マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

空き家状態の実家を相続放棄しても相続財産管理人が選任されまでは管理義務・責任が発生します

戸建て空き家の取得要因で一番多いのは「相続した」

戸建て空き家の所有者や管理者に対して行った、総務省による平成26年空家実態調査によると、戸建て空き家の取得要因の1位は「相続した」が52.3%でした。核家族化が進んだ現代において、実家の相続というのは誰もが直面する問題です。80代の親から50〜60代の子供へ、という老老相続が基本となっていることは以前書きました。さらに言うと、50代以降の世代は持ち家がある人たちが多数ということになると、相続した実家に住むという選択肢はほぼほぼ無いでしょう(兄弟姉妹が多ければ可能性はありますが)。ですので考えられるのは売却や賃貸、管理です。住むつもりのない実家の場合、経済合理的に考えれば売却という選択が一番かと思います。次に賃貸。でもこれは賃貸経営になるわけなので、現在住んでいる場所から離れた地方に実家がある場合、地元の不動産管理会社に丸投げという形にならざるを得ないと思いますので、ちょっとこれも現実的ではない。最後に管理ですが、これは穿ってみると問題の先送りしとも見えるわけで、本質的ではないです。

そこで思い切って、空き家状態の実家を相続放棄してしまおう、と考える方もいると思います。しかし相続放棄したとしても、実家の管理義務・責任は免れないのです。なお、相続放棄の申し立て件数は年々増加しており、2013年は17万3166件。20年前(1993年)の5万8490件から3倍にまで膨れあがっています(件数は相続人ベース)。

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画像引用元

相続放棄したとしても空き家の管理義務・責任は無くならない

まず相続放棄の内容や手続きについては、民法で定められています。相続には単純承認、限定承認、相続放棄の3種類があります。

相続放棄(そうぞくほうき)とは、民法上の概念、用語の一つであり、相続人が遺産の相続を放棄すること。被相続人の負債が多いなど相続に魅力が感じられないケースや、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われる。なお、3か月以内に限定承認又は相続放棄のどちらかを選択しなかった相続人は(家庭裁判所に期間の伸長を申し出なければ)単純承認とみなされる(民法915条1項、921条2号)。

相続放棄 - Wikipedia 

相続放棄すれば実家の管理義務・責任から解放されると思いきや、民法940条では相続放棄後の財産の管理が義務付けられています。

<民法第940条1項>  
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

民法第940条 - Wikibooks

相続財産管理人の選任を裁判所へ申し立てる手続きが必要

ですので結局のところ誰かが、相続した空き家状態の実家を管理してくれるまでは管理義務・責任が伴うわけです。そこで、相続財産管理人を選任してもらうよう裁判所に申し立てる手続きが必要になります。しかしこの相続財産管理人の選任には、予納金等のコストが数10万〜100万円程度かかります。相続財産管理人の選任の申立て手続きは、司法書士に相談してみましょう

裁判所|相続財産管理人の選任

強い権利には相応の義務が伴う

以前の記事で所有権の絶対性について書きましたが、それだけ強い権利であるからには、適正に管理する義務や責任が生じます。相続財産管理人の選任手続きの費用は確かにばかにならない額です。固定資産税は払わないといけないけれど、とりあえず空き家状態のまま放置しておく、となりがちかもしれません。しかし、相続放棄している不動産ですから、そこから売却や賃貸につなげるというのは現実的にそぐわないですし、もはや放棄された財産なので、遅かれ早かれ次の管理者を見つける作業にぶち当たりますので早めの対応が必要です。

<参考記事>

realestate.yahoo.co.jp