秋の臨時国会で空き家特別措置法案の制定を目指す
今年の春先から話題だった「空き家対策特別措置法案」ですが、やっと与党において秋の臨時国会(9月29日から約70日間の予定)で提出する方針が固まりました。
ポイントとしては、空き家を原因とする火災(放火など)や倒壊事故(建物の劣化に伴う)などを未然に防ぐために対策を講じない空き家所有者に代わって行政(主に市区町村など基礎的自治体)が撤去などを行いやすくなります。
自公両党の法案は、(1)倒壊の危険がある(2)衛生上非常に有害(3)景観や周辺環境を損なっている-という家屋を「特定空き家」に指定。市町村長は危険性があると判断すれば、所有者に取り壊しを命じることができる。一定の猶予期間を過ぎても所有者が応じない場合、市町村による代執行を定めた。空き家の所有者を把握するために、市町村長に立ち入り調査や、固定資産税の納税者情報を利用できる権限も盛り込んだ。
さらに、空き家にも適用されていた固定資産税の軽減措置を見直す方向です。
税制面では、空き家でも住宅が立っていれば、住宅用地の固定資産税が更地の六分の一に軽減される現行の特例措置を見直す。この特例措置は空き家を放置する一因と指摘されており、与党は倒壊の危険があるような空き家の場合は適用除外とする方向だ。この改正案は来年の通常国会に提出する予定。
本来は春の通常国会で提出予定でしたが民主党との調整がうまくいかず、秋の臨時国会に持ち越しとなったようです。
(画像引用元)「自民党空き家対策推進議員連盟」の宮路和明会長のFAX国会通信より。
空き家法案は「老朽空き家の修繕・撤去」がメイン
これまでの空き家対策は自治体レベルで独自に条例を定めたりして取り組んできました。このたび空き家対策についての法律が制定されれば、(国全体に適用されるので)空き家対策は少なからず前進すると思います。
しかし、この法案はあくまでも老朽空き家の修繕やもう活用の余地がない腐朽・破損した空き家の撤去といった点が主眼にあると思います。
法案の中で空き家活用について定められているのは、「空き家活用データベースの整備」がありますが、努力義務なので、全ての市区町村で取り組まれるわけではなさそうです。また、「空き家やその跡地の活用」という規定もありますが、既存の「空き家バンク」との違いは何かなど抽象的な感じです。
(画像引用元)空き家対策としては前進。しかし空き家活用に関する目新しい制度は無いのかも。
全国の空き家820万戸のうち「即入居可能な物件」は約460万戸
空き家総数の約60%は賃貸用と売却用ということで不動産市場に出回っていますので、修繕・撤去が必要になるような空き家は限りなく少ないはずです(というか不動産市場に出ている限り、そのような不良物件は淘汰される)。
「空き家」は単なる「いつでもすぐに第三者が住める」空の家だけじゃない・仕方なく放置している廃墟な空き家もある、その対処法案が立案中 - 【ネタ倉庫】ライトニング・ストレージ
ということで空き家特別措置法案の考え方として空き家対策が必要な空き家は不動産市場に出ていない「その他の住宅」をメインターゲットにしていると思います。5年前に比べて増加した空き家63万戸中50万戸は「その他の住宅」です。
つまり空き家が増加しているといってもその内訳を見ると不動産市場に出ていない「その他の住宅」がほとんどで、すぐに第三者が空き家に住んだり活用出来るわけではありません。そして「その他の住宅」は売却にも賃貸にも出ていない分、管理や活用は空き家オーナー次第なところがあるのでそのまま長期間放置というパターンが多いことが問題となります。
5年前に比べ63万戸増加した空き家のうち50万戸は放置空き家になる可能性の高い「その他の住宅」 - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ
もう一歩踏み込んで空き家活用促進の制度を
行政の考え方としては近隣に悪影響を及ぼすような空き家対策が優先で、不動産市場に出ている(ある程度管理が行き届いてる)空き家の活用を促進していくという対策は二の次な感じがします。活用可能な空き家・空き室が塩漬けにされている状態は近隣に悪影響を及ぼさなければ問題はないと捉えがちですが、これは間違っていると思います。”空き家は社会悪”と捉えれば、空き家活用促進の制度も生まれてくると思います。
「空き家撤去補助金」ではなく「空き家課税」を – DMX Blog
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