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東郊住宅社の管理物件入居者のための食堂「トーコーキッチン」に行ってきた in 淵野辺【後編】

今日は前回の続き、JR横浜線・淵野辺駅から徒歩2分の商店街の中にある賃貸物件入居者向けの食堂「トーコーキッチン」への取材レポート後編です。前編はこちら

神奈川県内のアパート空室率が40%に迫りそう

2015年半ばくらいから東京23区内や神奈川県内で、アパート(木造、軽量鉄骨造)空室率が上昇しています。不動産調査会社タスが発表した最新の調査(2017年4月27日発行)によると神奈川県は突出していて、アパート空室率は38%くらいにまで上昇しています。トーコーキッチンの仕掛け人・池田峰さん(東郊住宅社取締役)によると、淵野辺はそんな神奈川県の中でも一番空室率がひどいとのこと。

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(画像引用元:賃貸住宅市場レポート | 不動産評価(査定)webサイト | TAS-MAP 首都圏版・関西圏・中京圏・福岡県版 2017年4月)紫色が神奈川県です。

東郊住宅社の空室率は1.5%

このような状況の中、トーコーキッチンを展開する東郊住宅社の管理物件の空室率は1.5%!この低さは敷金、礼金、さらに退室時修繕費までゼロ、インターネット無料物件、24時間緊急対応サービス、そしておそらく日本初である賃貸入居者向け食堂トーコーキッチンなど、多彩に入居者サービスを充実されてきたことの成果だと思います。

2016年6月の報道によると神奈川県の空室率は35%だが、同社の管理物件は1.5%と極めて低い。それも周辺相場と比べ少し高めの家賃であるにも関わらず。「これは算盤があとからついてきたものだと思っています」と、淡々とでも嬉しそうに池田さんは語る。 

トーコーキッチン 不動産会社が「入居者専用食堂」を開いた理由 | 月刊「事業構想」2017年5月号

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(画像引用元:淵野辺の賃貸物件情報なら 東郊住宅社 ふちのべ賃貸暮らし)キーワードで、沿線で、大学で、物件検索可能な東郊住宅社のウェブサイト。

現代版下宿

トーコーキッチンについては既にたくさんの取材記事があって、いまさらぼくが言うこともないのですが。かの堀江貴文氏が「現代版の下宿みたいだな」と言い表しているように、若い学生が食事つきで住んでいるわけだけど、食べたいときに食べられるので学生の自主性や選択肢が残されている。”トーコーキッチンの空間はリアルSNS”と池田さんも呼ぶように、なんとなくつながっているSNSと同じような感覚がリアルな場所であるトーコーキッチンで起こっている。これこそ現代版の下宿のようです。

トーコーキッチン 不動産会社が「入居者専用食堂」を開いた理由 | 月刊「事業構想」2017年5月号
“不動産会社と入居者”の関係を変えるステージ
「入居者のための食堂」が魅力的すぎ! 朝食100円、昼食・夕食が500円で食べられるワケ | スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
東郊住宅社、リノベで「食堂」を人気賃貸物件に早変わり :: リフォーム産業新聞
安心な食をお手頃に。不動産会社が作った入居者専用食堂を見てきた | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【LIFULL HOME'S PRESS】
街の不動産屋さん苦境の中、お客が殺到する勝ち組の仕掛け | 消費インサイド | ダイヤモンド・オンライン
ネットで話題「入居者向け100円朝食」|日テレNEWS24

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動物のマグカップがかわいらしい。

不動産業はエンタメ

池田さんのお話の中で印象に残った言葉として、「不動産業はエンタメだとすら思っている」でした。入居者が喜ぶ、またはそれ以上に感動するサービスを次々と打っていく、そんな思いというか不動産管理の仕事に対する情熱を感じました。

礼敷ゼロゼロなど先駆的なやり方を取り入れた先代は不動産業をホテル業と言っていたそうだが、池田氏はそれをエンタメという。人が喜ぶことが仕事になる。これからの不動産業がそうしたものになっていけば、家を借りる私達も消去法ではない部屋選びができ、楽しい暮らしが送れるのではないかと思う。期待したい。

安心な食をお手頃に。不動産会社が作った入居者専用食堂を見てきた | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【LIFULL HOME'S PRESS】

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なお、床の三角オレンジは東郊住宅社のシンボルマーク。

入居者のためになる正しい広告宣伝費の使い方

朝食100円しかり、食堂の営業は朝8時から夜20時までで年末年始の4日を除き、年中無休。24席あって1日5、6回転ですが、朝食は赤字だそうですがその他の食事でトントンだという。今はSNSが普及していますから、学生の間でトーコーキッチンの良さは勝手に広がっていく。多少赤字になっても健全な広告宣伝費といえます。

「多少赤字が出ても朝食100円にはインパクトがあるでしょう。それを広告宣伝費と考えれば、入居者のためになる正しい広告宣伝費の使い方と言えると思います」。

安心な食をお手頃に。不動産会社が作った入居者専用食堂を見てきた | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【LIFULL HOME'S PRESS】

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2016年度グッドデザイン・ベスト100および特別賞〔地域づくり〕を受賞したトーコーキッチン。

地域をつなぐ媒体

トーコーキッチンの食材は地元産や近隣商店街から仕入れたものなどを使っているということで、三方よしとはこのことで、貸し手よし(スタッフや関係者も食堂を利用できる)、借り手よし、世間よしを地で行っています。物件単体ではなく淵野辺というまちに住むという、そういう点ではなく面の不動産事業は、古くて新しい不動産屋のスタイルです。

食材はおいしい地元産や近隣商店街で仕入れたものを用いるほか、人とのつながりを大切に考えて、関係者から頂くものも積極的に活用しています。例えば、畑を持つ賃貸物件オーナーが育てた野菜や果物、入居者がお土産に持参してくれる地元名産品など。入居者の家業で扱う食材なども取り寄せることがあるそうです。

「入居者のための食堂」が魅力的すぎ! 朝食100円、昼食・夕食が500円で食べられるワケ | スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト

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(画像引用元:淵野辺の街 | 有限会社 東郊住宅社 ふちのべ賃貸暮らし

入居者と関わり続ける不動産屋

不動産屋との関わりっていつでしょう。賃貸だとすると入居契約のとき、更新のときに事務所に行って、あとはエアコンの調子が悪いとか電話するくらい、大家さんはもとよりお隣さんとはせいぜい一言挨拶するくらい。そんなのが不動産業の縮図だったとすると、東郊住宅社の場合はトーコーキッチンという強力な媒体を武器に入居者との日常的なコミュニケーションを誘発していきます。入居者とのコミュニケーションを取るほうがむしろ円滑な不動産管理につながる、それがこれからの不動産業のスタンダードになる日もそう遠くない。

一般的な不動産仲介業は、契約後に入居者との接触機会を持たない傾向が見られる。入居者に安心・安全・快適な賃貸生活を継続して送ってもらうためには、日常的なコミュニケーションが重要と考えたという。
「契約してからがお付き合いの始まり」という同社の管理姿勢を形にするほか、「淵野辺での賃貸生活は楽しい」「コミュニケーションをとると一層楽しくなる」という価値を提案・提供するため、入居者向け食堂サービスを始めた。社員には、入居者や家主とのコミュニケーションツールとしての活用を期待する。

トーコーキッチン、グッドデザイン賞/「集合住宅に一つの型提供」 | Sokei Daily Paper 相模経済新聞社 

トーコーキッチン | 有限会社 東郊住宅社 ふちのべ賃貸暮らし