以前、書籍「世界の空き家対策」に基づいて、なぜ中古住宅の市場性が乏しいのかということをまとめました。今回は、中古住宅の価値が市場で正当に評価されるようにするために必要なことを3つにまとめます。
(参考記事:中古住宅の価値の評価が不適切 カテゴリーの記事一覧 - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ)
全国で稼働が待たれる「不動産総合データベース」
物件の過去の取引履歴情報やマンション管理情報、周辺の地価公示などの価格情報、ハザードマップや公共施設などの周辺環境情報などの情報をワンストップで見ることができる不動産総合データベースはこれまで、
- 2014年3月 不動産に係る情報ストックシステム基本構想の策定
- 2015年6月〜2017年3月 横浜市に所在する売買物件を対象にシステムの試行運用を実施
- 2016年10月〜2017年3月 静岡市、大阪市、福岡市に所在する売買物件を対象にシステムの試行運用を実施
というように準備を進めてきています。不動産コンサルタントの長嶋修さんがおっしゃるように、不動産総合データベース自体は既に完成しているけれど稼働はまだ、という状態です。本格稼働が待たれます。
既に完成したと思われる「不動産総合データベース」。「今年4月から全国で順次稼働」としていたがまだ動いてないようなので当局に尋ねたところ「データ運用事業者が未決のため遅れている」との事。HPにある問い合わせ先に電話すると一般家庭にかかっちゃうことも伝えましたwhttps://t.co/CA5KvQWL5e
— 長嶋 修 不動産コンサルタント さくら事務所会長 (@nagashimaosamu) 2018年10月29日
この「不動産総合データベース」には幾多の意義があるが、最も大きいものの一つに「宅建業の生産性向上」。契約関連書類を作成するのに役所などかげずりまわって1.5 - 2日程度かけてるのを、住所入れたらボタン一つで書類完成!みたいなところまで進化させてほしい。もちろん想定してると思いますが。
— 長嶋 修 不動産コンサルタント さくら事務所会長 (@nagashimaosamu) 2018年10月29日
多方面に散逸している不動産に関する情報を一元化することで、中古住宅がなぜこの価格なのかという理由付けがより明確になるはずです。物件情報や周辺環境情報などたくさんの情報から中古住宅の価値を評価することが広がっていけば、自ずと中古住宅の価値が市場で正当に評価されるようになっていきます。
不動産にかかわる情報は現在、多方面に散逸している。都市計画情報は市区町村役場、上下水道などインフラ情報は水道局や下水道局、登記情報は法務局といった具合だ。こうしたものを一元化し、さらに物件の過去の取引履歴、成約価格、住宅履歴情報、マンション管理情報、周辺のインフラの整備状況や公共施設の立地状況、周辺不動産取引価格情報など、物件そのものの情報に加えて周辺エリア情報、さらには災害や浸水可能性などのネガティブ情報や小中学校などの学区情報に至るまでが、このデータベースの中に詰め込まれる予定だ。
(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001035805.pdf)
浸透はまだまだこれから「インスペクション」
中古住宅の売買に関して、宅地建物取引業法の一部改正により2018年4月から宅建業者に建物状況調査(インスペクション)の告知・斡旋することが義務化されました。インスペクションとは、既存建物の基礎・外壁などひび割れや破損、天井の雨漏りなど、建物の劣化状況を専門家が調査することです。中古住宅の品質や状態について安心して売買するためにとても重要な仕組みです。ただこちらの記事によると、制度開始から4ヵ月経過後、インスペクションはあまり浸透していないという状況です。
インスペクションを実施済みの中古マンションや中古戸建てを確認できる大手物件検索サイトを調べたところ、東京都内にで売りに出ている中古マンションで2万6506件中76件(0.3%)、中古戸建てで6283件中42件(0.7%)という状況です。
これらすべての物件が今年4月以降に売り出されたものではないでしょうが、一般的には売り出しから3カ月以内で売買されるので、8割以上は4月以降に売りに出されたと思われます。インスペクションの実施割合は極めて低いと言わざるを得ません。
しかしまだ制度は始まったばかりです。インスペクションは中古住宅の品質や信頼性向上のために重要な仕組みであることは間違いありません。ではどこの業者に頼めばいいのかと言うと、私は「第三者性」を堅持するさくら事務所をおすすめします。
(出典:ホームインスペクション義務化による「市場の失敗」のリスク | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン))
成長著しい「不動産テック」
VRゴーグルを使った物件内見サービス、後付けができてスマホで自動施錠・解錠ができるスマートロック、スペースマーケットやAirbnbなどのシェアリングエコノミーサービス、仲介業務支援のぶっかくん、価格可視化・査定のライフルホームズPRICE MAPなど、いわゆる不動産テック市場は広がりを見せています。不動産業界はICT化が遅れ、千三つ*1なんていう言葉があるなど、非効率性や情報の不透明さが問題となっています。不動産テックに限らずテクノロジーを進化は日進月歩です。テクノロジーを使いこなすことで本来評価されるべき中古住宅が市場に流通しやすくなります。
2017年6月に国内で初めて不動産テック市場を網羅的に分析した本資料を公表。その後、2018年3月にカオスマップを更新しています。この3月の更新により掲載サービスは90→171に増加し、カテゴリも10→12となっています。