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「京都×空き家×まちづくり」〜京都だからできる空き家活用の可能性、空き家をきっかけとしたまちづくり〜2014年6月7日イベントレポート2/8六原学区自治連合会・六原まちづくり委員会

「京都×空き家×まちづくり」〜京都だからできる空き家活用の可能性、空き家をきっかけとしたまちづくり〜2014年6月7日イベントレポート第2弾です。

 

関連の過去記事はこちら。

「京都×空き家×まちづくり」〜京都だからできる空き家活用の可能性、空き家をきっかけとしたまちづくり〜2014年6月7日イベントレポート1/8空き家が地域に及ぼす影響 - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

 

第2部トークセッション1「それぞれの立場からみた空き家×まちづくり」

 

第2部は、地域、借り手、空き家オーナー、マッチングする仕組み、行政、大学とそれぞれの立場から見ている空き家とまちづくりを絡めて順番にトークがなされました。

 

<地域>菅谷幸弘氏(六原自治会連合会事務局長・六原まちづくり委員会委員長)

<借り手>芦立さやか氏(「HAPS」ディレクター)

<空き家オーナー>前田徹生氏(「シェアハウスHASKA」オーナー)

<マッチングする仕組み>戸田幸典氏(公益財団法人京都地域創造基金専務理事・事務局長)

<行政>京都市都市計画局まち再生・創造推進室

<大学>井上えり子氏(京都女子大学准教授)

 

住宅は私有財産であるとともに社会資産としての性格も併せ持っているので「借り手」と「空き家オーナー」とだけの関係ではなく近隣である「地域」「NPO」「行政」などの関わりが重要です。そして住宅に関する技術やノウハウを持つ不動産や建築業界の「事業者」の存在は必須です。

※空き家対策に関わるプレーヤーを色分けしてみました。たくさんの主体がそれぞれの”色”(特徴や得意分野)を活かして相互にゆるやかなつながりでもって問題解決に当たる感じです。

 

「京都市地域連携型空き家流通促進事業」における地域の取組(六原学区の取組)

 

京都市では不動産事業者などの住宅専門家と町内会を中心として地元地域との連携により、空き家所有者や地元のニーズに応える空き家の活用方法の提案や空き家所有者と入居希望者をつなぐ仕組みの構築に努めています。

 

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京都市:京都市地域連携型空き家流通促進事業

 

この図にもあるように「地域(自治連合会や社会福祉協議会等)」は空き家活用・空き家流通を促進するために重要な役割を担っています。

 

ということで※六原学区(東山区)の取組についてご紹介がありました。プレゼンターは六原自治会連合会事務局長・六原まちづくり委員会委員長の菅谷幸弘氏。※六原学区は西に鴨川、東に清水寺のある地域です。

 

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画像引用元

 

平成22年〜23年、京都市地域連携型空き家流通促進事業として空き家対策を始める

 

  • 目視による空き家の調査
  • 空き家の所有者へのアンケート調査
  • 空き家の所有者にヒアリング
  • 活用提案・マッチング

 

これらの取組は京都市の行政予算を使って(委託事業として)実施したそうです。次に、

 

空き家の理由(アンケート調査から)

 

  • 相続で権利者が増えているため調整がつかない
  • 貸すともう戻ってこない
  • 将来、息子や孫たちが戻ってくるから
  • どんな人が入ってくるか不安
  • 貸すためにリフォームする経済的な負担
  • 日常の生活に困っていないから別に空き家を活用しなくても

 

それぞれ見ていきます。

 

「相続で権利者が増えているため調整がつかない」・・・兄弟姉妹がたくさんいると土地・建物の権利者がたくさんいるということで調整が大変になり空き家が固定化するケース。これは早期に複数の相続人の間で配分などについて話し合っておけば良いですね。ただしこれは金銭や財産という利害が絡むシビアな問題であることからなかなか言い出しっぺがに負担がかかったりしそうですね。まずは早めに第三者である法律の専門家に相談するのが良いかもしれませんね。

 

「貸すともう戻ってこない」・・・これはもはや「古い考え」です。2000年から「定期借家制度」が導入され、一定の契約期間に達したら契約が終了する借家制度が誕生しました。そのため貸主の事情に応じて数ヶ月だろうが数年だろうが一定期間の借家契約を結ぶことが可能です。

<関連記事>

空き家有効活用のヒントは「定期借家」!?ヤフーニュース記事紹介 - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

定期借家が普及しない理由は「手続きが煩雑」で「借り手のメリットが分かりづらい」から - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

 

「将来、息子や孫たちが戻ってくるから」・・・これははっきり言わせてもらえば「幻想」です。息子や娘はそれぞれ家族を作ったり自分たちの生活を作っていきます。全くないとは思いませんがレアケースでしょう。

 

「どんな人が入ってくるか不安」・・・賃貸借の契約行為は貸主と借主が対等な立場で締結するわけですから、借主がどんな人か契約する前に把握しておけば良いと思います。

 

「貸すためにリフォームする経済的な負担」・・・民間の金融期間でリフォームの融資をやっていたり、行政が改修費を助成するケースもあります。それに加えて最近、国土交通省が発行した「空き家を活用するための知恵袋」によると、家賃を相場より安くおさえ、借主自身に自由に改装しても構わないとする”新しい賃貸借契約の形(借主DIY型)”を示しています。

<関連記事>

新しい賃貸借契約の形「借主負担DIY型」で空き家活用促進が進むか!?国土交通省が「空き家を活用するための知恵袋」発行(ヤフーニュース記事紹介) - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

 

「日常の生活に困っていないから別に空き家を活用しなくても」・・・実はこれが一番多いそうです。”空き家ですけど、なにか問題でも??”っという考えの空き家所有者が多い。そこに対するアプローチは活用の提案だったり、空き家問題の理解や意識の共有だったりすると思います。

 

平成24年〜、地域自立・自走型の六原まちづくり委員会を立ち上げる

 

これまでは京都市の予算で空き家対策を進めていましたが平成23年10月、自立・自走のまちづくり組織を立ち上げたそうです。

 

六原学区自治連合会内に、(平成23年)10 月24 日、まちづくり委員会が発足しました。
 3月より菅谷事務局長を中心に地元有志によって準備が進められてきましたが、ここにサポートメンバ ー(不動産コンサルティング協会、建築士会、 京都市景観まちづくりセンター、京都女子大学)も加わり、顔合わせがおこなわれました。

 まちづくり委員会では主に空家問題に取組みますが、空家問題は高齢化等のさまざまな問題とも関連が指摘されています。そこで、多方面からの活動・イベントを企画していきたいと考えています。息の長い活動を目指していますので、どうぞよろしくお願いいたします。

六原学区自治連合会 六原学区のまちづくり

 

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京まち工房61号 | 京都市 景観・まちづくりセンター

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京都市:六原学区(東山区)

 

活動内容としては、

 

  • 住まいの応援談(セミナー)の開催
  • 相続の相談会の定期開催(月1回)
  • 地域の安心・安全マップの更新
  • まちづくり委員会ニュースの発行
  • 若手芸術家の育成支援(HAPS)
  • 細街路の安全確保の取組(自主防災会)、再建築不可から可へ
  • 空き家の手帖制作(所有者向け)
  • 交番の誘致(自治連)
  • 東山開睛館六原学舎の建設(自治連)

 

「空き家の手帖」って冊子ですが空き家の何が問題かやどう活用すれば良いかなどコンパクトにまとまっていて読みやすくわかりやすいです。

「空き家の手帖」完成記念 ぽむ企画トーク&六原まち歩き : 東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)

  

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協力機関

 

  • 京都市まち再生・創造推進室
  • 京都府不動産コンサルティング協会
  • 京都府建築士会
  • 相続相談センター
  • 京(みやこ)安心すまいセンター
  • 京都市景観・まちづくりセンター
  • 東山区役所地域力推進室
  • 東山消防署
  • 京都女子大学

 

平成26年、これから

 

  • 安心安全マップを使い、各町内会で空き家の掘り起こし
  • 登記簿をあげ、所有者に「空き家の手帖」の活用事例を紹介、アンケート調査、ヒアリング、提案
  • 空き家予備軍や空き家にならないための予防啓発(パネル制作し六原フェスタ・出前講座に活用)
  • 住まいの応援談開催・まちづくり委員会ニュース発行の継続
  • 相続の相談会をより発展させて、改築・耐震・賃貸・売却も含め「住まいの相談会」として定期的に開催
  • 防災広場の設置
  • 路地の安心・安全の強化

 

町内会自治連合会でここまでのことに取り組んでいるとは想像以上でした。京都市では六原学区(東山区)以外にも同じように地域が主体となって空き家対策に取り組んでいます。

 

六原学区(東山区)周辺を歩いてみた

 

京町屋がたくさんありました。

 

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清水寺の方角。

 

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京町屋を改築中でしょうか。

 

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やはり老朽家屋は目立ちます。

 

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(つづく)

次回のブログでは空き家を活用している「借り手」の立場からのお話をまとめます。

 

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