促進だけど”京都市”や”世田谷区”は空き家活用にも力を入れている - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ