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北九州市が一部の斜面住宅地の居住制限を進める動き

北九州市、市街化区域から市街化調整区域へ

 新年早々こちらのニュース「北九州市、斜面宅地の居住制限へ 市街化区域見直し 人口減、災害 都市再生へ一手|【西日本新聞】」に注目しました。高齢化や人口減少に直面している北九州市で、災害発生の危険性がある一部の斜面住宅地について居住を制限する検討に入った、とのことです。都市計画区域における市街化区域から開発が制限される市街化調整区域へ編入する方向で動いているそうで、こういった動きはこれまであまり見なかったです。人口減少や高齢化といった人口構造の変化に加え、地震や水害など自然災害の脅威にも直面する中、住むべきエリアと住むべきでないエリアに分けて、それを実現していく都市政策がますます重要になります。

政令市では初の試み

 住民が居住する地域を対象にした大規模な区分見直しは異例とのこと。市街化調整区域に編入されることで資産価値の低下などが起きるかもしれません。しかし、限りある自治体の予算やマンパワー、インフラ施設などを効果的に使うために”都市をたたむ”ことは不可避です(いつかまた人口が増加すれば都市広げればいい)。こういった試みは政令市では初。検討のきっかけは昨年7月の西日本豪雨でした。斜面住宅地で土砂崩れにより2人が死亡、2040年の人口が現在の約20%減少する予測、などを踏まえてのことです。

検討のきっかけは昨年7月の西日本豪雨。同市門司区奥田の斜面住宅地で土砂崩れが発生し2人が死亡、市内約400カ所で土砂崩れが起きた。2040年の人口が現在より17%減の78万人となる推計を踏まえ、公共インフラ整備を中心部に集中させる狙いもある。 

北九州市、斜面宅地の居住制限へ 市街化区域見直し 人口減、災害 都市再生へ一手|【西日本新聞】 

土砂崩れのイメージ(写真ACから)

土砂崩れのイメージ(写真ACから)

人口密度、高齢化率、交通利便性……などから市内全域を分析

 北九州市では2018年末から人口密度、高齢化率、交通利便性、土砂災害区域の指定状況など34の指標を使って市内全域を分析しました。その結果、市街化調整区域に編入すべき地域が選定されました。専門家の意見を聞いて2019年3月までにさらに絞り込むそうです。その後、福岡県との調整を経て実現は2021年度の見込みとのこと。
 2018年の漢字は「災」でした。昨年は特に地震や台風、豪雨、高潮などの脅威をまざまざと見せつけられた一年でした。自然災害に対応できる都市計画、まちづくりを実現する上で、今回の北九州市の動きは非常に意義があります。他の自治体にも広がって欲しいです。

都市計画区域の線引きを見直し、人口減が進む斜面住宅地の居住制限に踏み込む北九州市の取り組みは、開発ありきだった従来の都市政策を大きく転換する意味がある。住民が一定規模暮らす中だけに、分かりやすい編入のルール作りや丁寧な支援策が課題となる。

北九州市、斜面宅地の居住制限へ 市街化区域見直し 人口減、災害 都市再生へ一手|【西日本新聞】

リーディング事例となるか

 市街化調整区域に編集する事例は全国でもあるけれど、国土交通省都市計画課によると、「開発が見込まれたが実際は宅地化が進まず、居住実態がない地域を調整区域に見直すケースがほとんどだ」そうです。京都府舞鶴市でも2017年から、市街化調整区域への編入議論を始めたそうですが、かつて開発を期待して農地を市街化区域としていたけれど宅地化が進まなかった地域、つまり住民は居住していない地域が対象です。住民が居住する地域を対象とした市街地化調整区域への編入は少なくとも政令市では初であり、今後の展開に注目しています。