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空き家グッド

空き家、空き室、空きビル、空き店舗、空き倉庫は問題ではなく可能性!空き家を活用して社会的課題を解決し、新しい街のコンテンツに生まれ変わらせる。そんな観点から書いているブログです。

空き家問題解決の鍵は”賃貸住宅文化の拡張”にある(J-WAVE「HANGOUT」延長戦vol.15宇野常寛さんのお話)

宇野常寛さんの苛立ちの理由

 

先日放送されたNHKの空き家討論番組に出演された評論家の宇野常寛さん。空き家の増加が地方に限らず首都圏でも問題になっていることに関して一般参加の市民、大学教授、役人などの専門家と議論をしました。しかし、番組途中(多摩ニュータウンの将来について多摩市の副市長に質問したあたり)から本質を避けるような(出演者の)議論に苛立ちを感じていることをテレビを見ながら感じました。宇野さんは何にイライラしていたのか、収録当日のことについてご自身がナビゲーターを務めるラジオ番組・J-WAVE「THE HANGOUT」延長戦vol.15で具体的に語られていたのでまとめます。

 

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(画像はニコニコ動画から。リスナーからのメールを読む宇野さん。この日は成人式の話題が多かったです。) ※当日の動画はPLANETSのニコニコ動画にまだアップされていないのでアップされたら貼付けます。

 

地方が生き残るということは「土地と文化が生き残ること」

 

番組後半で「コンパクトシティ」について賛否両論、議論がなされていました。推進派のほうに現実的な根拠がある感じでした。首都圏と地方とで事情は違うが地方(1970年代から開発が進められた地方の郊外)は諦めるしかないと宇野さんは語ります。

 

1970年代に田中角栄が掲げた”国土の均衡ある発展”によって北海道から沖縄まで全ての市町村を同じように発展させようとしました。どの町にも駅前商店街や工場、ニュータウンがあるというように、どこの町も東京と遜色なくします、として開発を進めてきた。しかしそれは無理なんですよね。便利な町とそうではない町、都市と農村とそれぞれ役目があるわけじゃないですか。

 

背景にはやはり人口減少があります。

 

(国土の均衡ある発展)は人口が1950年代〜70年代 のレベルと同じように増えて行くならば可能だったかもしれないですけど。そうはならなかったわけですよね。国土の均衡ある発展という計画自体がもう破綻しているんですよ

 

人口減少が前提の社会では、高度成長期に人為的に開発されてきた又は開発を誘導されてきた郊外の町の機能(商店街、工場、病院、学校などの社会インフラ)はもはや維持することは出来ないという内容です。

 

日本人はどこの田舎に行っても一次産業から三次産業まであって人口が一定に維持されていて、駅前商店街が栄えていて、どこの町に行っても当たり前に生活出来ると思っているけどそんなわけないじゃないですか。そんなことを考えたのは日本人だけですよ。サウジアラビアの砂漠のど真ん中で生活する人いますか?いないだろうと。アメリカのネバダ州の荒野とかで趣味でトレーラーハウスに住んでいる人はいるかもしれないけれどそこは電気も水道も無い。住んでないじゃん。はっきり言ってそれと同じなんですよね。

 

そして地方が生き残るということは「土地と文化が生き残ること」だと宇野さんは言います。これは以前「未来授業」で宇野さんが大学生たちとディスカッションしておっしゃっていました。 

 

日本にも住める所と住めない所がある。そして僕は思う。地方が生き残るということは「土地と文化が生き残ることなので、駅前商店街が栄えることでもなければ工場が誘致されてくることでもないですよ。人口が5千人とか1万人いることでもないですよ。だって江戸時代の日本の人口は3千万人とかですよ。今の4分の1以下でも世の中は立派に回っているわけですよ。色々な町に何百年も歴史があるわけですよ。 なので、人口なんて一つの町に下手したら3桁でも余裕で守れると思うんですよ。

 

この考え方は宇野さんが宮崎県の高千穂町の有志から村おこしイベントに呼ばれて参加したときに発信しています。

 

前にも行いましたけど宮崎県の高千穂に行ったとき、天岩戸のあるところですよ。あそこは古事記の時代からあるわけだから1500年以上のずっと土地と文化を守ってきたわけですよ。高千穂が4桁の人口(今は約1万2千人)になったのはここ数百年の話で、どう考えても明治以降の話でしょ。今みたいに駅前商店街も工場も戦後に出来たものであって数十年間の歴史しかないわけですよ。その前の千年以上を数百人で守ってきたならば、そして今はインターネットがあるせいで(おかげで)一人あたりの仕事量は加速しているわけだからその町の「土地と文化を守ることができる数百人のスペシャリスト」がいればその町は守れると僕は思うわけですよ。他の人は熊本市とか宮崎市(中心市街地)に住めよという話ですよ。大きな病院もあるし、そのほうが安全だから。

 

戦後数十年の開発の結果生まれた郊外の町は人口増加が前提で成り立っていました。しかし今はその前提が崩れています。戦前や明治以前に立ち返って住める地域と住めない地域とを選択と集中していこうという話です。

 

そういった割り切りが無いとインフラの維持も出来ないし、何かあったとき(病気や怪我)にドクターヘリをいちいち飛ばさなくてはいけない状況になっちゃうし、財政破綻は目に見えています。普通に危険な国土になっていきますよ。

 

人口減少すれば住民税も法人税も固定資産税も入ってこないので自治体財政は緊縮または破綻します。今までの公共投資(道路や水道、ガス、電気などのインフラ整備や維持管理)のやり方をガラッと変えざるを得ない事態にますますなっていきます。しかしスタジオではその現実を見据えていない意見が多々あって、それが宇野さんの苛立ちにつながります。

 

この先、超高齢社会の日本でドクターヘリを飛ばさなきゃ行けない所に人が住んでいると普通に危険。特に介護は集積(医師・看護師、施設や設備)が重要だから積極的に高齢者の移住を進めた方がいい。もちろん強制移住は出来ないから移住を推奨したほうがいい。と言ったら「住み慣れた所を離れたことによって具合が悪くなるおじいちゃん、おばあちゃんもいる」とか言うんですよ。

 

人口減少・縮退する町の未来を想像出来ていなかったスタジオでの討論

 

拡散的に開発されてきた郊外から中心市街地に移住を促進しようとする「コンパクト化」の性質として、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないというトレードオフの関係であることは当然です。社会が大きく変化している中、住まい方も変化せざるを得ないわけです。

 

あるもの取ったらあるもの失うに決まってる。それでも病院が近くにあるほうがトータルにみたらメリットでしょうという。この先、 地方が生き残るということは土地と文化が生き残ることだから人口にはこだわらないほうがいい、という意見を僕は続けて、とりあえず税金を無駄遣いするような適当な町おこしのアートイベントとかそういったことよりもやることがいっぱいあるんじゃないかと。さっきのドクターヘリの問題もそうだし買い物に行けない高齢者に対して公共交通機関だけではケアできない地域をケアするのかとかそういった問題をちゃんと考えないといけないと言ったら「アートイベントで元気になるおじいちゃんやおばあちゃんもいる」、と。そりゃあいるでしょ(笑)。費用対効果の話してるじゃん。それでまたそういうことを言うのが市民ではなくて専門家なんですよ。

 

このやりとりを見て思うのは人口減少で財政がめちゃくちゃ厳しいという身も蓋もない現実を直視しているかそうでないかの差だと思います。住み慣れた町で暮らしたいなんてそりゃそうでしょう。しかし戦後の高度成長期とは時代背景が違っていて、生き残る地方とそうではない地方があって、たたまなければいけない町も出て来る、東京一極集中は否応無く進む中でどう地方が生き残って行くかというシビアなゲームなんだと宇野さんは語ります。 

 

スタジオの討論では本来この深刻な現実を共有してじゃあどうしようかと生産的に議論する場でしょう。しかしそうではなくて、例えば多摩ニュータウンの現在と将来と湾岸エリアで開発が進むタワーマンションの話は全く噛み合っていませんでした。

 

親と同居する文化が崩壊(核家族化)し、この先も元に戻ることはおそらく無いので、湾岸のタワーマンションをバンバン売っていると30年後には高齢者しか住まなくなるわけですよ。そういったことを(多摩市の副市長は)ちゃんと言うべきなのに「多摩市の中でも若者が増えている地域はあります」と。そりゃあるでしょうよ!(苦笑)多摩市も広いんだから。そんなごまかしばっかりして、おまえギャラ返せよと言いたい。NHKスペシャルって調査費に凄いお金(受信料)がかかっていて、一回数千万かかるんですよ。だから凄い真剣にやらないといけないと思うんですよ。

 

出演者のギャランティーというより調査などの制作費にすごいお金をかけている番組なんです。

 

シビアなことを言うと感情的に反発してくる市民の人とかもいっぱいいるから、当たり障りないことを言ったほうが楽なんですよ。精神的にも進行的にも。ほとんどの専門家が適当にいい話を並べて問題の本質に踏み込まないんですよね。あれ凄く頭に来て凄くイライラしていて。ぼくが何にイラついているかをわかる人にわかるような形で伝えないといけないと思って、結構わざとやっていた所もあるんですけどね。

 

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一般参加の市民から「もっと高齢者の気持ちを大事にして地方のインフラ維持を国が税金使ってやるべきだ」というコメントがあったそうで、それに対し宇野さんは「財源どうしますか?消費税60%にしますか?」と質問すると応えられないわけですね。そうすると「お前は人の気持ちがわかっていない」と攻められると宇野さん。いや論点が違うだろう!そりゃあ地方のインフラを維持出来ればいいけど財政が破綻するとやばいでしょうと今しているのに、その現実を指摘するだけで「お前は人間じゃない」という扱いを受けるとかこれどういうことなんだと憤慨した宇野さん。

 

4時間の討論(番組放送は1時間10分)の末、三宅アナウンサーに「4時間討論しましたけどこれから空き家問題をどう処理していきますか?」と話を振られて実家が空き家の松本明子さんの回答が「改めて考えてみます」と言った瞬間にカッチーンと来て「4時間考えて結論はこれから考えるんですか?!」と突っ込んだ宇野さん。これの発言をオンエアしてくれたことを評価している宇野さん。NHKの制作スタッフさんはあえてこのやりとりを残したんでしょうね。

 

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この状況を解決する一つの方法”賃貸住宅文化の拡張”

 

簡単じゃないけどこの状況を解決する一つの方法が”賃貸”だと宇野さん。

 

新築住宅を30代や40代に売ることで景気対策として日本経済が回って行ったという側面があった。その辺もクリアにしないといけないし。日本人の新築信仰、住宅取得信仰ってすごい強烈だし。あと賃貸って作りがあまりいい物件が少ない。法整備の問題もいくつか越えなければいけない問題があるけども”賃貸”は一つの正解ですよね。

 

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HOME'Sの社長に”賃貸住宅文化の拡張”を提案しようと考えている宇野さん。夢のマイホームは昭和時代のうたかたの夢であって、「一生賃貸」という今の現実に即した住まい方がこれから主流(というか時代のニーズ)になっていくとぼくも思います。

 

これだけ核家族化が進んで親と同居していないのが当たり前になったときに(番組の中でも言ったけど)80平米とか100平米とか必要な人は子育て期間の夫婦だけなんですよね。しかし子どもが独立した後は持て余すんですよね。実際にうちの母親も持て余しているし。なのでこの先はライフスタイルに応じて住み替えするというのが当たり前になっていって、実際に賢いディベロッパーはそれを推奨しているんですよね。でもただそれも、買って売っての繰り返しでは現実的ではないので、もっと”賃貸文化が拡張していくこと”が大事なんですよ。今の賃貸は仮住まいであって、あまり作りのいい物件もそんなに無くて、30代・40代になればどうせ持家に引っ越すでしょという前提になっているんですよ。これは日本の不動産業界や住宅業界自体が頭を切り替えて、この先、一生賃貸で回していくっていう人たちが主流になっていくということを先導してもいいと思うし、それを想定して魅力的な賃貸住宅をいっぱい提供していくとユーザーのニーズにマッチするというか、新しい市場を掘り起こすことになっていくんじゃないかと思っていて。マジでHOME'Sの社長に持ち込もうと思っているんですよね。

 

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”賃貸住宅文化の拡張”に関しては1月31日に発売される宇野さんが編集長を務める雑誌「PLANETS vol.9」の中で具体的に提案しているそうです。これは執筆者がめちゃくちゃ豪華でテーマもどれもビビットで大注目の雑誌です。

 

今、賃貸に成熟した大人のニーズに合うような物件が少ないんですよ。無いわけじゃないんですけど。だいたい本来、販売していた分譲マンションとかを特別に貸しているようなものとか多いですよね。なので非常にコストもかかるし、探すのも面倒くさいし、もの自体も少ないんですよね。なので賃貸をしっかりと考えるということが大事で、実際にPLANETS vol.9の「東京5分割計画〜僕らの考える東京再開発計画〜」では”タワーマンションの賃貸化”というのを推し進めようというのを提案しているんですよね

  

PLANETS vol.9 東京2020 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト

PLANETS vol.9 東京2020 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト

 

 

あと”賃貸住宅の拡張”といえばリノベーションは切っても切りはなせないでしょう。今ある空き家の5割以上は賃貸住宅です。壁紙を入居者が選べる賃貸マンションや、改装自由で原状回復不要の賃貸物件のみを扱うウェブサイト、木造賃貸アパート(モクチン)を部分的に改修することでアイデア溢れる魅力的な物件にアップデートさせる手法(モクチンレシピ)など賃貸住宅に愛情を注いでいる人たちの取組が盛り上がってきています。