マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

「人口減少」と「空き家」を考えるセミナーに参加!

宇野常寛さんが編集長を務めるPLANETSの批評誌「PLANETS vol.8」や「3.11以後の建築と社会デザイン」などの著書前々から興味のあった藤村龍至さんが空き家関連で講演されるということで、会場である埼玉県の浦和まで行ってきました。

 

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画像引用元

 

埼玉県や市町村の職員、企業やNPO、大学などの職員が今年の5月から概ね9ヶ月間をかけて共同研究を行うというもので、そのオープニングセミナーを聞いてきました。研究テーマは2つあって、1つ目は「人口減少社会突破戦略」、2つ目は「空き家有効活用・埼玉プロジェクト」です。

 

人口減少の実情

 

前半は一般財団法人地域開発研究所の牧瀬稔さんによる講義で、テーマは「人口減少突破戦略〜人口減少に取り組む方向性〜」です。埼玉県内にある63の市町村のうち21もの市町村(3分の1!)が消滅可能性都市に当たるということ、2050年には人口が1億人を割り込み2100年には約4,500万人に減るという推計、都市圏と地方圏とで人口の増減が二極化している傾向があること、などについて人口減少の再認識のお話がありました。

 

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そして面白いなと思ったのは人口減少突破戦略の視点としてドラッカー風に”住民の創造”が重要になると言っていた点です。

 

つまり企業の目的は利潤の最大化ではなく顧客の創造であるとドラッカーが言うように、自治体にとっての目的とは”住民の創造”にほかならないということです。

 

そこで住民を創造、開拓、増やす取組としては「自然増」か「社会像」かしかないということ、社会増の中で転入増を目指す場合は、どこ(奪う地域)から誰(対象層)を決めることから始める必要があること、などのお話が印象に残りました。

 

例えば千葉県流山市は人口を獲得するために”奪う地域”を明確にして戦略的に政策展開しています。

 

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流山市では「持ち家」「既婚者」「DEWKS」をターゲットとしています。

 

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流山市外や都内からの移住を促す大型ポスター) 

 

オープン・プロセスとソーシャルデザイン

 

そして後半は建築家でソーシャルアーキテクト、東洋大学建築学科専任講師の藤村龍至さんのお話です。テーマは「人口減少社会における郊外都市空間の実態と課題」です。藤村さんは埼玉県の鶴ヶ島、大宮東口、川越という郊外都市で大学生や地域の人など様々な人を巻き込んでソーシャルデザイン・プロジェクトを手がけています。

 

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人口減少、高齢化、市街地の衰退など、今、日本は様々な問題を抱えている。公共施設のあり方もそのひとつです。たとえば高度成長期に一気に人口が膨れ上がった郊外都市では、かつて大量につくられた公共インフラが一斉に老朽化し、建て替えを迫られています。しかし、住民の高齢化や流失、それに伴って予想される将来的な財政危機を考えると、もはや拡大開発路線の時代ではない。施設にかかわる維持管理費を抑えつつ、住民のニーズを満たして未来につなぐには、いったいどんな施設をデザインすべきなのか……。これが、全国の自治体共通の悩みとなっています。

Close up!旬な取り組みを紹介:新しい日本社会のあり方を、公共建築で提案する「ソーシャルデザイン・プロジェクト」 | 東洋大学

 

具体的には2012年から始まった「鶴ヶ島プロジェクト」のお話から始まりました。埼玉県の鶴ヶ島という所は東武東上線の池袋駅から急行で40分という典型的な郊外です。高度成長期には人口増加し、小学校や公民館が建てられました。しかし現在は人口減少と公共インフラの老朽化が進むので、21世紀の郊外都市のあり方をアップデートする必要があるわけです。しかし行政主導で進めていくのは地元住民の理解も得づらい。そこで学生によるプロジェクトという名目にすることで住民のコミットメントも引き出しながら進めていくことになりました。

 

この状況で、いきなり市長や行政職員がインフラの統廃合を提案すると角が立ってしまう。しかし、行政と住民のあいだに大学が入り、学生たちのプロジェクトを行政や住民の皆さんにサポートしていただくということであれば、話を聴いてもらえるかもしれない。そこでわたしは「行政の公開情報をもとに維持可能な床面積を予想し、公民館機能を複合化した小学校を設計する」という課題を設定し、学生たちに取り組んでもらいました。

オープン・プロセスとソーシャルデザインの可能性 / 藤村龍至 / 建築家 | SYNODOS -シノドス-

 

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そこで秀逸だったのがアイデアを練り上げていくプロセスをすべてオープンにしたことでした。

 

アイディアを練り上げていくプロセスは、すべてオープンとし、住民の方々に参加していただいてのパブリックミーティングを全5回にわたって開催。学生はその都度アイディアを模型でプレゼンテーションしました。

最初は“若い人の発表会”の認識だった参加者も、「ここは、こうしたほうがいい」などの意見が、次回には、目に見える形で学生からフィードバックされる体験を通し真剣味が増し、また、毎回投票によって自分の作品が評価されることで、学生たちのモチベーションも高まりました。

Close up!旬な取り組みを紹介:新しい日本社会のあり方を、公共建築で提案する「ソーシャルデザイン・プロジェクト」 | 東洋大学

 

約1年をかけて空き家活用の政策研究

 

とまあ、そんな藤村龍至さんが担当する空き家有効活用・埼玉プロジェクトの今後が楽しみです。